少年時代、眉村卓のSFジュブナイルを何度読み返したことだろう。日常に潜む非日常。超能力者が学園を支配しようとする『ねらわれた学園』。核戦争で絶滅した別世界からやってきた美少年が学園に転校してくる『なぞの転校生』。眉村作品はこれまで数多くの作品が映像化されてきているが、なかでもお気に入りのなのが角川映画でアニメ化された『とらえられたスクールバス』だ。
この作品は、劇場公開時に改題されたので『時空(とき)の旅人』と言った方が通りが良いかもしれない。小説も映画と同タイトルに修正されたので『とらえられたスクールバス』というタイトルを知っている人は私たちの世代以上ということになりますネ。そして映画ではスクールバスという設定は変更されています。
映画の冒頭、未来から逃亡してきた少年が現代の高校生たちが乗るワゴン車に突然乗り込んできます。少年はワゴン車をタイムマシンに改造し、さらに過去の世界へとタイムトラベルを始めてしまいます。東京大空襲、戦国時代など歴史の中を彷徨いながら、主人公の女子高生テコは織田信長の小姓・森蘭丸と恋に落ちます。そして彼らは果たして元の時代に戻れるのか… ストーリーは概ねこんなところでしょうか。「戦国自衛隊」と「時をかける少女」を足して2で割った美味しいとこ取り。一粒で二度美味しい作品です。
さて、私が観た映画の所感ですが、なかなかの良作です! とても80年代のアニメとは思えない出来。しかもキャラクターデザインは「ポーの一族」や「トーマの心臓」などで知られる萩尾望都先生が担当しています。現代アニメのキャラクターデザインに大きく影響を与えた作品ではないかと私は勝手にそう思い込んでいます。エンディングロールを見てみると原画に川尻善昭、メカニックデザインに森本晃司とあります。
川尻さんは劇場版『ヴァンパイアハンターD』(1999年)、森本さんは『MEMORIES - EPISODE 1 彼女の想いで MAGNETIC ROSE』(1995年)で監督としても天才的な映像センスを見せつけています。コチラもぜひ観て頂きたい。そして、本作品の監督・真崎守氏が過去に演出した『はだしのゲン』(1983年)の原爆描写は鳥肌モノでした。マッドハウスという名の梁山泊に結集した天才たち。彼らが作り上げた『時空の旅人』は眉村作品の中でも飛び抜けて優れた作品なのです。
そして、最後に音楽がとどめを刺します! 主題歌「時空の旅人」を歌うのは竹内まりやさんです。大きな愛と輪廻転生を感じさせる英語詞。透明感ある歌声と楽曲の美しさは、少年少女を主役とした眉村作品にこれ以上ないぐらい見事にハマっています。
時空の旅人 / 竹内まりや
作詞・作曲:竹内まりや
編曲:山下達郎
発売日:1986年(昭和61年)10月25日
2016.09.25
YouTube / PJT_13
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