ビートルズのメンバーで最初にソロで日本公演を行ったのも、ビートルズ日本公演以降初めて日本武道館のステージに立ったのもリンゴ・スターであることを憶えている方はどれ位いるだろう。
ビートルズ日本公演から23年後の1989年、10月から11月にかけて、リンゴと第1期オール・スター・バンドは6都市7公演の日本公演を行った。この内11月6日と7日が日本武道館での公演だった。
メンバーはビリー・プレストン、ドクター・ジョン、ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのクラレンス・クレモンズとニルス・ロフグレン、元ザ・バンドのリック・ダンコとリヴォン・ヘルム、元イーグルスのジョー・ウォルシュ、そしてドラムのジム・ケルトナーという錚々たるメンバーであった。彼らがリンゴの曲のバックを務めるだけではなく、逆にリンゴをバックに従え自らの曲も披露する、これがこのツアーの斬新さであったし、未だもって唯一無二の個性である。
僕もこのツアーで初めて、イーグルスやザ・バンドのクラシックスを元メンバーによる生の演奏で観ることが出来た。ドクター・ジョンもEストリート・バンドの2人のソロももちろん初体験。ビリー・プレストンの「ゲット・バック」でドラムを叩くリンゴに、レコーディング時のメンバー2人が揃ったとやはり血が騒いだ。ロックの多様な歴史に触れられると同時に、ドラムに専念するリンゴの姿も楽しめる、一粒で二度美味しいとは正にこのことだった。
もちろんリンゴの、ビートルズとソロの曲を織り交ぜたセットリストの豊穣は言をまたない。23年前同様ドラムを叩きながら歌った「彼氏になりたい」に胸をときめかせ、最後の「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」では “歴史” を目の当たりにした想いに目頭が熱くなった。
そしてこのツアーはリンゴにとっても重要なターニング・ポイントとなった。'80年代のリンゴはオリジナル・アルバムを2枚('81年と'83年のみ)しか出さないという極度のスランプ状態に陥っていた。しかしこのツアー以降活動的になり、1992年には9年振りに傑作『タイム・テイクス・タイム』を発表。以降2015年まで23年で7枚と、コンスタントにアルバムを発表し続けている。
そしてオール・スター・バンドも12期を数え未だに続いている。今月2016年10月には3年半振りに日本にもやって来るのだ。第1期のプレストン、クレモンズ、ダンコ、ヘルムの4人は鬼籍に入った。当時49歳だったリンゴももう76歳。ドラムを叩きながら歌う「彼氏になりたい」は今回も見られるだろうか。サンタナ、TOTO、Mr.ミスター等のクラシックスと共に間違い無く必見であろう。
2016.10.24
YouTube / RingoStarrVEVO(筆者注:キャプションが “Live in L.A. 1992” となっていますが、 正しくは1989年です)
YouTube / RingoStarrVEVO(筆者注:キャプションが “Live in L.A. 1992” となっていますが、 正しくは1989年です)
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