1980年代を通じてヒットチャートに影響力を持っていたイギリスのアーティストは決して多くはないが、そういう意味ではデュラン・デュランは別格で、Re:minder主催の DJイベント
『Golden 80’s vol.2 – みんなの洋楽ナイト』でも欠かせないバンドとなるだろう。
順風満帆にキャリアを進める、そんな彼らにも不穏な空気が流れたように見えた時期があった。1985年は、まさにそんな一年だった。
2月、ギターのアンディ・テイラーとベースのジョン・テイラーによるサイドプロジェクト、ザ・パワー・ステーションが始動し、アルバム『ザ・パワー・ステーション』をリリース。これに対抗するかのように、他のメンバー、サイモン・ル・ボン、ニック・ローズ、ロジャー・テイラーの3人はアーケイディアを結成して11月にアルバム『情熱の赤い薔薇(So Red the Rose)』を発表する。
こうなると内部分裂か!?… というゴシップが持ち上がるのも仕方なく、さらにこの年、アンディとロジャーが脱退を表明。翌年にはジョンが映画『ナインハーフ』の挿入歌「アイ・ドゥ・ホワット・アイ・ドゥ」でソロデビューを果たすのだから、バンドはいったいどうなっているのかと思わずにいられない。終焉を迎えたとしても驚けない流れであった。
何より分裂・解散を予感させたのは、ザ・パワー・ステーションもアーケイディアも充実したアルバムを作り出したこと。ロバート・パーマーをボーカルに迎え、バーナード・エドワーズの力強いドラムをフィーチャーした前者は「セックス・ピストルズとシックを足して割ったような音」とメンバーがインタビューで答えていたように、ヘビーファンクかつアグレッシブなロックンロールだった。これはデュラン・デュランでは決してできないサウンドだ。
一方の後者は、「セイヴ・ア・プレイヤー」等に代表されるデュラン・デュランのダークなポップセンスを拡張したかのよう。シングルとなった「エレクション・デイ」をはじめアンニュイかつメロディアスで、スティングや土屋昌巳をはじめとする豪華ゲストとの共演も面白く、実験的な雰囲気もある。
自分としては、どちらかというとザ・パワー・ステーションが好みだったが、ロバート・パーマーがツアーへの参加を拒否したことから、このプロジェクトは下火となる。ライブエイドで彼らのステージを観たが、代わりのボーカリストに抜擢されたマイケル・デ・バレスのハスキーなハイトーンボイスは、バンドの音には合ってない印象を受けた。
そのライブエイドにはデュラン・デュラン本体でも出演していたが、こちらは圧巻のパフォーマンス。この年の唯一のリリースだったシングル「007 美しき獲物たち(A View To A Kill)」を聴けたのも嬉しかったが、バンドのアンサブルが健在であることに胸を撫で下ろしもした。
現役続行中のバンドの今を思えば、このときの解散疑惑も笑い話。結果的に、1985年はデュラン・デュラン関連の充実した音源が残った年となった。さて、
『Golden 80’s vol.2 – みんなの洋楽ナイト』では何をかけようか?
2018.11.03