5月1日

山下達郎がもたらした響き、80年代を彩るメジャーセブンス

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山下達郎がもたらした響き、80年代を彩るメジャーセブンス(その1)

山下達郎がもたらした響き、80年代を彩るメジャーセブンス(その2)

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80年代の日本ポップスを代表する音楽家を3人挙げるとして、松任谷由実、桑田佳祐、山下達郎という人選に、異論はそれほどないと思われます。

ここで作曲家としての3人を考えてみたいと思います。3人とも深い音楽的知識を持っていて、現在に至るまで、素晴らしい作曲作品を生み出し続けています。しかし、バラエティ溢れる作風の松任谷由実、桑田佳祐に比べて、山下達郎の作品には、ある一貫した強烈な個性があります。

それは「メジャーセブンス」というコード(和音)の徹底的な多用です。正確にカウントしたことはありませんが、特に80年代の作品に限れば、9割以上の楽曲でメジャーセブンスを使っていると思います。

メジャーセブンス。記号では「maj7」「M7」「△7」。ごくごく簡単に(乱暴に)言えば、「ド・ミ・ソ」という普通のメジャーコードに「シ」という、奇妙でクセの強い音を混ぜたコード = 「ド・ミ・ソ・シ」という音の組み合わせです。





このコードの、日本のポップスにおける歴史はそれほど古くなく、60年代後半に、日本のシンガーソングライターの先駆けと言える、加藤和彦(俗説では、ザ・フォーク・クルセダーズ『オーブル街』が、日本のポップスで初めてメジャーセブンスを使った曲)や、かまやつひろし、加山雄三らが、おそるおそる使い始めたものです。

そして、70年代に入って、尾崎亜美と荒井由実という、PUFFY に先駆けた「アミ・ユミ」が、その使用頻度を高め、そして80年代、山下達郎が多用することで、日本の音楽シーンに一気に浸透したコードです。

その響きのイメージをあえて言葉にすれば、「おしゃれ」「都会的」「哀愁」「センチメンタル」ということになりますが、もっとピタっとはまる言葉として、70年代後半の流行語 = 「メロウ(mellow)」があると思います。

まぁ、そう思ってしまう要因として、尾崎亜美が南沙織に提供した、メジャーセブンスを多用した傑作メロディ=『春の予感(I've been mellow)』(78年)があるのですが。

え? 「山下達郎の作品のどこがメジャーセブンスなのか」ですって? いやいや、あれもこれもメジャーセブンスなのです。

あのシュガー・ベイブ『DOWN TOWN』のイントロも、あの『RIDE ON TIME』の歌い出しも、そしてあの、やたらと印象的な『SPARKLE』のギターイントロも、あれもこれもメジャーセブンス。

では、今回も、私自身のピアノで、『RIDE ON TIME』の歌い出しのメジャーセブンス(Gmaj7)を説明する映像を付けておきますね(下参照)。

初めの4つの音の重なりがメジャーセブンスの響き。その後、『RIDE ON TIME』の歌い出しの「♪ 青い~」。コードの話を分かりやすくするのは、実演しかありません。

80年代とはシティ・ポップの時代で、シティ・ポップとはメジャーセブンスで、そして、そういう時代の響きを、中心となって作り上げたのが、山下達郎なのだと言えると思います。

さきほど、メジャーセブンスの響きの形容として、「おしゃれ」「都会的」「哀愁」「センチメンタル」「メロウ(mellow)」という言葉を用いました。要するに、明るくもなく、暗くもなく、その中間の、中途半端で微妙な印象の響きなのです。

なぜそうなるのか。コード界における最も基本的なコードとして、明るい響きのメジャー(長調)コード、暗い響きのマイナー(短調)コード。それぞれの代表選手として、【C】(Cメジャー)と【Em】(Eマイナー)を、鍵盤図で示しておきます。





ここで、前回も使った【Cmaj7】の鍵盤図を、再度ご確認ください。何か気付きませんか? そうなのです。この【Cmaj7】には、メジャーコード(C)とマイナーコード(Em)の両方が入っているのです。もう少し詳しく言えば「メジャーコードの上に、マイナーコードが乗っている」のです。



メジャーとマイナーの融合。それが、明るくもなく、暗くもなく、その中間の、中途半端で微妙な印象の響きを生みだすわけですね。

さて、上で「メジャーコードの上に、マイナーコードが乗っている」と説明しましたが、実は、その逆 = 「マイナーコードの上に、メジャーコードが乗っている」構造のコードも存在します。それが「マイナーセブンス(m7)」という和音です。

【Am7】の鍵盤図をご覧ください。「ラ・ド・ミ」という【Am】(Aマイナー)のコードに、「ド・ミ・ソ」という【C】(Cメジャー)のコードが乗っています。



ここで、メジャーセブンスとマイナーセブンスの構造の違いを図式化すると、こうなります。メジャーセブンスは「メジャーコードの上に、マイナーコードが乗っている」、マイナーセブンスは「マイナーコードの上に、メジャーコードが乗っている」。



つまりは、あくまでもメジャーがベース = やや明るいメジャーセブンスと、マイナーがベース = やや暗めのマイナーセブンスという対比となります。

という、以上の説明は、たまに目にするのですが、ここから、スージー鈴木流の独断で乱暴な説明を付け加えます。それは――。

「メジャーセブンスは山下達郎、そしてマイナーセブンスははっぴいえんど」

なのです。マイナーセブンスははっぴいえんど、特にファーストアルバム『はっぴいえんど(ゆでめん)』は、マイナーセブンスの響きの印象が、とても強いアルバムです。とりわけ、あのアルバムを代表する大滝詠一作曲の名曲 = 『12月の雨の日』は【Am7】に始まり【Am7】で終わる、とても【Am7】な曲です。

そこで、またまた映像を作りました。今度は私が、『12月の雨の日』のイントロのギターを弾いています。始めと最後の「♪ ジャーン」が【Am7】です(下のリンク参照)。

ファーストアルバム『はっぴいえんど(ゆでめん)』に入っている、はっぴいえんど『12月の雨の日』オリジナル音源でも【Am7】の響きを、ぜひ確かめてください(曲中に【Am7】が何度も出てきます)。たぶんに感覚的な表現ですが、雨上がりの曇った空のイメージがすると思います。1970年前後、新宿三丁目あたりの昼下がり、雨上がりの湿った空気の曇り空の下を、陰鬱な表情の長髪の若者が行きかっている感じがする ―― かもしれません。

つまり、あくまでスージー鈴木流の独断乱暴論法で言えば、メジャーとマイナーの中間的響きの中に、大滝詠一 → 山下達郎という流れ = ナイアガラ / シティ・ポップの流れがあるということなのです。

そしてそれは、「マイナーの上にメジャーが乗っている」 = 70年代の新宿から、「メジャーの上にマイナーが乗っている」 = 80年代の青山あたりへの流れとも言えるのです。


あ、2019年7月に、私の新刊『80年代音楽解体新書(仮)』が出版される予定です。当リマインダーに連載した内容を1冊にまとめました。みなさん、ぜひお買い求め下さいませ


※2017年7月24日、2017年8月5日に掲載された前・後編の記事を一本化しアップデート

2019.05.01
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カタリベ
1966年生まれ
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