7月5日

機動戦士ガンダムⅡ ー 明日という未来に希望を持たせてくれた「哀 戦士」

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宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた――

言わずと知れた『機動戦士ガンダム』冒頭ナレーションである。このナレーション、回を追うごとに少しずつ物語を振り返るという凝った作りでしたよね。何とも懐かしい…。

さて今回は、女性キャラクターの中でも特に人気のあった “マチルダさん”、そして劇場版主題歌の一つである「哀 戦士」を振り返ってみたい。


■映画化までの道のり

『機動戦士ガンダム』(1979年)は、日本サンライズが世に送り出したロボットアニメの金字塔だ。舞台は宇宙戦争であり、冒険小説『十五少年漂流記』をモチーフに考えられたこの物語は、少年たちの成長を通して人間本来の愛や憎悪を描くというサブテーマが色濃く含まれていた。そして、その映像は今までのロボットアニメとは違い、歴史上で起こった戦争を彷彿させるリアルが随所に散りばめられていた。

想像をはるかに超えた骨太な内容は、僕を含め日本中の少年少女たちを夢中にさせてゆく。そしてその勢いはテレビだけに留まらず、いよいよ映画化への道を切り開いたのだ。


■マチルダ中尉というカリスマの存在

劇場版はテレビシリーズを振り分けた3部作である。僕はその2作目に当たる『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』が大好きだ。

この作品は、連邦軍の戦艦ホワイトベース内でリーダー的存在だったリュウ、幼い兄弟を抱え、生きるためにスパイ活動をするミハル、主人公の少年・アムロに多大なる影響を及ぼしたジオン軍のランバ・ラル大尉とその内縁の妻ハモン… そしてアムロが憧れる連邦軍の女性士官マチルダとその婚約者ウッディ大尉など、主要キャラクターが次々と死の末路を辿っていく。そして、戦争が人の命をいとも簡単に奪ってしまうことを物語は描き、無情な世界を突き付けてくる。

ただその切なさを上回る勢いで、僕は “マチルダさん” が、好きで、好きでたまらない。

マチルダ・アジャン、地球連邦軍ミデア補給部隊の隊長であり階級は中尉、軍服に隠しきれない抜群のプロポーション(B84 W60 H88)が艶めかしい。涼しげな美人に描かれるセイラさんとは対照的に、マチルダさんの瞳は大きく描かれ、凛とした場面に置かれてもキュートで可愛らしい表情を見せる。

富野喜幸(由悠季)監督からは「南欧風でロングヘアの女性」という作画指定だったけれども、安彦良和が描いた女性はショートカットであった。マチルダさんは、戦闘中であってもルージュを欠かさず、実際はタレ目なのにアイラインでキリッと仕上げる化粧上手なところも含め、実に細やかなオシャレさんなのだ。

「マチルダさんみたいなの、恋人だったら最高だよな…」

と、同僚と雑談しているカイに対して「手の方がお留守のようね… 素敵な恋人探してね」と、軽くあしらう様子は、当時13歳だった僕に24歳という大人の色気を感じさせてくれた。もちろん僕の脳内に憧れの女性としてインプットされたことは言うまでもない。

初めて会ったアムロに対して「あなたはエスパーかもしれない」と、ニュータイプの観念を察知する勘の良さや、敢えて補給部隊に所属する理由として、「戦争という破壊の中でただひとつ、物を作っていくことができるから… かしらね」という個の信念がブレないところもまた格好良い。

また「戦いは破壊だけでも、人間ってそれだけでは生きていられないと私には思えたからよ」というマチルダさんの台詞にも感銘を受けた。「戦い」「破壊」という言葉を、「仕事」「作業」に置き換えてみれば、現実社会でもそうだよなぁと思わせる秀逸な名言だと思う。

これって実は現場のアニメーターたちの声を代弁したようにも深読みできるし、そもそも僕が料理という物を作り出すことを仕事にしたのも、このマチルダさんの「物を作っていくことができる」という台詞に影響されてのこと。物を作り出すって良い言葉だなぁと純粋に思ったのだ。

それにしても、マチルダさんの人気は女性キャラクターの中でも異常だ。テレビ放送では9話、14話、23話、24話のたった4回しか登場しない。第2話以降、ほぼ全編に登場し主要キャラクターであるセイラさんが人気なのは当然だけれど、その人気を二分することからも “マチルダさん人気” の異常さがどれほどのものか、わかるだろう。

放映当時は無かったけれど、現在主要キャラクターとしてマチルダさんのフィギュアが販売されている。さらに付け加えるならば映像本編中では想像によるイメージシーンだったウェディング姿のフィギュアまであるくらいだ。

マチルダさん… 美しく、そしてチャーミングでありながら職業軍人としての強さと、一瞬も怯むことなくジオン軍に向かう勇敢さ、そして非業の死を遂げたことも含め、そのカリスマ性は今もって絶大なのである。


■明日という未来に希望を持たせてくれた主題歌「哀 戦士」

人間の死と向き合う映画の中で、狂おしく切なくなる気持ちに爽やかな希望を持たせてくれたのは井上大輔の歌だった。お気付きだろうが、井上大輔とは、『ジャッキー吉川とブルーコメッツ』のリードヴォーカル井上忠夫が後に改名した名前である。

有名な「ブルー・シャトウ」、シャネルズの「ランナウェイ」やフィンガー5の「学園天国」など、作曲家としても数多くのヒット曲を世に送り出した実力者だ。この主題歌「哀 戦士」は、日本大学芸術学部で同級生だった富野監督が、その才能を見込み作曲を依頼したことで実現した。

さて、この「哀 戦士」、歌詞の内容はとても重い――


 死にゆく男たちは
 守るべき女たちに
 死にゆく女たちは
 愛する男たちへ

 何を賭けるのか 何を残すのか
 I pray, pray
 to bring near the New Day


きっと、マチルダさんはアムロの中に希望を見つけたのだろう。新しい明日のためにアムロに賭け、アムロを残すという選択… この物語に含まれるいくつものエピソードは全てここに行き着くことになる――。

そんな重苦しい空気を一変させてくれたのは、井上大輔が繰り出す軽快なポップロックサウンド。キャッチーなピアノ・イントロとソウルフルに歌う井上大輔の声が、聴く者のハートを捉えて離さない。僕は、この「哀 戦士」は劇場版シリーズきっての名曲だと思う。

2019年『機動戦士ガンダム』は、テレビ放送開始から40周年という節目を迎えた。できればこの劇場版ファーストガンダムを3本続けて映画館で観てみたいものだ。さすがにそれは無理かなぁ。それでもファンとして楽しみな一年になることは間違いない!

2019.03.26
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カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎
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