1980年代、お金のない音楽好きの中高生にとってカセットテープは欠かせないアイテムだった。FMラジオからの録音はもちろん、誰かがレコードを買うと借りて録音し、レンタルレコード店からも借りて録音する。買ったレコードも録音してテープで聴く。そして日に日にテープが増えていく。
1980年代初頭は46分・60分・90分テープが存在していたが、アルバム一枚を録音するなら46分で事足りた。2枚組は大抵90分だ(ビートルズの “赤盤” のように60分テープに収まる2枚組もあった)。が、何枚も録音しているうちに規格外のアルバムが出てくる。46分テープには入らないが、60分テープには余る… というようなケース。一曲、一曲の尺を計算して “曲を入れ替えれば入る!” と気づくが、“曲順を考えてアルバムを作っているアーティストに失礼なのでは…” と、頭の中で声がする。そんなこともあった。
そんな悩ましい状況を解決してくれたのが、ソニーが1981年頃に発表した “POPS” “ROCK” なる54分・84分のテープ。ノーマル・ポジションの “POPS” はその名のとおりポップス専用、クロームの “ROCK” はもちろんロック専用… というふれこみ(他に “CLASSIC” なる54分・74分テープも出たが、使用した覚えナシ)。これは重宝した。たとえば、ポール・ヤングの1983年の大ヒットアルバム『No Parlez』は46分テープではA面もB面もはみ出てしまう。が、54分テープではピッタリの収まりのよさ。ありがたや~。
しかしまあ、アーティストの側はそんなリスナー事情は知ったこっちゃない。プリンス、1982年の2枚組アルバム『1999』は、“ROCK” の84分テープに録音した。2枚目はテープの片面に程よく収まったが、1枚目は10分以上余る。A・B面で収録時間が異なる画期的カセットテープを作ってくれ… とムチャなことを思った。
2016.09.04
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