1971年 1月1日

エンタメの横顔 — 音楽業界における「タイアップ」テレビ篇

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【前回からのつづき】

さて、「番組タイアップ」についてです。ドラマ、報道、バラエティ、教育… などあらゆるテレビ&ラジオ番組に、オープニングやエンディングのテーマ曲、挿入歌、BGM などとして音楽が使われます。CM と同様、主体者である放送局が自ら、その番組専用に作る場合もありますが、やはり、アーティストの音楽作品としてリリースされる曲とのタイアップが大はやりです。

ちなみに、テレビやラジオにはいわゆる “歌番組”、直接アーティストが出演してパフォーマンスをする番組もありますが、それについてはここでは論じません。

実は「ドラマ」と音楽のタイアップの歴史は、CM などよりもっともっと長いのです。と言うか、日本のポップミュージックは「タイアップから始まった」と言っても過言ではありません。

日本最初のヒット曲とされる「カチューシャの唄」は、1914(大正3)年に「芸術座」という劇団が興行した演劇、トルストイ原作の「復活」の劇中歌として唄われたものが評判となってレコード化されましたし、初めて “流行歌” と呼ばれた、1928(昭和3)年の「道頓堀行進曲」も演劇から始まって映画も作られ、29年の「東京行進曲」は菊池寛の小説が最初で、それにちなんだレコードが作られましたが、映画化されてから大ヒットしました。

しかもこのへんは “無声映画” ですから、サウンドトラックではなく、映画館で生演奏されたのです。そんな頃からタイアップなんてがんばってたなーと思いますが、考えてみればラジオも始まったばかり、音楽を広める手段が他になかったからね。

まあこれは西洋でも同様で、CM 音楽は商業的だとして低く見た彼らにも、映画の音楽は愛すべき対象でしたから、映画から生まれた名曲、ヒット曲は数え切れませんよね。

でも日本では、この流れが、テレビやラジオの番組にも受け継がれていきます。電波に乗って広く何度も再生されることによって、多くの人に認知され、ヒットにつながってゆく、ここにやはり、レコード会社をはじめとする音楽業界は、チャンスを求めて群がりました。

CM タイアップと同じです。「番組のイメージをアップさせつつ、心に残るいい音楽を作ろう」なんて理想は、すぐに二の次に追いやられ、タイアップを獲得するために、打合せと称する接待や、制作協力金などという名の賄賂が横行するようになっていきます。

そして、CM の場合と違ってもっと胡散臭いのが、“権利の譲渡” です。

音楽の著作権は「音楽出版権」ともいい、通常「音楽出版社」が管理しています。JASRAC や NexTone ら著作権管理団体が徴収した著作権使用料は、音楽出版社に分配され、音楽出版社が自らの取り分を差し引いた残りを作詞・作曲者に再分配します。音楽出版社の取り分は3分の1、あるいは2分の1で、つまり作詞・作曲者はそれぞれ、3分の1ないし4分の1を受け取ることになります。で、音楽出版社は必ずしも1社ではなく、2~3社のこともあります。その場合は音楽出版社取り分をその数で等分するのです。

さて、日本の放送局にはたいてい系列の音楽出版社があり、それがいつの頃からか、タイアップ楽曲の音楽出版権に絡んでくるようになってきました。平たく言うと、「タイアップしてほしければ音楽出版権を寄こしなさい」ということです。そして少なくとも半分、エゲツないのは全部持っていく。

すると、放送局にはその音楽が売れれば売れるほどお金が入ることになります。それは CD などの録音物だけではありません。放送されたりカラオケで歌われたり、ともかくその曲が何らかの形で使われれば、その都度 “著作権使用料” が、少額ながらも発生するので、それがチャリンチャリンと入ってくるのです。

しかも、前述の “制作協力金” のような一時的なものとは違い、著作権契約期間(たいてい10年以上)に渡ってずーっと。

本来、音楽出版社には、①作家に著作権使用料を正しく分配する。②著作権侵害などの問題が起こった際の対応。③楽曲の利用促進(カバーの推進など)。④作家の発掘・育成・プロモーション… などのだいじな役目があります。その働きに対して、音楽出版権の3分の1~半分を与えられ、対価として著作権使用料を得ているわけです。

そんな重要な権利を、タイアップとの引き換えに放送局に渡すなんて、どう考えても健全ではありません。そうまでしてもタイアップが欲しいのでしょうが、そこには、レコード会社にとっては録音物が売れてなんぼで音楽出版は関係ない、従ってその譲渡に抵抗がない、という事情も関係していると思われます。

これって、放送事業者という独占的地位を利用した不当な取引にならないのでしょうか?

米国では “放送系音楽出版社” というものがないそうです。独占禁止法で禁じられているのです。日本もそうすべきだと思います。

放送系でも「フジパシフィック音楽出版」や「日音」などは、昔から音源制作も積極的に行い、本来の音楽出版社がなすべきこともちゃんとやっているのですが、そもそも放送局が音楽出版社を持たねばならぬ必然性はありません。

このことは、音楽業界ではしょっちゅう話題になりますし、音楽プロダクションの団体が中心となって、何度か問題提起もしてきたはずなんですが、何も変わってないようです。結局、タイアップは欲しいし、出演枠も欲しい、放送メディアとはケンカできないという気持ちがあるからじゃないですか。

ともかく、放送事業は「放送法」によって免許制度になっていて、国の認可がないとできないのですが、その分、電波料が異常に安いとか、様々な特権を与えられているのです。

音楽関連だとたとえば、バラエティ番組とかで、ビートルズとかスティービー・ワンダーなど、超有名曲を BGM に使っているのを聴いたことがあるでしょう? たしかに著作権使用料は支払っていますし、原盤使用料も放送二次使用料という形で支払ってはいます。しかし映画やネットなら、そういうふうに曲を使う場合は、原盤権者の許諾とそれにともなう使用料、さらに外国曲ならば著作権者から、映像に音楽をつける “シンクロ権” について許諾を受け、使用料を支払うことが必要なんです。それがビッグネームの曲になると、まず許諾が降りないし、降りても凄い額の使用料になるはずなんですが、日本の著作権法の “放送権” の規定により、放送局だけは、CD などの録音物の音源は許諾なしで自由に使えるという “特権” を与えられているのです。

いや、「自由に使える」のは悪いことではないと私は考えています。一定の条件は必要だと思いますが、著作権を厳しく “守る” よりは、流通の活性化を図るほうが文化的にも経済的にもプラスだと思っています。だけど特権はずるい。

そして、その特権は目先の利益のために問題視しないくせに、YouTube などで音源を使うとすぐ削除したり、アップできないようにしたりするレコード会社も嫌い…。

つづく。

2019.10.29
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カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
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