11月1日

山下達郎の声はハチミツの噴水、ポップとは決してロックの軟弱化ではない

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photo:WARNER MUSIC JAPAN  

山下達郎が大きい声を出すとき、ぼくの頭の中にはいつも “ハチミツの噴水” が浮かぶ。

この連想は、角ばった日本語を丸く仕上げる粘り気の強い歌唱法によるものであると同時に、安直な不良性を称揚しがちなロックシーンにおいて “ポップで闘う” ことを貫いてきた彼の異端なポジションにもよるものだ。

徹底した甘味と、それに相反する迫力。灰色の時代にさえも黄金色に輝く音楽で、彼は生き急ぐフリをするロッカーたちを尻目に第一線を走り続けてきた。その孤軍奮闘の歴史をザッと辿ろうと思ったら、ベストアルバムよりも、ライブアルバム『JOY / TATSURO YAMASHITA LIVE』(1989年)を手に取るほうが良いかも知れない。

ブレイク前に発表されたライブアルバム『IT'S A POPPIN' TIME』(1978年)が録りおろしだったのに対し、本作は80年代の約10年分のライブ音源から広く選曲されている。ただし、シュガーベイブ時代を彷彿とさせるガレージな聴感の「LOVE SPACE」(1981年:六本木ピットイン)を除けば、全編が一公演分の録りおろしかと思うほど演奏面も歌唱面も質が一貫している。延いては、現在のライブともほぼ変わらない。聴くと、いかにスタイルを確立するのが早かったか、そしていかに衰え知らずかという二つの驚異がある。

タツローの楽曲は、本人いわく大半がパターンミュージックだ。メロディ自体の難易度はさておき、曲構成は比較的簡潔で、また言葉数も絞られているので、総じて演奏によりその都度変化をもたせられる “余白” が大きい。各楽器のソロ、十八番のフェイクやモーン(咆哮)、コーラス隊とのコール&レスポンス、はたまたコード進行を活かして別の既成曲を挟み込むなど、レコードとは明らかに違う盛り方が彼のライブの醍醐味だ。

ライブアルバムを出すことに特別意義があるアーティストだと思うのだが、いずれ出すと公言されながら『JOY2』制作の目処はいまだ立たない。彼のラジオ番組内だけで小出しにされる様々なライブ音源が、ファンの欲求を高め続けて早20数年である。ほんとに出るのかなぁ。

ベストトラックを挙げるなら、CD-2に収録された「LOVELAND, ISLAND」(1986年:郡山市民文化センター)。タツロー自身によるカッティングギターの響きが、気持ちいいのなんの。間奏で前面に押し出されるとその中毒性を明かし、再びタツローが大きな声を出したときにはもう、噴きあがった “ハチミツ” の氾濫によって下界にはないアイランドまで流されてしまいそうになる。

ポップとは、決してロックの軟弱化ではない。そのことを誰よりも思い知らせるのが山下達郎だ。


※2018年2月4日に掲載された記事をアップデート

2019.11.01
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  YouTube / Warner Music Japan
 

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カタリベ
1982年生まれ
山口順平
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