1992年 1月9日

野島伸司の青春群像劇【愛という名のもとに】主題歌は浜田省吾「悲しみは雪のように」

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脚本・野島伸司、青春群像劇の名作、「愛という名のもとに」


“青春群像劇” と 呼ばれるジャンルがある。複数人の若者を登場させ、個々にスポットを当てながら生き方の葛藤や集団の織りなすドラマを描く作品のことだ。青春群像劇には名作が多いと私は思う。

洋画だと『アメリカン・グラフィティ』(1973年)、『ブレックファスト・クラブ』(1985年)、邦画だと『リリィ・シュシュのすべて』(2001年)、『桐島部活やめるってよ』(2012年)あたりが思い浮かぶ。

もちろんTVドラマでも青春群像劇は数多く作られてきたし、これからも作られるに違いない。ただ、このジャンルを耳にしてパッと思い浮かぶ作品といえば、やはり『愛という名のもとに』にトドメを刺す。

放送は1992年。フジテレビ『木曜劇場』枠の冬ドラマとして人気を博し、15分拡大して放送された最終回は32.6%の高視聴率を叩き出した。脚本家は泣く子も黙る野島伸司。ドラマ全盛期を代表する1本として語り継がれる名作である。

実質的に7人全員が主演、濃密に描かれた人間模様


大学時代、ボート部の仲間として固い友情で結ばれていた7人の若者たち。物語は卒業から3年、恩師の葬式で久しぶりに再会したところから幕を開ける。



メインキャストは鈴木保奈美、唐沢寿明、江口洋介の3人だが、他の4人ーー 洞口依子、石橋保、中島宏海、中野英雄、それぞれの物語も丁寧に描かれており、実質的に7人全員が主演といっても過言ではないほど、全12話のなかで濃密にそれぞれの人生模様が交錯していく。

ストーリー前半は教師の貴子(鈴木保奈美)と代議士の息子である健吾(唐沢)の結婚をめぐる摩擦という比較的オーソドックスな題材を軸にして進み、後半に入ると7人それぞれの悩みや葛藤をより深掘りしながら展開していく。

各々が抱える悩みは不倫やパワハラ、予期せぬ妊娠、夢の挫折など普遍的なものが並ぶ。決して突飛な設定ではない。だからこそ感情移入がしやすく、吸い込まれるように見入ってしまうのだ。30年経った今となれば、やや古めかしい価値観に戸惑う部分もあるにはあるが、根っこの部分では若者の悩みというのは、いつの時代もそう変わらないものだと感じる。

危険な香りが漂う江口洋介


学生時代から健吾とはライバル関係にあった時男(江口洋介)は定職に就かず、金にもだらしないが女にはモテる典型的なヒモ男。月とスッポンのような二人だが、根底では固い絆で結ばれている。



肩まで伸ばした長髪がトレードマークの江口は翌年、同じ野島伸司脚本の『ひとつ屋根の下』で演じた “あんちゃん” 役で一世を風靡することになるが、時男は清廉潔白なあんちゃんとは真逆の危険な香りが漂う男だ。

時男と健吾、それに貴子を中心に、彼ら7人は生活環境も性格もてんでバラバラだが、同じ青春を共有した仲間として社会人になっても励まし、支え合う。時に厳しいことも言い合えるような人間関係。このように損得なしで付き合える旧友の存在の大切さは、社会に出ると身に沁みて実感させられるものだ。

美しく、尊い、青春の苦楽を共にした仲間たちの絆


本作には常に “仲間” というフレーズがついて回る。単なる友人を超えた存在として、彼らは事あるごとに学生時代からの行きつけのダイニングバー “REGATTA” に集まっては近況を報告し合う。青春の苦楽を共にした仲間たちで力を合わせれば、なんだって乗り越えられるんだーー。そうして信じて疑わない彼らの絆は、確かに美しく、尊いものかもしれない。

しかし一方で、仲間を裏切る行為や、感情の行き違いで互いを傷つけ合う場面も随所にみられる。彼らは決して万能のチームではない。潔癖なまでに正義を貫くことが通用した学生時代とは異なり、社会に出れば様々な理不尽に耐え、妥協することが求められる。

彼らにはまだそれに順応できるほどの器用さは無く、時に戸惑い、衝動的に過ちを犯してしまう。ある意味でこの7人は純粋すぎるのだ。

だから彼らはいつでも本気で怒り、涙し、ぶつかり合う。そのあまりにも混じり気のない無色透明な仲間意識は、“仲間” という名のサークルに依存しているようにさえ見える。

多くの群像劇がそうであるように、本作もまた未熟な若者たちが様々な困難に直面しながら、自らの意志で人生を歩き出すまでの旅立ちの物語と言えるだろう。

野島伸司のキャリアにおいても重要な1作


物語は終盤、ある人物がとる衝撃的な行動によって大きく揺れ動くことになる。若者向けのドラマとは思えないセンセーショナルな描写で視聴者を驚かせるのは、いかにも野島伸司らしい手法だ。

ただ、本作を手がけるまで野島が『すてきな片想い』『101回目のプロポーズ』といった、いわゆるトレンディドラマの書き手だったことは意外と知られていないのではなかろうか。

このあと野島は『高校教師』『未成年』『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』に代表されるハード路線を確立し、ドラマを通じて人間の本質的な汚さ、美しさを世に問いかけてきた。その転換点となった『愛という名のもとに』は、野島のキャリアにおいても重要な1作となった。

本作のプロデューサーは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット作を量産していた伝説的なテレビマン、大多亮である。野島とタッグを組むのは連続ドラマでは実に5度目。数多くの大ヒット作品を生み出した最強コンビだが、今作ではトレンディドラマとは一線を画した硬派な人間ドラマに挑戦した。

その結果として後世に語り継がれる名作を生み出し、なおかつテレビマンにとって命ともいえる視聴率でも破格の数字を叩き出したのだから、大多、野島の両者にとっても本作は会心の1作だったに違いない。

主題歌は浜田省吾「悲しみは雪のように」




そして本作を語るうえで絶対に外せないのが浜田省吾の存在である。主題歌「悲しみは雪のように」は元々1981年にリリースしたアルバム収録の1曲だったが、同ドラマのタイアップの依頼をうけてアレンジを一新し、再レコーディングを敢行。あまりにも有名なサビもさる事ながら、私はイントロのシンセサイザーの音色を聴いただけでドラマの名シーンが浮かび上がり、思わず目頭が熱くなってしまう。

当時のドラマは主題歌とセットで語られることが多いが、本作もまたドラマの内容と主題歌とが奇跡的なシンクロを果たした1作である。

主題歌だけではなく、挿入歌やBGMにもハマショーの楽曲が随所で使われており、ドラマファンだけでなくハマショーマニアにとっても楽しめる作品と言えるだろう。

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2023.10.15
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