7月6日

FM STATION の時代《カセットテープ・ミュージック》エアチェックはFM雑誌が生命線!

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昨今のアナログ盤ブームともつながるカセットテープの質感とは?


「エアチェックって、なんですか?」

これは20代のラジオ番組制作スタッフと話していたとき、言われた言葉だ。一瞬「エ?」と思ったが、知らないのも無理はない。だって、FM番組をカセットテープに録音して、流れていた曲をステレオ・高音質で自分のものにする喜びなんて、サブスク聴き放題が当たり前の世代には「はぁ?」だろう。

かく言う私も、もうあの時代には戻れない。だってサブスク、便利だもん(笑)。今やラジオ番組も、専用アプリを使ってスマホで録音できるし。エアチェックの戦果であるカセットテープは今も保存してあるけれど「よくあんなメンドくさいことをやっていたなぁ」と、自分を褒めてあげたくなるほどだ。

だが一方で「カセットテープの音って、味があっていいっすよねえ」という声もある。これも前述の20代スタッフによる発言だ。「エ? 再生機持ってるの?」と聞いたら、中古のカセットデッキを先輩に譲ってもらって聴いているんだとか。

これって、昨今のアナログ盤ブームともつながる話だ。わざわざ手間をかけてアナログなメディアで音楽を聴くことが、彼らにとってはクールなのである。実際、音の質感が全然違うもんね。

エアチェック派には欠かせない情報源、FM雑誌


で、本題。かつて、”FM雑誌” というものがあった。エアチェック派には欠かせない情報源で、この先2週分の番組表だけでなく「その番組で流れる予定の曲」と「曲の尺」まで書いてあるという、カネのない音楽好きの中高生にとってはまさに “生命線” だった。

なぜ曲の尺まで書いてあるのか? それで時間を計り、尺に合った分数のテープを買うリスナーのためである。音楽用カセットテープは46分、54分、60分、90分、120分の5種類があった。ね、メンドくさいでしょ? 分数が短いほうがテープ代が安いの。だからなるべく46分(片面23分)で曲が収まるように計算するわけ。

ときどき、新譜じゃないアルバムをフルでかけてくれる番組なんかもあって、ビートルズ・デビュー20周年の1982年、NHK-FMがビートルズ研究家・香月利一氏の解説付きで全アルバム+シングルを2週間かけて流す特集を放送してくれたときは「神かよ!」と思った。

「えー、そんなことしたら、レコード買わなくなるじゃん?」と思ったそこの若いキミ! チッチッチ。違うんだなぁ。逆なの。何度もカセットで聴いてると、オリジナル盤が欲しくなるんですよ。エアチェック音源って、どう頑張ったって細かいノイズが入ってくるし、音質はオリジナルより劣化する。何度も聴いてるとテープが伸びてくるという物理的な問題もあるし(笑)。

実際、ビートルズ全曲をカセット代以外無料で手に入れた高校生の私は、数ヵ月後、その音では満足できなくなり、毎月小遣いをはたいて発売順に全アルバムを買っていくビートルマニアと化した。「損して得取れ」とはまさにこのことで、結果的に音楽ファン=購入者を増やすことになることをレコード会社もわかっていたのだ。

で、まだWebがない頃は、そういうありがたい番組が放送されるという情報もFM雑誌のおかげで知ることができた。各誌それぞれ個性があり読者層も違ったけれど、ここで80年代初頭、どんなFM雑誌が出ていたかを振り返ってみよう。

FM雑誌のニューウェーブ「FM STATION」


“FM雑誌の元祖” が『FM fan』(共同通信社)。なんと1966年創刊の老舗雑誌で、そもそもFM普及のために創刊されたとも聞く。こちらはクラシックの記事が多かった印象がある。

対して、ロックやポップスの情報に重点を置いていたのが、1971年創刊の『週刊FM』(音楽之友社)。出版元はクラシック本のイメージがあるけれど、そちらに寄せると先発の『FM fan』に勝てないとみて差別化を図ったのだろう。私もはじめはこの『週刊FM』から入った。

やがてこの市場に、大手出版社も参入してくる。1974年創刊『FMレコパル』(小学館)だ。小学館らしくマンガも載っていて、オーディオ情報もあったりと、バラエティに富んだ内容だった。

1980年の時点では、上記3誌が競い合う “三国時代” だったのだが、1981年、ここにニューウエーブが登場する。『FM STATION』(ダイヤモンド社)だ。通称「Fステ」。出版元はビジネス書のイメージがあるけれど、実はこういう音楽誌も出していたのだ。

『FM STATION』が画期的だったのは、まず判型が大きかったこと。A4ワイド判で、とにかく先行3誌に比べて圧倒的に番組表が見やすかった。さらに、他誌が扱っていたクラシックやジャズをバッサリ切り捨て、若者が聴くポップス、ロックに情報を特化。創刊当時、中3だった私がすぐ ”Fステ派” になったのは言うまでもない。

ひときわ目を引くカラフルでポップな表紙


『FM STATION』の売りはもう一つ、表紙を飾った鈴木英人氏のイラストである。創刊号はシーナ・イーストンをポップアート風に描いたイラストだった。カラフルでポップな表紙はひときわ目を引き、書店でつい手に取ったのを覚えている。

鈴木氏のイラストは表紙だけでなく、付録として付いていた「カセットレーベル」にも載っていた。これが地方の中学生には「おっしゃれー」に見えたのですよ。…… あ、これも世代によっては説明が必要か。



今は曲をダウンロードすると、曲名は自然と表示されるが、カセットテープの場合「どんな曲が入っているか」をケースに入っているレーベルに自分で書く必要がある。これをイラスト入りのに取り替えると、ことのほか「映(ば)える」のだ。

気になる女のコに自分の好きな曲を詰め込んだテープを渡したいとき、切り抜いて使える鈴木氏のイラスト入りカセットレーベルは大きな武器になった。『FMレコパル』も対抗して、小学館のマンガ雑誌で連載している人気マンガのイラスト入りレーベルを付録に付けたりして。でも『美味しんぼ』のレーベルは要らなかったと思うぞ。

ピーク時は50万部! 音楽好きはみんな ”Fステ派”


創刊当初は苦戦した『FM STATOIN』だが、こういった先行3誌にない特色が若年層の心をつかみ、ピーク時は50万部を誇るナンバーワンFM誌へと成長していった。クラスの音楽好きな連中は、みんな ”Fステ派” だったもんなー。

FM雑誌は、Webが普及した90年代に入るとその使命を終え、相次いで休刊。「Fステ」も1998年、その歴史に幕を下ろした。発行期間は20年足らずだったが、80〜90年代の音楽文化に「Fステ」が果たした役割は大きい。鈴木氏のイラストが入ったカセットテープが部屋にたくさんある読者も多いだろう。あぁ青春。

「FM STATION」がCDとカセットで復活


その『FM STATION』が昨年に続き、この夏、CDとカセットで復活するという。それが、7月12日発売の2タイトル、『FM STATION 8090 ~GOOD OLD RADIO DAYS~ DAYTIME CITYPOP by Kamasami Kong』、『FM STATION 8090 ~GENIUSCLUB~ NIGHTTIME CITYPOP byKatsuya Kobayashi』である。

こちら、ラジオ番組の体になっていて、インターナショナルDJカマサミ・コング氏、そして日本のラジオDJ第一人者である小林克也氏が80〜90年代にFMラジオから流れていたシティポップ、J-POPをナビゲートしてくれる。もちろんジャケットは鈴木英人氏のイラストだ。…… なんか、ズルくないすか!?(笑)




そういえば、カセットテープで思い出したが、気になる女のコに何時間もかけて編集したカセットを渡したら、そのテープに、彼女が好きな男性アイドルのラジオ番組を思いっきり上書き録音された同級生がいた。「ちょうどテープ切らしてたんで助かったー。ありがとう! またテープちょうだいね!」と無邪気にお礼を言われたそうで。

「あんまりだ……」と彼は泣いていたが、たぶん選曲が彼女の趣味にまったく合ってなかったのだと思う。カセットテープはこんなふうに人生を教えてくれるのだ。

特集 FMステーションとシティポップ

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2023.04.28
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  「FM STATION 8090」DAYTIME-NIGHTTIME
 

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カタリベ
1967年生まれ
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