さて、80年代のジャクソン・ブラウンの客演以外の名曲といえば?
個人的には83年の「愛の使者(Lawyers In Love)」や86年の「シェイプ・オブ・ア・ハート」、「フォー・アメリカ」など捨て難いシングル曲がありますが、やはり「誰かが彼女を見つめてる(Somebody's Baby)」に尽きるでしょう。
82年の映画『初体験 / リッジモント・ハイ』の主題歌として発表されたこのシングル。映画はアメリカの数ある80年代青春ムーヴィーの典型的作品。当時青春時代だった男子にとっては、フィービー・ケイツのトップレス姿が拝める作品として有名でしょう(笑)。
原作は16歳でローリングストーン誌の記者となり、のちに映画監督にもなったキャメロン・クロウが22歳のときに書いた小説。映画では脚本も担当しています。
フィービー・ケイツも脇役なんですが、他の出演者のショーン・ペンやジャッジ・ラインホルド(『ビバリーヒルズ・コップ』におけるエディー・マーフィーのちょっと頼りない相棒の人です)やフォレスト・ウィテカー(映画『バード』のチャーリー・パーカー)などが記憶に残るショートエピソードや数多くの名シーンで作品を盛り上げます。そういう意味では彼らの存在感は、ストーリーのメインキャラ以上です。
そういった小ネタ満載のためかカルト的な人気を持つ作品でもあります。ちなみにニコラス・コッポラ名義、若き日のニコラス・ケイジやハートのギタリストでキャメロン・クロウの妻、ナンシー・ウィルソンなどもチョイ役で出演しています。
そしてキャメロン・クロウの監督作がそうであるように作品と音楽の関係が密接です。だからサントラもイーグルスのドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ドン・フェルダー、ティモシー・B・シュミットの各ソロ、スティーヴィー・ニックス、ゴーゴーズ、サミー・ヘイガー、ドナ・サマー、ビリー・スクワイアなどなど豪華なメンツ。
映画の中で印象に残るのは冒頭のゴーゴーズ「ウィ・ガット・ザ・ビート」(サントラ未収)、ティモシー・B・シュミットの「ソー・マッチ・イン・ラヴ」がかかるシーン。日本でもパイオニアのプライベートのCMで使われヒットしましたよね。そして主人公ステイシー(ジェニファー・ジェイソン・リー)の体験シーンの度にかかる「誰かが彼女を見つめてる」...
70年代のジャクソン・ブラウンが好きな人にとってはちょっと面食らうくらいに軽くてキャッチー、そしてスウィートなラヴソングです。60sっぽいメロディーやドゥーワップの要素を取り入れるのは70年代からお得意の彼らしい、ちょっとノスタルジックな楽曲。そしてちょっぴりせつなくなるんです。後年になってじわじわ再評価を受けた映画同様、この主題歌も色褪せない、不思議な魅力を持ってます。
社会派な歌詞でも評価を受けるジャクソン・ブラウン。でも今でもライヴでこの曲をさらっとアコースティックで演奏してくれたりするところが好きです。今年の来日公演でも期待してますよ。
2017.07.11
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