発起人は吉川晃司と桑田佳祐、伝説の音楽番組「MERRY X’MAS SHOW」
皆さんは、観ましたか?
皆さんは、覚えていますよね?
1986年と1987年のクリスマスイブに日本テレビ系列で放送された伝説の音楽番組『MERRY X’MAS SHOW』。
30年以上経った今でも、この番組は僕にとって宝物のような存在だ。そして、これからも決して忘れることはないだろう。それほどこの番組は凄かった。
クリスマスイブ限定の特別プログラムで、発起人は吉川晃司と桑田佳祐だ。
「ミュージシャンをたくさん集められるのはあなたしかいない」という吉川晃司の挑発に乗った桑田佳祐の声がけで、当時、第一線で活躍していたミュージシャンが一堂に会して収録された。
とにかくハチャメチャで、メチャクチャ格好良くて、鳥肌は立つし… 僕なんか感動で涙と鼻水が出まくっていた。明石家さんまの司会はちょっと浮いていたけど、それも桑田佳祐の計算の内だ。これだけのメンバーが揃って、名曲がセッションされたテレビ番組は後にも先にも無いのではないか?
さあ、今ではまず制作することができないであろう、この懐かしく、贅沢で偉大な音楽番組を、数回に渡って紹介させてもらおうと思います。
オープニングナンバーはビートルズの「カム・トゥゲザー」
時はバブル景気が始まったと言われる、1986年12月――
当時、大学3年生だった僕は、クリスマスイブなのに一人寂しく自宅でテレビを観て過ごしていた。そんな中、いきなり始まった『MERRY X'MAS SHOW』。今でいう番宣のようなものは無かったんじゃないだろうか。少なくとも僕はこの番組のことを事前には知らなかった。新聞の TV番組欄でこの番組が放送されることに気が付いてホントに良かったよ。
イブに一人で過ごすのはちょっと悲しかった。だけど、彼女と過ごしていたらこの番組をリアルタイムで観ることはできなかった。まだ当時はビデオデッキがさほど普及していない時代、もし見逃していたら一生後悔したに違いない。番組のオープニングは「カム・トゥゲザー」だ。メドレー形式で歌われるレノン=マッカートニーの名曲を観て、僕はその参加ミュージシャンの凄さを知ることになる。
これはただ事じゃないぞ!
自然と正座状態になり、テレビに向き直ったことを覚えている―― この年は17曲にわたるセッションが繰り広げられ、もちろんそのすべてが素晴らしいのだけれど、全部を振り返るのは難しいので、その中でも特に印象に残っているセッションを紹介していきたい。
まさに鳥肌もの! KUWATA BAND と BOØWY の共演?
まずは、この番組のために結成された総勢18名のスペシャルバンド “ロッケストラ” でセッションされた、T・レックスの「テレグラム・サム」とザ・ローリング・ストーンズの「夜をぶっとばせ(Let's Spend the Night Together)」。選曲のなんと素晴らしいことか!
―― 歌い上げるのは、桑田佳祐、氷室京介、アン・ルイス、吉川晃司の4名。ギターは布袋寅泰、鮎川誠、高見沢俊彦の共演となった。人によって好き嫌いはあるかもしれないけど、KUWATA BANDとBOØWYの共演って凄くないですか?… 僕の想像だけど、事前のリハーサルなどあまりやらずの一発撮りに近かったんじゃないかな。
実力派同士が、互いの様子を伺いながらの粗削りなセッション。これが実に素晴らしく、まさに鳥肌もの! さらにバックダンスを務める米米CLUBのダンサーチーム、シュークリームシュも加わって――
もう… たまりません。
サンタナに捧げた鈴木雅之とアルフィー桜井賢のセッション
1986年の放送で披露されている17曲の中から紹介したい曲は、番組のオリジナル編曲で、洋楽と邦楽の名曲をマッシュアップした3曲。これこそ、読者の皆さんに観て頂きたい本命のセッション。実に素晴らしい仕上がり、感動すること間違い無し!
まず1曲目は「別れても好きな人 - Dedicate to SANTANA」。
ロス・インディオス&シルヴィアの「別れても好きな人」とサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」のマッシュアップ。鈴木雅之と桜井賢(THE ALFEE)のセッションで、とにかくアレンジが秀逸。
「別れても好きな人」と「ブラック・マジック・ウーマン」が何の違和感もなくひとつになって、黒サングラスの二人が真面目にふざけてるところがとにかくカッコイイ。KUWATA BANDの河内淳一のギターも、サンタナに捧げるという言葉通り、ちゃんとSG使ってて最高です。このセッションを観終った時、僕は感動のあまり鼻水たらして泣いていました。
ミリタリールックのキャンディーズ? 松任谷由実、アン・ルイス、原由子
2曲目は「年下の男の子 - Dedicate to CHORDETTES」。
松任谷由実、アン・ルイス、原由子の女性3人組によるセッション。キャンディーズの「年下の男の子」とザ・コーデッツの「ミスター・サンドマン」のマッシュアップ。アメリカ海兵隊風のミリタリールックの3人が妙に色っぽく、実にかわいい。こちらのセッションもアレンジが秀逸で、「年下の男の子」と「ミスター・サンドマン」が見事にひとつになっています。ちなみにコーデッツはアメリカの4人組ガールグループで、名前を知らない人もいるかもしれませんが、「ロリポップ」で有名と言えばわかるのでは?「♪ ロリポップ ロリポップ…」と歌うあの「ロリポップ」です。
桑田佳祐が歌う、前川清ふうビーチ・ボーイズ
3曲目は「長崎は今日も雨だった - Dedicate to BEACH BOYS」。
桑田佳祐が前川清ふうに歌い上げます。コーラスは、泉谷しげる、吉川晃司、高見沢俊彦、中村雅俊。ユニット名は「BEACH FIVE」というのだから笑えます。ザ・ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」って「長崎は今日も雨だった」とこれほど自然にひとつになるのか、とビックリ!
僕がビデオデッキを手に入れたのは1988年。『MERRY X'MAS SHOW』が放送された当時は、まだテレビを録画するなんて簡単にはできなかった。再放送もされていないし、見逃した方もきっと多いはず―― このコラムを切っ掛けにクリスマスイブの伝説を思い出してもらえると嬉しい。
■ MERRY X'MAS SHOW(1986年12月24日放送)
スタジオ出演
明石家さんま(司会)
KUWATA BAND(桑田佳祐、河内淳一、今野多久郎、琢磨仁、小島良喜、松田弘)/ 松任谷由実 / 泉谷しげる / アン・ルイス / 中村雅俊 / 吉川晃司 / ARB / 鮎川誠 / 原由子 / トミー・スナイダー / 小林克也
VTR 出演
チェッカーズ / 忌野清志郎 / THE ALFEE / DEKAPAN(依田稔)/ 鈴木雅之 / BOØWY / SUE CREAM SUE / 山下洋輔 / 三宅裕司 / 小倉久寛 / スーパー・エキセントリック・シアター※2018年12月18日と2019年12月20日に掲載された記事をアップデート
2020.12.24