さて、第3回です。今回はいよいよ「転調」の話。でも、「転調」とは何か。これは説明が難しいのです。ごくごく簡単に言えば、音楽の空気感を支配する「キー(調)」を変えて、聴き手の気持ちに変化をもたらす手法です。
分かりやすく言えば、カラオケの機械で、キーを変えると、全然違う曲に聴こえることがあると思います。あのような気持ちの変化を、音楽的に、作為的にもたらすのが転調とお考え下さい。
その中でも、いちばんストレートな転調は、「曲の途中でキーが半音上がる転調」です。代表作として、米米CLUBの『浪漫飛行』はどうでしょう。
曲の大サビ=「♪一人じゃない もう一度 空へ」の後の、「♪その胸の中までも」のところで、視界がすーっと広がる感じがしませんか? あれが半音上がる転調です(キーがB→C)。
で、今回のオフコースの『Yes・No』です。あの曲では実は、曲の途中ではなく、イントロから歌い出しに入るところ=「♪今なんていったの」のところで、いきなり半音上がっているのです(これもキーがB→C。ぜひ下の映像で確かめて下さい)。
「いきなり歌い出しで半音上に転調」の効果は絶大だと思います。歌い出しの歌詞が「♪今なんていったの 他のこと考えて~」ですから、「他のこと」から「君」に意識が戻る感じと、キーが半音上がることによる空気感の転換が、ぴったりと合っていると感じるのです。
「いきなり歌い出しで転調」の他の例としては、ビートルズにはいくつかあって『アイル・フォロー・ザ・サン』や(C→G:5度上)や『グッド・デイ・サンシャイン』(E→B:5度上)など。変わったところでは、大滝詠一『君は天然色』が、「♪くちびるつんと~」の歌い出しで、1音下(E→D)にズドンと下がります。
でも、最も有名で、かつ最もクレイジーなのは、デレク・アンド・ザ・ドミノス『いとしのレイラ』の「いきなり歌い出しで半音『下』への転調」でしょう(Dm→C#m)。ぜひ確かめてみて下さい。
あと、オフコースで言えば、『Yes・No』の前年=79年に発売され、世間的に彼らが認知されるきっかけとなった『愛を止めないで』における、「間奏で1音上転調」(C→D)も効果絶大でした。こちらもおすすめです。
2017.04.16
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