6月21日
時のないホテル、ユーミンが松原正樹に頼った動かぬ証拠がコレだ!
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松任谷由実のアルバム「時のないホテル」がリリースされた日
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UNIVERSAL MUSIC
似ているものを比べることは、面白くもあり、難しくもある。とくにその二つが同じ時に同じ場所にあったりすると、ややこしさは倍増する。面倒なのでだれも書かなかったが、書かないわけにはいかない。ギタリストの松原正樹と今剛、似ているけれど、ちょっと違う。
そのきっかけは、縁起でもないが、松原正樹の死亡記事であった。2016年2月10日19:46配信のデイリースポーツである。(以下引用)「松原さんは寺尾聰の『ルビーの指環』、松山千春の『長い夜』…など1万曲以上に関わった。」これはチョットいただけない。よりによって、彼の名が世間でいちばん知られるであろう日の記事に、こんな「間違い」があってはいけない。『ルビーの指環』は今剛(g)と井上鑑(key)の制作である。
マスコミ、それもスポーツ新聞といえば芸能界にもっとも強いはずだが、その記者が間違ってしまうぐらい、この二人のサウンドは良く似ていた。無理もない、昔の歌謡曲には録音クレジットがないのがいっぱいあるからだ。しかも二人は盟友で、売れっ子セッションミュージシャンが結成したバンド「パラシュート」では右大臣と左大臣よろしく、ステージに立っている。まさに黎明期のJポップ界にヒットを放つ、ON砲みたいな存在だったのである。当時の曲で、エコーのかかった7thコードのギターフレーズが聴こえてきたら、だいたいそれは松原か今である。
実際には楽曲ごとの録音クレジットを確かめるのがいちばんだが、あえて耳での印象を記せば、松原正樹の音の方がマイルドで楽曲の一部としてなじんでいるのに対し、今剛の音はもう少しメタリックで攻撃的に飛び出して来る感じ(専門的にいえば、今剛はフランジャーのエフェクトを深くかけているし、ディストーションの歪みも強い)。松原はオールドタイプのギブソン ES-335 なども使っているが、今剛はビンテージギターには興味が一切ないとインタビューで答えている。その辺も二人の音の違いの由来かもしれない。
さて、松原正樹のすごさを端的にあらわすのが、松任谷由実の『時のないホテル』であろう。1980年6月21日リリースのアルバムだが、LPレコードの帯に注目してほしい。「Featuring Masaki Matsubara on guitar solo」とある。この時点でのユーミンは、まだリゾートの女王でも、恋愛の女王でもない(松原のギターで今やスタンダードソングになった『恋人がサンタクロース』を含む『SURF&SNOW』はこの後である)。天才少女と騒がれてデビューしたものの、松任谷正隆氏との結婚、一時活動中止、アルバムセールスも20万程度で、音楽業界でも “まぁまぁ売れてるニューミュージックの女性シンガー” 程度の扱いだ。
そもそもこのアルバムは映画からモチーフをとった曲が多く、全体に重苦しいトーンが支配する。レコード会社の宣伝マンもセールスポイントに悩んだのだろう。何度も聴き込むうちに、ハタと気付いたのだ。「そうか、このアルバムの屋台骨は、松原正樹のギターソロだ」と。もちろん、実際にユーミンもチェックするだろうから、彼女が松原正樹をいかに頼っていたかがわかる。彼のギターの真骨頂は、エンディング間際での弾きまくりである。『セシルの週末』『5cmの向う岸』のフェイドアウト寸前での泣き叫ぶようなフレーズは、5cmどころか彼岸の彼方から松原自らが奏でるレクイエムに聴こえる、といったら不謹慎だろうか。
※2016年2月19日に掲載された記事をアップデート
2019.06.21
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松原正樹 Official Site
松任谷由実 Official Site
UNIVERSAL MUSIC JAPAN / 松任谷由実
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ひろ
個人的にユーミンの最高傑作と思っているのが『セシルの週末』あのドラマチックなイントロですね。そして更にドラマチックな歌詞、落ち着いた安堵するようなギターと共にフェイドアウト。名曲に名演奏ありですね。
2018/01/29 20:30
4
返信
カタリベ
1965年生まれ
@0onos
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