帰国子女でもない普通の中学生だった僕の英語力では、ウルフマン・ジャックやチャーリー・ツナが何を話しているのかまったく分からなかったけれど、日本の FM では耳にしないような曲が次々とかかるのでよく流していた。
そうした中でも、毎週土曜日の午後1時から5時までの4時間にわたってオンエアしていた 『American Top 40』は、僕のエイティーズ音楽においてバイブルであり教科書な存在だった。もちろん、いくら DJ のケイシー・ケイサムが話す英語が明瞭だったとはいえ、当時の僕ではとても聞き取れるものではなく内容はわからなかった。しかし、番組内で紹介される楽曲とアーティスト名については知る武器を見つけたのだ。FM雑誌 である。
共同通信社が発行していた『FM fan』には「Billboard Hot 100」、ダイヤモンド社発行の『FM STATION』(81年創刊)には「Cash Box TOP 100」それぞれのチャートが掲載されていた。当時はチャートインしている上位の楽曲でもすべてが国内盤としてリリースされているわけではなかったので、きちんと原題と邦題が分かれていた。
―― で、どうするかというと、オンエアの際に最新号の FM雑誌 のチャート欄を並べて、ラジオから流れてくるケイシーの DJ にひたすら集中するのだ。イントロが流れて楽曲とアーティスト名みたいな単語を聴いたら、すぐにチャートの中からそれらしき曲を探し出す。最初の頃はオンエア中にリアルタイムでやったが、とても追いつけないのですぐに録音するようになった。60分のカセットテープにして4本(120分テープは巻き込むので使わないのが当時の常識だったしね)。