12月3日

ディケンズの「クリスマス・キャロル」と「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」

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イギリスのクリスマスといえば、チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」


80年台前半の子供時分に過ごしたイギリスにおいて、クリスマスの思い出といえば毎年放送されるミュージカル映画の金字塔、『サウンド・オブ・ミュージック』。イギリス人は何故かこの映画が大好きで、年に一度ならず、二度くらい放送される年もあるそうだ。今はどうなのだろうか。おそらくイギリスには映画のセリフを完コピしている人が何千人もいるのではなかろうかと思われる。

それからイギリスの偉大な作家、チャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』。何度も映画化されている人気小説で、さらに2017年には『クリスマス・キャロル』の誕生秘話までもが映画化された。題名はズバリ『Merry Christmas!ロンドンに奇跡を起こした男(The Man Who Invented Christmas)』。

ディケンズによって『クリスマス・キャロル』が書かれた頃、ヴィクトリア女王が治めていたイギリスは貧困が深刻な社会問題となっていて、クリスマスを祝うような風習は廃れていたそうだ。ディケンズ自身も中流家庭に生まれながらも両親の浪費癖のせいで子供時代は貧しく労働を強いられたわけなのだが、小説を書くようになって成功し結婚してもその心は弱者からの視点を忘れなかった。

そんな中、貧しい人にもクリスマスを!と筆を取ったのがこの『クリスマス・キャロル』なのだ。物語は、もはや現代においてその名前がドケチの代名詞にもなっている冷酷無慈悲な主人公スクルージが、亡きビジネスパートナー、マーレイの亡霊に導かれ、その生き方を見直すというもの。

小説は瞬く間に売り切れ、大ヒットし、さらに階級社会であるイギリスにおいて、持てる者が持たざる者へ手を差しのべる機会にもなったのであった。人々が “メリークリスマス!” と口にするようになったのもこの小説がきっかけなのだとか。

イギリスではド定番のディケンズ、人間味あふれる(?)その人物像とは…


ディケンズは自らの生い立ちから、貧困への疑問を小説にしたものが多い。時代は全然違うが、『チャーリーとチョコレート工場(Charlie and the Chocolate Factory)』のロアルド・ダールと共に学校で読まされる小説のド定番な作家で、私も好きな作家だ。

だが彼の作品の中には、どうして!? という展開もある。学校で読んでいた(ディケンズ自身についての物語とも言われている)『デイヴィッド・コパフィールド』は貧しかった主人公の成長と成功が描かれているのだが、最後、ラブラブ期を過ぎ、欠点が見え出してきた恋人が急に病気で死んだかと思うと一気に学生時代憧れていた女性と結婚しちゃって終わるのだ。

このいきなりの展開に混乱し、そこの心理的変化についてもっと描写があっても良さそうだと、子供ながらにページを何度もめくり直して読みおとしがあるのか確認した記憶がある。パートナー(この場合、女性)ってそんなに軽いもの? ピュアなローティーンの心はラスト数ページで曇った。

ディケンズ自身も妻との間に10人も子供を成したのだが、離婚し若い女性と再婚する。ディケンズは社会的に弱い立場の貧しい人々には高い意識があったのだが、同じく弱い立場の女性に対する欲望は抑えられないのであった。

そしてとうとう最近になって偉大な夫の影でないがしろにされてきたディケンズの妻の肩を持つ説が出てきた。というより、むしろディケンズのスキャンダルを暴く記事 --若い女優との浮気だけではなく、妻と離婚したいがために彼女を精神病院へ送り込もうとしていた-- が出たことで、弱い者へ手を差し伸べる “慈善家ディケンズ像” が一般的にも壊れたのだった。また、ディケンズは離婚理由をあらゆる書類を焼いて徹底的に隠そうとしたのだが、その点もいかがなものだろうか… と人間味あふれるディケンズへ注目が集まったようだ。

そしてこの冬、『クリスマス・キャロル』が舞台のステージで主人公が女性として生まれ変わる。詳しい内容はわからないのだがヴィクトリア時代の女性が何を抱え生きていたのか、また現代だから描ける男女の理解が描かれているようでとても興味深い。サンタさん、私にイギリス行きのチケットと舞台のチケットをください(笑)。

社会的問題に目を向け、楽しい未来に人々を導こうとしたディケンズなのだから、きっと現代に生きていたら男女の格差に新たな切り口を見つけたに違いない。実際若い女性に目が眩んだとしても、『デイヴィッド・コパフィールド』の最後は変わってくるんじゃないかな。

持てる者から持たざる者への精神、バンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」


ということで今日は、80年代、画期的なクリスマスソングとなったバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」に思いを馳せてみましょう。ディケンズがクリスマスを祝うことで貧しい人々を含む全国民の心が明るくなるべく仕掛けたように、時代を越え、貧しい国に手を差しのべようと大勢のアーティストが集まりチャリティソングを歌った一曲です。

ちなみに、イギリスでは子供番組でもアフリカの飢饉などを扱い、アフリカ大陸へのボランティア活動が盛んだ。“持てる者から持たざる者へ” の精神はイギリス人の大きな特徴と言える。

そしてこの流れは、ご存じの通り翌1985年にUSAフォー・アフリカの『ウィー・アー・ザ・ワールド』へと続く。この二曲は “それでどれだけの人が救えるのか” ではなく “自分になにができるのか” を考えさせられるきっかけを作ってくれたと思う。

個人的には、「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」の歌い出し、ポール・ヤングからボーイ・ジョージのリレーがすごく好き。多分レコーディング時はこの企画自体が手探りなところがあったのだろうけれど、この二人からの “始まるぞ!” という雰囲気がとてもいい。

ただ、男女のバランスという面では「ウィー・アー・ザ・ワールド」に軍配が上がる。お国柄やアーティストの事情などもあるだろうが、1984年から1985年にかけてたった一年とはいえ、チャリティソングにおける意識変化があらゆるレベルで起こったことに気づく。

新しいことはちょっと怖い。けれど、その一歩に35年後の私から大いに拍手を送りたい。

メリークリスマス!!

2019.12.25
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  YouTube / BandAidVEVO
 

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カタリベ
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