来日公演が実現していないレジェンド、ヴァン・モリソン
80年代頃、当時まだ来日公演を行なってない大物アーティストとしてローリング・ストーンズやザ・フーが挙げられていました。
ビートルズとしては来日したことがあるものの、2度の来日公演中止があったポール・マッカートニーの公演も待望されていましたね。それぞれ90年代以降には実現しました(ザ・フーは2004年までかかってしまいましたが)。
しかし、早世などの理由以外にまだ来日公演が実現していない大物アーティストでは、アレサ・フランクリン(2018年8月逝去)とニール・ダイアモンドがいます。そしてもうひとり―― 個人的に最も来日公演を望むアーティスト、ヴァン・モリソンです。
映画「ラスト・ワルツ」で熱唱した名曲「キャラヴァン」
私がヴァン・モリソンを知ったのは映画『ラスト・ワルツ』。ニール・ヤングもそうでした
(参照:『いつだって直球勝負!怒れるオジサン、ニール・ヤングの魂の叫び』)。前述のニール・ダイアモンドのほかに、ジョ二・ミッチェル、ドクター・ジョンもこの映画で知りました。
身長が低く、やや小太りのヴァン・モリソンが目いっぱい手足を動かしながら熱唱する名曲「キャラヴァン」には心動かされました(キック炸裂しまくり!)。そして、彼がキックアクションをしながら退場していく姿を見守りながらロビー・ロバートソンがこう叫びます。
「Van, The Man!(ヴァン!男だぜ!)」
この映画の名シーンのひとつですね。
ファンを裏切らないブレのなさ、オリジナルアルバムは41作!
さあ、そんなヴァンを聴こう! と思っても80年代中頃にリリースされたアルバムは既に膨大な数。
とりあえず「キャラヴァン」が収録されているサードソロ『ムーンダンス』あたりからポツリポツリと聴き始めました―― アルバムをじっくり聴いてみると、良いんだけど実に渋い。10代の自分が聴くには渋すぎました。ですから白状してしまうとヴァンの良さがちゃんと解りはじめたのは20代になってからでした。
キャリアを把握するにもちょうどいいベスト『ザ・ベスト・オブ・ヴァン・モリソン』も90年にリリースされ、ようやくヴァン好きを自認できるようになってきました。ちょっとずつオリジナルアルバムを買い揃えようかなぁとも思い始めました。地味渋ながらじっくり聴き込むとどんどん味が出てきます。
ソウル、ロック、ブルース、フォーク、ケルトミュージック、ジャズの要素を包括、昇華しながらちゃんとヴァンの音楽に仕上げています。それぞれのジャンルに比重を大きくとることもありますが、どの作品も彼のファンを裏切らない、ブレのなさ。やっぱり新譜が出ると買いたくなります。
旧譜をちょっとずつ買い足しながら新譜を聴き込む。しかし、そのリリースのペースがかなり早い! ときには2枚組のライヴアルバムや2枚組の未発表曲集などの超重量作も投げ込んできます。ああ、打ち返しきれない私…。
近作で見ても2015年3月にデュエットアルバムをリリースしたあと、2016年から毎年オリジナルアルバムをリリースしています。67年のソロデビューから数えてその数なんと41作!(ライヴやコンピレーション除く)
カヴァーされたヒット曲多数!まさにミュージシャンズ・ミュージシャン
そんなヴァンのディスコグラフィーのなかでも名曲と言えばどうしてもゼム時代の「グロリア」、70年前後の「スウィート・シング」「クレイジー・ラヴ」「キャラヴァン」「ワイルド・ナイト」あたりに注目がいきますが、89年のヒット「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」も外せません。
あのホーキング博士が愛したロッド・スチュアートの歌う「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」も、もともとはヴァンの曲なのです。
ヒットにはあまり縁がないヴァンですが、こうしたカヴァーの多さからミュージシャンズ・ミュージシャンであったことも伺えますね。ちなみに「グロリア」はパティ・スミス、「クレイジー・ラヴ」はマイケル・ブーブレ、「ワイルド・ナイト」はジョン・メレンキャンプ&ミシェル・ンデゲオチェロにカヴァーされ、それぞれがヒット。広く知れ渡りました。
この文字数ではこういったリリース量やよくカヴァーされるといったことしか伝えられないのが悔しい。そして、冒頭でお話した通り何とか来日公演を!いまも祈り続けてます。
しかし、公演内容が事前告知されない限りは予習が大変だナ!
※2018年7月4日に掲載された記事をアップデート
2020.05.30