6月1日

エンタメの横顔 — 音楽業界における「タイアップ」ラジオ篇

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FM802 が大阪で開局した日(日本で最初にヘビーローテーション・システムを導入)
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ラジオ発のヒットはヘビーローテーションから


前回の記事『エンタメの横顔 — 音楽業界における「タイアップ」テレビ篇』からのつづき

最後にラジオの話をします。
テレビと同様の「番組タイアップ」もあるにはありますが、ラジオの場合、基本的に音楽主体の番組が多いので、オープニングやエンディング曲も目立たない上、やはりテレビのような影響力はないので、そういうテーマ曲タイアップは重視されません。

ラジオでは「ヘビーローテーション」、略して「ヘビロテ」あるいは「ヘビロ」(日本人は4ないし3文字に省略するのがホント好きですね)、すなわち、一定期間ある曲を何度も何度もオンエアする、あれがヒットを生み出す方程式です… いや、でした、かな。AKB の曲のタイトルにもなるくらい、以前はバリューがあって、FM802 なんかでヘビロテが決まるとある程度のヒットが見えたものですが、徐々にパワーダウン、やがて「全国FM20局でヘビロテ決定!」みたいな、“量” で勝負するようになり、近頃ではもうトンと話題に登らなくなりましたね。なので、ちょっと時計の針を戻して、ヘビロテ華やかなりし頃のお話。

やはりここでも、レコード会社を中心とした音楽事業者群による “ヘビロテ獲得戦” が盛大に繰り広げられていたのです。

これも本来なら、選曲会議などを開き、その月(あるいは週)に発売されるすべての新曲の中から、純粋に音楽への評価のみを基準にして、ヘビロテにふさわしい曲を選ぶのが筋であり、リスナーも、ああなるほどこのラジオ局がプッシュするだけあってさすがにいい曲だ、と耳を傾け、買いに走る、というのが正しい音楽市場の姿であるはずです。

ヘビーローテーションと音楽出版の関係


ところが人間というもの、ついつい目先の欲に駆られてしまう。ヘビロテに選んでもらい、少しでも CD を売りたいレコード会社は、ラジオ局の選曲担当者にひたすらお願いする、接待してご馳走する、酒を飲ませる。やがては “番組制作協力金” などともっともらしい名目で呼ばれる “賄賂” にエスカレートしていき、レコード会社は “宣伝費” としてあたりまえに経費処理をする。

私は宣伝の現場にいたことがほとんどないので具体的なことは知りませんが、あの局のヘビロテは300万円、あそこは100万円だけど枠が3曲… みたいな会話は、半ば公然とされていました。

そしてここにも登場する “系列音楽出版社”。かなりの有力アーティストでもないかぎり、ラジオ局の系列音楽出版社へ音楽出版権を渡すことは、ヘビロテに選んでもらう以上あたりまえというのがほぼ常識で、そもそも、ヘビロテ枠でなくとも、音楽出版権を渡している曲が優先的にオンエアされるということが横行していました。前回の記事『エンタメの横顔 — 音楽業界における「タイアップ」テレビ篇』でもご説明したように、音楽出版権は著作権ですから、CDが売れればチャリン、放送するだけでもチャリン、とお金が入ってくるのです。放送のチャリンは放送局が支払う著作権使用料から。つまり、系列音楽出版社の管理曲をオンエアすることは、自分たちの支出を抑えることにつながるわけです。どうにも怪しいですよね。

もちろん、すべてのラジオ局がそんなことをやってきたわけではありません。たとえば前述の FM802 は、そういうことを防ぐために、世の流れに抗して、(最近まで)系列音楽出版社を持ちませんでした。また、系列音楽出版社はあっても、オンエアとは切り離していた局も少なくないと思います。

音楽文化をダメにするのは誰なのか?


さて、これまで見てきたような、音楽業界の「タイアップ」というものにまつわるメディアとレコード会社の怪しい世界。これが、90年代後半の音楽市場に空前の好景気をもたらした一要因なのかもしれませんが、長い目で見れば実は、今日の大衆の音楽離れと音楽市場の閉塞感を招いた主犯なのではないかと、私は思うわけです。

ただ結局、それを成立&継続せしめてきたのは、我々大衆自体なのかもしれません。撒かれた餌にパクパクと食いついて、“作られたヒット曲” にホイホイ踊らされ、メディアとレコード会社の思うツボにズボズボとはまってきた大衆。さすがにそれにも飽きて、ゲームのほうが面白いとそっちに走り、タダで聴けるからと音楽にはお金を使わなくなってしまった大衆。

サミュエル・スマイルズという作家が「政治は国民を映す鏡」と語り、かの小沢一郎も「国民のレベル以上の政治家は生まれない」と言いました。もちろん私は、安倍晋三も麻生太郎も菅義偉も大嫌いですが、彼らを長く政権に居座らせているのは、国民が全体としてそうしたいから。全国民の責任であり、自民党に投票したことは一度もない私も、その責任の一端は担っているということです。それと同じ。「音楽文化は大衆を映す鏡」なのです。

音楽なんて楽しけりゃいいんだよ。… その通りです。だけど、本当に楽しんできたか? 何回聴いても聴き足りないくらい好きになったことがあるか? もっともっと楽しいものを聴かせてくれ、と要求してきたか? CM で、テレビの主題歌で、ラジオのヘビロテで流れてくる音楽を、ちゃちな音質で “ながら聴き ”しながら、「このバンド、ちょっといいよね」なんて友達と SNS しているだけじゃないのか?

要するに、この日本の大衆は、「タイアップ」の怪しい世界が通用する程度の音楽レベルなのです。そして、大衆の中には私も入っています。

非力な私にできるのは、こういうところで、くだくだ文句を言ったり、イベントを催してこれぞと思う音楽を聴いてもらったり、せいぜいそんなところなのですが…。

2019.11.12
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カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
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