2022年 6月29日

世界標準となった日本のシティポップ、アイドルや女優の名作をキャッチせよ!

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世界標準になった “シティポップ”。その本質とは?


感度の高い音楽ファンが “シティポップ” というワードに敏感に反応するようになったのは2018年ぐらいからか。その翌年には、1984年の4月にリリースされた竹内まりや「プラスティック・ラブ」が再評価され、オリジナルMVが制作され海外からも絶賛される。極めてドメスティックな視点で作られ、ソフィスティケートされた音楽ジャンルは世界標準になっていく。

この世界標準というのが、ムーブメントの勢いに拍車をかける。海外において、日本のシティポップというのは極めてレアなジャンルだ。ディグしてもディグしてもお目にかかることがないディスクが日の目を浴び、ここに向けて熱狂する世界標準の “ヲタク・スピリッツ” こそがシティポップムーブメントであり、日本の音楽ファンにとってもそれは同じである。

つまり、「こんなヤバいの見つけたよ! どう?」と掘り当て、共通認識を持つ音楽ファンと分かち合うことが本質でもある。

この本質=ディグする精神、によって、様々な作品が再評価されている。先程、例として挙げた竹内まりやの「プラスティック・ラブ」がシティポップを象徴する楽曲であったとしても、このジャンルの定義は曖昧で、捉えどころが難しいという現状もある。ざっくりと言ってしまえば、豊かさが加速する時代に、その一歩先を見据えたようなアーバンな世界観、海外のフュージョンやAORなどの多様なジャンルを積極的に取り入れフォーマットにしながらも日本人の琴線に触れるメロディを構築した職人気質の音楽であるとも言えよう。

ディグする楽しさを体現した「フィーメル・シティポップ名作選」


このシティポップというワードから大滝詠一や山下達郎という偉大な先人の名前をイメージする人も多いと思う。確かにそれは正解であるが、それだけではない。つまり、シンガーソングライターの作品だけではなく、楽曲提供というスタンスからも、極めてクオリティの高い作品が数多く存在している。

シティポップムーブメントの面白いところは、アイドルや女優、つまり、ひと昔前までは、真っ当な評価が得られなかった作品の素晴らしさを多面的に解釈し、再評価している点にもあると思う。

このたび、ビクターから『フィーメル・シティポップ名作選』として10枚のアルバムがリイシューされた。このセレクトがなんとも興味深く、シティポップのディグする楽しみを十二分に体現していた。リイシューされた作品は…

■ 桜田淳子『パーティ・イズ・オーバー+2』(1979年リリース)
■ 白石まるみ『風のスクリーン+2』(1982年リリース)
■ 田中好子『好子』(1984年リリース)
■ 伊藤つかさ『クレッシェンド+1』(1984年リリース)
■ 石野真子『サフラン+4』(1985年リリース)
■ 荻野目洋子『ラズベリーの風+5』(1986年リリース)
■ 松本伊代『Private File+4』(1989年リリース)
■ 萬田久子『夏の別れ~映画「夏の別れ」より~』(1981年リリース)
■ 鷲尾いさ子『彼女の風 / 20才のデリカシー』(1990年リリース)
■ 高橋ひとみ『カラフル』(1991年リリース)
※タイトル表記にある、+数字はボーナストラックの楽曲数

リイシューすることの意義


リリースされた作品を俯瞰し注目すべきは、1979年から1991年の間で、シティポップ的解釈でソフィスティケートされた音楽がどのように変化していったかという点だ。

1979年にリリースされた桜田淳子『パーティ・イズ・オーバー+2』が、山下達郎、後藤次利、伊藤薫といった作家陣を迎え、どのように大衆に響かせるのか、そして、これまでのアイドル然とした桜田のイメージをどのように変えていくのかに重きを置いている。それでありながら、どのように時代に即しながら洗練させていくのかという命題に真っ向から取り組んでいるように感じた。このような意義が、後に評価されるべき大きなポイントになったのではないだろうか。つまり、ここに集められたアレンジャーも含めた、作家陣の真剣勝負が垣間見られる作品となっているのだ。特に達郎氏が提供した「バカンスの終わりに」を聴けば、すぐに分かる。西海岸趣向の乾いた洗練されたメロディとキャンディポップの甘さが、桜田の特徴的な声質にグッと寄り添っている。

また、ユーロビート歌謡の先駆的作品「ダンシング・ヒーロー」をフューチャーし、1986年に荻野目洋子がリリースした「ラズベリーの風」はNOBODY、大沢誉志幸(現・大澤)、アレンジャーの船山基紀といった作家陣が織りなすダンサブルで時代の煌めきを全面的に打ち出した作品となっている。

さらに、1991年にリリースされた、鷲尾いさ子「彼女の風 / 20才のデリカシー」は、一足早い渋谷系と言おうか、フランス・ギャル、カトリーヌ・スパーク、フランソワーズ・アルディの日本語カヴァーを収録。フレンチポップ的な色合いが強い作品になっている。上手く時流を先取りした作品と言えるが、ここで醸し出される鷲尾のヴォーカルは極めて自然体だし、それでありながら楽曲ごとに見せる表情の変化が豊かだったりもする。

シティポップといえど、厳密なジャンルは多岐にわたることをこのシリーズは証明してくれている。時代の変化により、ソフィスティケートする手法が少しずつ変化しているところも非常に興味深い。しかし、共通することは、初夏の風のように心地よい感触であり、“これが80年代” という時代を象徴するサウンドデザインだ。アイドル、女優という、誤解を恐れず言ってしまえば、一過性で時代の隙間に埋もれてしまうような名盤を歴史あるレコードレーベルが再評価し、リイシューする意義は大きい。これもまた、掘り当てて分かち合うというシティポップムーブメントの本質ではないだろうか。

特集:フィーメル・シティポップ名作選

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2022.07.05
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