私がビートルズのファンになったのはジョン・レノンが暗殺され、彼の追悼盤が出たことがきっかけだ。
イギリスに住んでいたこともあって、ビートルズのことは小さい頃から知っていたが、ちょうどその頃、エルヴィス・プレスリーやビートルズのデビューや現役時代を扱ったテレビドラマが続けて放送され、一時代を築いたスターの光と影を感じ興味を持ったのもあったのだが、とにかくジョンの追悼盤は盛大に取り扱われたので、どのレコード店でも見かけ、それでビートルズのベスト盤を購入したのだと思う。そしてすごくはまった。
その後、ポール・マッカートニーの「エボニー・アンド・アイボリー」(1982年3月29日)や「テイク・イット・アウェイ」(1982年6月5日)などのリリースがあったのも、いちファンとして大いに喜んだものだ。
ジョンが亡くなっていなかったら、もしかしたら今もビートルズのファンではなかったのかと思うと、なんともったいないことか。
イギリスではジョンが亡くなって「ウーマン」(1981年1月16日)がシングルとしてリリースされ、「イマジン」ともに全英1位を獲得した(※)。
「ウーマン」の歌詞は、当時小6の自分にとっても比較的わかりやすかった。まだ彼氏もいなかったけれど、曲調を含め、こんな風に私を尊重してくれる男性が現れたらいいなあ。と思ったものだ。
一方「イマジン」はすべての単語がわかるのに(だからこそ?)ちょっと難しいことを歌っているな、と小学生ながら感じたものだ。宗教や国境や所有欲がない世界は自分の心の中にさえない気がしたからだと思う。
自分にはその気がなくても外国人として見られている日常において、自分とは全く関係のない宗教を、知らないというだけで無下にできない気はしたし、国境はいつも自分の肌のすぐ外にあった。さらに所有欲なんてなくなったら私を守ってくれるものは何なんだろう、と思った… んだと思う。
でも、歌いだしの「Imagine(想像してごらん)」という感じはすごく心地がよかった。そして、そうなったらいいなあ。と。1971年に米国で1位、1981年に英国で1位というチャート最高順位に輝いたのには、きっと「そうなったらいいなあ」と思う人がいっぱいいたからなのだろう。
「イマジン」がこの世に発表されてからもう48年が経つ。今でもやっぱりこの歌は「そうなったらいいなあ」の歌だ。もっと人間の根源的なところへのアプローチ、そしてとても個人的な領域の話なのだと、安心して広く受け入れられているのだと思う。
天国がなくて地獄もなくて
国も宗教もなくて
人殺しする理由も
殺される理由もなくて
所有欲もなくて
私とみんなの違いはなんなのだろう
最近、不倫された人が自分の体験を描いた漫画を興味深く読んだこともあって、なんとなく所有欲がなくなることが一番難しそう、とは思うものの、実は天国がないってところが一番気になるかも。
私は特定の宗教を信じているわけではないけれど、漠然と何かに守られている気がしていて、それが天とか神とか言われているものだとしたらそれが一番の縛りかもしれない。自分を守ってくれている、もしくは守ってくれていなくてもとりあえず無害、という思いがあるから激しい縛りだ。
ところで、私の友達にホラー作家なのに幽霊を全く信じていない男がいるが、それって究極だなあ、なんて改めて思うのであった。
人間は自分が信じているものでできている。
それは本当だと思う。とってもシンプルなこと。だから、ちょっと立ち止まって想像してみる。そうすれば、自分が囚われているものの正体が見えてくる。どうせ何かに囚われて生きていくんだから(人間は考える葦だし)、私は楽しくて毎日笑っちゃうものに囚われたい。私の毎日は想像の産物なのだもの!
多分ジョンも「イマジン」で歌った内容が現実になることを目標としたのではなくて、タイトルのまんま、イマジンしてみよう、と歌っているんじゃないかな。
(※)1971年にアルバムリリースされた『イマジン』ですが、イギリスでは1975年にシングルカットされています。
2019.05.28
YouTube / johnlennon
Apple Music
Information