4月25日

右手1本16ビート!竹内まりやをサポートする青山純の神がかりグルーヴ

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photo:Warner Music Japan  

先日、念願だった山下達郎ライブツアーに参加した。達郎グッズはもちろんのこと、一緒に販売されていた竹内まりやニューシングルも購入した。

その特典として宣伝ポスターを貰ったのだが、この大判ポスターに佇む竹内まりやの姿がなんとも美しく「こりゃぁデビュー当時に周りがアイドル活動を推したのもやむを得ないな…」なんて、まじまじと思ってしまった。

初期の竹内まりやと言うと、第21回日本レコード大賞・新人賞を獲得した「SEPTEMBER」(1979年)や、資生堂化粧品の CMソングになった「不思議なピーチパイ」(1980年)などが有名だけれど、僕の興味はアレンジャー山下達郎の影響が色濃く感じられるアルバム『VARIETY』(1984年)に収められた「プラスティック・ラブ」1点に絞られる。

ベース・伊藤広規、ドラム・青山純という、山下達郎を支える鉄壁リズム隊によってレコーディングされたこの楽曲はガチガチのシティポップに仕上げられている。その二人が繰り出す16ビートにフュージョン小僧だった僕は圧倒されまくった。

アルバムがリリースされた当時、僕は高校の軽音楽部に在籍し、放課後に部室でフォークギターを練習するかたわら、こっそりとベースやドラムで遊んだりする毎日だった。カシオペアやスクェアのような流行りの曲をコピーしまくり、山下達郎が創り出すサウンドにも俄然注目していた。その演奏からはフュージョンにも似た得も言われぬ格好良さが感じられた。僕はベーシストであったが、青山純のドラムに限りなく影響された一人である。溢れだすリズムのすべてがたまらない。

『青山純 一つ打ちの真髄』(2011年)という教則 DVD があって、そのタイトルからもわかるとおり青山の叩く一発の音の存在感は別格。遠鳴りするようなスネアの音、タムの音、バスドラのキックなど、音数は少ないながらも、そのドラミングは超個性的であり、誰にも真似できないグルーヴを醸し出すのだ。

青山純は、ライブやツアーサポートメンバーとして活動するなか、スタジオミュージシャンとしても活躍し、数多のアーティストのレコーディングに携わってきた。そのドラムの存在感ゆえ、音源を聴けばクレジットを見なくても明らかに「この音、青山純じゃない?」と、わかってしまう。

たとえば、もう時効だけれどプリンセスプリンセスの大ヒット曲「DIAMONDS」のドラムは青山純である。クレジットの記載はないけれど、「これ僕です!」とラジオで公表していた。あのノリ、ビート感はめちゃくちゃ難しくて、青山純が叩き出すリズムじゃなければあそこまでヒットしなかったのでは? くらいに僕は思っている。

話がだいぶ脱線しているけれど、青山純の極めつけテクニックのひとつに片手16ビート(右手16ビート)がある。「プラスティック・ラブ」全編を支えるリズムの肝だ。

通常16ビートと言えば、右手と左手で交互にチキチキとハイハットを鳴らしてリズムを刻むのだけれど、青山純はこれを片手(右手)のみで刻んでいる。これによってリズムのノリが格段に細かく感じられる。両手で刻む16ビートは厳密にいえば8ビートのノリでしかないのだ。

じゃあ「ノリってなんだ?」と思っている読者もいると思うので、その違いを説明しておきたい。ギターであれば、「ダウンストロークとアップストロークでじゃらじゃら弾く」感覚と「同じリズム、ダウンストロークだけで、ガッガッガッガッガッガッガッガッ と弾く」感覚との違い。

ドラムの場合、口だけで説明することは各段に難しいけれど、「チキチキチキチキ とハイハットを鳴らす」感覚と「チチチチチチチチ と、右手1本で鳴らす」感覚の違いと言えば、わかってもらえるだろうか。

ここまでを踏まえて「プラスティック・ラブ」をイントロから思い浮かべて欲しい。この速さのリズムを右手だけで刻むのだ。できればこれを読んでいるあなたもぜひ右手で膝を叩いてこのリズムを試してみて欲しい。叩くだけでも至難の業だ。ちなみに青山純は左利きである。尋常じゃないにも程がある。

そして、このリズムに伊藤広規のベースが合わさると… それはもう魔法のように臨場感溢れるバッキングへと変貌するのだ。右手だけで刻む細かいリズムと、ベース音とバスドラのキックでぴったり合わさるユニゾンが “プラスティックの恋” と表現された、寂しくむなしい心模様に情感を与えてくれるのだ。

むせび泣くギターソロ、哀愁を感じさせるストリングスやホーンアレンジなども相まって、この曲は夜の首都高を走りながら大音量で聴きたくなってしまう。

ちなみに同曲は、山下達郎の2枚組ライブアルバム『JOY』(1989年11月1日リリース)にも収録されていて、達郎本人もここに収められたライブ録音が特にお気に入りだそうだ。そしてその演奏は、竹内まりやのオリジナルよりさらに速いという神懸かり的なプレイの連続である。

さて、僕はこの青山純のドラムが好きすぎて、水道橋のイケベ楽器店(現在は秋葉原に移転)で行われた『青山純のドラムクリニック』に参加して、直接話を聞かせてもらったことがある。30年も前の話だ。当時の青山さんはまだ痩せていた。

そこでの話題はやはり16ビートに関することが多く、実際に目の前でプレイしてくれたのだが、その姿はまさに全身全霊という感じだった。青山本人も「両手で叩くなんて16ビートじゃない!」とまで公言しているけれど、ライブ続きで疲労がたまっているときは、さすがにこっそり両手を使って “休む” ことがあるそうだ。イベント会場では、このことについて、

「達郎さん、すぐ気がつくんだよね。チラッと後ろ見るから慌てて片手に戻すんだけど、ノリってすぐ伝わっちゃうんだよね」

―― と会場を沸かせるネタをバラしてくれた。

ちょっぴりお茶目だった青山純がこの世を去ってもう随分と日が経つけれど、デジタル音楽が全盛の時代、こういうノリ、感覚を伝えられるミュージシャンが少なくなっているように思えてならない。世の中に溢れる音楽は打ち込みと呼ばれるコンピューターミュージックがほとんどである。

そういえば、先日、大御所ドラマーの村上 “ポンタ” 秀一さんにお会いする機会があり、少しだけお話を伺った。すると村上さんは、こんなふうにアツく語って下さった。

「いまの若者に生音を聴かせたい。どうしても聴いて欲しい… 目の前で観る音楽は全然違うんだよ。スティックを振る音、身体の動き、ミュージシャン同士のアイコンタクト、そういう空気を感じて欲しいんだよ」

そう、80年代の音楽が今も懐かしく、それでいて廃れないのは “生身の人間が作る音” だからだと思う。その感覚は言葉が通じなくても伝わるものなのだ。ミュージシャンが紡ぎだす音楽は、音を出す前からすでに始まっているのだ。

―― 先日購入した最新シングルからは、良い意味で80年代と変わらぬ竹内まりやが感じられた。今宵もまた、仕事帰りの国道を走る僕の車の中には、竹内まりやの歌声が響き渡るはずだ。

最高の “ノリ” の良さで。

2018.11.17
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  YouTube / Warner Music Japan


  YouTube / Plastic Lover
 

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カタリベ
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