80年代洋楽の夏定番曲として私が思い浮かべる好きな曲のなかに「ラヴ・アイランド」という曲があります。この山下達郎を想起してしまうような「ラヴ・アイランド」というのは邦題で、原題は「Try Jah Love」といいます。いかにも夏っぽい邦題をつけたものです。
で、演奏しているアーティストはサード・ワールド。はい、70年代から活躍しているレゲエ界のトップアーティストですね。なるほど「レゲエだから夏」というわかりやすい流れですが、この曲聴いてみると、全然レゲエのリズムではない。
美しいピアノのイントロで始まり、その後アップテンポになるものの全体的な印象は、哀愁感のあるディスコミュージック。でも夏っぽくないこともないし、浜辺とか野外で聴きたい解放感のあるいい曲ではないか。
ん? でもそれ以上に何か引っかかるこのアレンジ。ああ、あの人ではないか。
そうです、作曲、プロデュース、キーボードを担当しているのがスティーヴィー・ワンダー!! 他のアーティストの作品でもコーラスやハーモニカをちょっと加えるだけで自分の世界に持っていってしまうスティーヴィー様なのでした。
スティーヴィー・ワンダーとレゲエといえば、74年の「レゲ・ウーマン」(これもあまりレゲエぽくなかったりします)や80年の「マスター・ブラスター」などを思い浮かべますが、ここでの仕事も見事ですね。いい楽曲に仕上がってます。
この頃のスティーヴィーといえばポール・マッカートニーとの「エボニー・アンド・アイボリー」を発表したとき。前か後かはわかりませんが、ビッグプロジェクトの裏でも手を抜きませんね(笑)。
この「ラヴ・アイランド」を収録したアルバム『You've Got The Power』も邦題は『ラヴ・アイランド』とし、ジャケットも海辺に浮かぶ美しい小島の写真に差し替え、日本では大ヒットしました。
しかしながら海外でのシングルチャートは全英47位、全米101位。日本のレコード会社の作戦勝ちといえばそうなのでしょうが、CBSというメジャーからの発売とこの楽曲のポテンシャルからするともうちょっと海外でヒットしても良かったんじゃないかと思います。
まあ、彼らのキャリアからするとちょっと浮いてしまう異色の楽曲にはなってしまいましたが、既定路線の正統派レゲエに戻り、現在も地道に活動を続けるサード・ワールド。名作レゲエ映画『ロッカーズ』での冒頭曲や初期のアルバムなどは、シブい作品ですが素晴らしいのでこちらの方もこの夏を機にご一聴をおススメします。
2017.07.30
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