「あと5キロ痩せたらつきあってあげる」 高校時代、好きになった男の子に告白したときに言われた台詞。 今思えば、“そんなことをいう男とは付き合うのをやめておけ” なのだが、間に受けた私は自分の容姿のコンプレックスと向き合うことになった。 とはいえ、高校当時の私の体型は 162cm で 47kg と、特別に太っていたわけではなかったし、まだまだ食欲のある思春期であったので、そこからのダイエットは気合が必要だった。 母の作ってくれた晩ご飯をその日から残すようになった。初日はお腹がすいて眠れなかったのを覚えている。大学受験に向けた勉強の忙しさも加わって、徐々に体重は減ったものの、結局努力の甲斐も虚しく、その恋は実ることはなく、今となっては彼のこともよき思い出だ。 しかし、自分の容姿がよくないから愛を得られないと思い込んだ私は、その後も普通の食事を摂れなくなっていた。19歳の頃には体重が 40kg 近くになり、痩せすぎたためか生理もこなくなった。 食べないわたしを心配した母から、カレン・カーペンターの話を聞いた。 カーペンターズという外国のミュージックグループの女性シンガーで、素晴らしい音楽で商業的にも大成功したが、拒食症という病気で若くして亡くなったのだという。このまま食事制限を続けると私が彼女と同じ道を辿る危険があるかもしれないと懸念したのだ。 当時(90年代中頃)、『未成年』というTVドラマで、「トップ・オブ・ザ・ワールド」や「青春の輝き(I Need To Be In Love)」が使われており、それまでカーペンターズを知らなかった若い世代を中心に、第二次ブームが起きていた。美しい楽曲にのせて、心の底に響いてくるような深みのある透き通る歌声の中に、どこか哀しみを秘めている。カレンの歌声を私はそんな風に感じた。 私とカレンにはおこがましくも、もう1つ共通点がある。10代半ばからドラマーで、その後ボーカリストになったこと。カレンのドラムのクリックはとても正確で、ドラマーとしても高いテクニックを持っていた。私も高校時代には毎日2時間はドラム練習に没頭していた… 今はボーカリストもしている。なんだか、カレンと私の不思議な縁を感じた。 私は幸運にも両親をはじめ、たくさんの方の愛に支えられて今も元気に生きているし、私を選んで結婚した男性は私を容姿だけで選んだわけではなかった。 カレンや私のような摂食障害の人は、現在の日本において約26,000人で、80年代から10倍以上も増加している。カレンのような素晴らしい才能あふれる女性にもっと長く生きて、歌い続けてほしかった。 これからの若い女性の命のために、今後も向き合うべき大きな問題だろう。※本コラムは2016年6月27日に掲載された記事を加筆修正したものです。
2018.03.02
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