突然ですが、問題です。 米国のバンドで初めてグラミー賞の『最優秀レコード賞(Record of the Year)』を受賞したのはイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」、次がドゥービー・ブラザーズ「ある愚か者の場合(What A Fool Believes)」ですが、3組目は誰の何という曲でしょう? 正解はTOTOの「ロザーナ」。 この3組が全て西海岸のバンドというのはただの偶然かもしれないが、他にも不思議な共通点がある。どのバンドもリードボーカル然とした人がいないのだ。 「ホテル・カリフォルニア」はドン・ヘンリー(ドラム)が歌っているし「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」はマイケル・マクドナルド(キーボード)がボーカルをやっている。TOTOには役割としてのリードボーカルはいるが、他メンバーに見下されているのは明らかで、存在感もない。 一般に、米国ではバンドの中でボーカリストの地位が最も高い(ボーカリストしか注目されない)と言われている。 例えばレッド・ツェッペリンは、本国ではジミー・ペイジ(ギター)のバンドとして認識されていたのに、米国進出後はロバート・プラント(ボーカル)のバンドになってしまった。真偽はともかく、少なくともメディアでの露出はそんな感じだった。だからこそ、この3つの西海岸のバンドは、独特の存在感を醸し出していたようにも思う。 ということで、その「ロザーナ」だが、正直なところ当時も今も歌や詩にこれといったものは感じない。なのにこれだけ印象に残っているというのは、やはり彼らの演奏が優れているからだろう。 特に、この曲の魅力の殆ど全てが、歌が入る前に既に表現されていると思う。とにかくジェフ・ポーカロのドラムが “おしゃれ” なのだ。 このリズムパターンはハーフタイム・シャッフル(Half-Time Shuffle)と呼ばれ、TOTOの代名詞とも言えるものだ。叩いている本人は、スティーリー・ダンの「安らぎの家(Home at Last)」「バビロン・ シスターズ」でのバーナード・パーディのプレイと、レッド・ツェッペリン「フール・イン・ザ・レイン」でのジョン・ボーナムのプレイを元にアレンジしたと後に告白している。 便利になったもので、今では彼がそう語っているのをYouTubeで観ることができる(恐らくは教則ビデオからの抜粋)。そのジェフ・ポーカロも92年に38歳の若さで死んでしまった。今、改めて彼が演奏している映像を観ると、本当に惜しい人を亡くしたと思う。合掌。 Rosanna / TOTO 作詞・作曲:David Paich プロデュース:TOTO 発売:1982年4月1日 脚注: 「Hotel California」(1977年5月7日1位) 「What A Fool Believes」(1979年4月14日1位) 「Rosanna」(1982年7月3日2位)
2016.08.15
VIDEO
YouTube / TotoVEVO
VIDEO
YouTube / Sam Johnson
Information