80年代は大滝詠一の “ロンバケ” から始まった
日本の80年代はこのアルバムで始まった。そんな話をよく耳にします。そう、それは大滝詠一のミリオンセラー『A LONG VACATION』のこと。1981年3月21日、ちょうど僕が中学を卒業して高校生になるタイミングでリリースされています。
あくまで個人的な肌感覚ですけど、80年代に突入したとはいえ1980年の空気って、なんかちょっと暗かったと思いません? それが1981年の春以降、突然パッと明るくなるんですよ。まあ、僕にしてみれば高校受験の前後ですから、環境の変化によって情報感度が上がっただけの話かもしれません。
そりゃそうですよね。いくら送り手が新しい作品を発表しようとも、受け手のアンテナが鈍かったら届かないですもんね。
指南役サンの黄金の6年間(1978年~1983年)じゃないですけど、時代の新しいトレンドは70年代の後半から始まっていて、僕が受け止められるようになったのが1981年だったってことなのでしょう。
今までとは違う新しい刺激、1981年に生まれた音楽メディア
なにはともあれ、高校生になった僕は以前にも増して音楽を聴くようになるのですが、音楽そのものを楽しむというより、今までとは違う新しい刺激を求めていたといったほうが正しいかもしれません。今日は、そんな “田舎のマセガキ” が刺激的な情報を摂取するために外せなかった1981年のメディアを3つ紹介しましょう。
①「ベストヒットUSA」テレビ朝日
1981年4月スタート
アメリカでMTVが開局したのが同年8月ですから、それよりも早かったんです。というか、日本でMTVの放送が(番組として)始まったのは1984年からなので、80年代の音楽映像文化を真っ先に牽引したのがこの番組であることに異論を挟む余地はないでしょう。いまや小林克也サンのライフワーク、現在もBS朝日で放送中です。
②「元春レイディオ・ショー」NHK-FM
1981年4月スタート
一般的には「サウンドストリート」と言ったほうが通りが良いかもしれません。そう、渋谷陽一や坂本龍一もパーソナリティを担当していた月~金ベルトのラジオ番組。“ブルーマンデーをぶっとばせ” を合言葉に月曜日のDJだった佐野元春が良質な音楽を紹介してくれました。当時、50~60年代のアメリカ音楽がかかる番組なんてほとんどありませんから、月曜日が待ち遠しくて。
③「FM STATION」ダイヤモンド社
1981年7月創刊
FMから流れてくる音楽をカセットテープに録音することは、当時のティーネイジャーにとってこの上ない楽しみでした。ご存じ、エアチェックです。そのためには、どの曲がいつ、どの番組でかかるのかを前もって知る必要があります。そんな時に重宝したFM情報誌ですが、本誌のポイントは鈴木英人をイラストレーターに起用した表紙。付録についていたカセットレーベルも時代の潮流を掴みました。そうそう、英人と共に80年代を象徴する永井博のイラストは “ロンバケ” のカバーアートに使われましたよね。
渋谷のタワーレコードや原宿ローラー族も1981年
この他、タワーレコード渋谷店のオープンや、原宿の歩行者天国でローラー族が踊りまくったのもこの年です。1950年代以降、積もりに積もったアメリカに対する憧れのようなものが多くの日本人に浸透し、次々と可視化されていった年だったのでしょう。
やはり、エイティーズの本格稼働は1981年からなのです。
※2021年1月4日に掲載された記事をアップデート
特集 FMステーションとシティポップ
2022.07.23