スーパースターとスーパーモデル、華麗なるミュージシャンのヨメたち！

名物企画「スポーツ・イラストレイテッド」の水着特集

世界中の男性諸氏がひそかな楽しみにしているといわれている米誌『スポーツ・イラストレイテッド』の冬の風物詩「The Swimsuit issue」（水着特集）。

もう何十年と続く名物企画だが、この号に最新の水着（中にはとても水着といえないようなものもあるが…）を身に纏って登場するモデルたちの中には、有名ブランドのイメージキャラクターを務めるトップモデル、かつて “スーパーモデル” と呼ばれた時代のミューズ（女神）たちも多く含まれている。

また近年の特集では華麗なモデルたちだけではなく、リアルアスリートが登場することでもお馴染みで、テニスのマリア・シャラポワやスキーのリンゼイ・ボンのようにモデルたちに引けをとらない美女達もいれば、女子総合格闘家のロンダ・ラウジーやテニスの豪腕女王セリーナ・ウィリアムスまで登場するから、これらは昨今の風潮というか、美しさの価値観の多様性が反映されていて興味深い。

クリスティ・ブリンクリーとアレクサ・レイ・ジョエル、そしてビリー・ジョエル

そしていよいよその枠は、いわゆるオーバーサイズモデル（ぽっちゃりさん）たちや、エイジレスな人たち（美魔女・美熟女）にまで広がりを見せ始めている。2017年の特集で、まさにエイジレスの象徴として母娘で誌面に登場したのが、当時御年63歳を迎えたかのスーパーモデル、クリスティ・ブリンクリーと、アレクサ・レイ・ジョエル。ご存知ビリー・ジョエルの元の奥方と実の娘である。

約35年ぶりの登場ながら、かつてはアメリカの恋人と言わしめ、今も現役のモデルというだけあって、その美貌と完璧なプロポーションは健在。一方のアレクサといえば、本業はミュージシャン、母親譲りのスタイルは素晴らしいが、父親の音楽に親しんだ我々としては、あまりにもよく似た目元が我々の判断を曇らせてしまう、という印象だった。

ビリーとクリスティについては1983年のビッグヒット「アップタウン・ガール」のMVでの共演をきっかけに恋愛関係となったと思われている方は多いが、実際はお付き合いの方が先行していたようだ。我々はMVのストーリーを地でいくようなエピソードを思い描き、さえない中年男を演じるビリーが高嶺の花を射止めたかのように、勝手に妄想を膨らませていた。

彼らの結婚生活は９年で終わってしまったが、その後互いに２度の結婚を繰り返しているところを見ると、どうやら２人の間では最長不倒の相性であったらしい。

仲人はMTV？ 音楽界のスーパースターとトップモデルの出逢い

音楽界のスーパースターとトップモデルとのカップルは、古くはミック・ジャガーとジェリー・ホール、デヴィッド・ボウイとイマンなど、決して少なくはない。

ヤズミン・ル・ボンはその名の通り、デュラン・デュランのボーカル、サイモン・ル・ボンの奥方。25歳の年の差カップル、ロッド・スチュワートとレイチェル・ハンターと続くと、英国のロックスターは伝統的によほど一流モデルがお好みと見える。

米国勢では婚姻は無いが、アクセル・ローズとステファニー・セイモアとか、シンディ・クロフォードやナオミ・キャンベルが浮名を流したことも一度や二度ではないだろう。

彼らの出逢いのきっかけとして、MTVが果たした役割は小さくない。当時のミュージシャンやレコード会社は莫大な費用をかけて映像制作に勤しんだ。キャスティングにも予算を割いて話題づくりを行ったから、一流のアクターやモデルとの共演も実現できたはずである。

カーズのリック・オケイセックとポーリナ・ポリツコヴァの場合…

カーズのリック・オケイセックと妻のポーリナ・ポリツコヴァの出逢いは1984年のヒット曲「ドライヴ」の共演がきっかけだ。ポーリナはスウェーデン人のモデルだが、名前からうかがえるように元々はチェコの出身。ベルリンの壁が健在だったこの時代、東欧出身のモデルが有名誌の表紙を飾ることは画期的なことだった。『スポーツ・イラストレイテッド』水着特集の表紙を1981年まで飾ったクリスティの後、1984年から２年連続でカバーガールを担っている。

さてポーリナがヒロイン役をつとめたこの曲のリードボーカルは、今は亡きベンジャミン・オール。哀愁を帯びた声質からすれば、リックよりもベンジャミンの方がバラードに向いているのは確かだが、このMVでポーリナと対峙するシーンが多いのは、ナゼかボーカルを取っていないリックの方。

気に入った娘をキャスティングして、都合のいいように演出し、共演をきっかけに口説き落としたとしたら、まさしくやりたい放題。当時リックは35歳、ポーリナは19歳だったというから、まったくけしからんヤツである。

やりたい放題という点では、自分の彼女を相手役に引っ張ってきたビリーも似たようなものだが、その点リックは終生、彼女を伴侶として家庭を守った。リックがこの世を去ったのは2019年。結婚が1989年というから、結婚生活は実に30年。

著名なモデルとミュージシャンのカップルとしては、1983年に結婚して今年で37年目を迎えたキース・リチャーズとパティ・ハンセンのカップルに続く長さであった。

華やかな世界に身をおき、常に世間の目にさらされながら、個人の幸福を追求することは、難しいことなのかもしれないし、我々が見せられているのは、虚構に過ぎないかもしれない。しかしビッグカップルであるほど、ハッピーエンドを期待してしまうのは、それが我々にとっておとぎ話のような夢の延長だからだと思う。


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※2017年９月24日に掲載された記事をアップデート

2020.09.29