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田口トモロヲのパンクバンド【ばちかぶり】80年代サブカルチャーの最重要人物!

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孤高のアーティスト、田口トモロヲがヴォーカルを務めていた “ばちかぶり”


数多くの映画やドラマで、多彩な役柄を演じ分ける個性派俳優。あるいはNHKの『プロジェクト X〜挑戦者達〜』などでお馴染みの名ナレーター。田口トモロヲの一般的なイメージはそういったところであろう。だが、80年代パンク、ニューウェーヴを通過してきた者にとっては、過激なサウンドと絶叫型のヴォーカルで、多くの観客やリスナーを置いてきぼりにした、奇矯にして孤高のアーティストであった。

田口トモロヲがヴォーカルを務めていた “ばちかぶり” は、1984年に結成。田口はそれ以前にも “ガガーリン” というバンドで活動をしていたが、この際にはみのすけや現・渋さ知らズの不破大輔らが参加していた。一時期は2つのバンドを掛け持ちしていた田口だが、ガガーリンのステージで、炊飯器の中に脱糞するという、今も語り継がれる伝説のパフォーマンスを残す。この際に、ステージを見ていた有頂天のケラ(現ケラリーノ・サンドロヴィッチ)が、ガガーリンのレコードを出すように誘うが、田口の希望で、レコードデビューは “ばちかぶり” の方になった。

発売元のナゴムレコードは、ケラが主宰するインディーズのレコードレーベルで、ばちかぶりのファーストアルバム『ばちかぶり』は1985年1月にリリース。蛭子能収の強烈なイラストがインパクト絶大であったが、ケラをはじめ犬山イヌコ、町田町蔵、巻上公一とゲストも豪華。本作に収録されている中では「産業」が最も名高いか。「う⚫︎こ食べたら40万円」の歌詞がインパクト絶大で、コーラスまで「う⚫︎こ」を連呼、途中で町田町蔵が「月100万や100万…」と絶妙なタイミングでセリフを挿入している。

大槻ケンヂがカバーした「オンリー・ユー」


田口のヴォーカルスタイルは、1983年にデビューし、ライブハウスシーンでカルト的な人気を誇った ”あぶらだこ” からの影響が大きいと言われているが、自嘲的で、それ故の開き直ったようなシャウトは独特の味がある。即興性の高い音楽ゆえに、勢いで暴れ回っているような印象もあるが、ファーストから1年と待たず発表した2作目『一流』に収録されている「オンリー・ユー」では、歌い方は変わらないものの歌詞はど直球の青春ソングになっていて、音楽性の過激さと、繊細で知的な詩人としての心情吐露が両立していた。



ただ、そのヤケクソ感はこの曲にも健在で、トドメの歌詞が「君の子を産みたい」である。抑えが効かなくなった思春期の悶々を爆発させるようなスタイルこそが、初期ばちかぶりの魅力なのだ。この「オンリー・ユー」はのちにナゴムレコードのレーベルメイトだった筋肉少女帯の大槻ケンヂがカバーしている。

初期のばちかぶりは過激なパンクバンドであったが、90年にweaからメジャーデビューした際にはファンクバンドに変貌していた。本人の談によると、ジョン・ライドンの「パンクは常に変わり続けるもの」という発言に則り、常に音楽性が変化していく活動をしたかったのだ、という。それゆえばちかぶりはメンバーチェンジも頻繁で、メンバーが変わるごとに音楽性が変化していったのである。



80‘sサブカルチャーを語る上での最重要人物の1人が田口トモロヲ


ところで、田口トモロヲは、バンドをやる前、漫画家だったことはよく知られている。本名の田口智朗名義で、自販機本の漫画雑誌『劇画アリス』に、「愛虐の果て」で漫画家デビューを飾ったのが1979年のこと。稚拙な絵ではありながら、パンクでバイオレンスな作風にはコアなファンも多かった模様。だが、漫画家では生計を立てることができず、音楽家へと転身したのだった。

それ以前から俳優としてもピンク映画やAVなどに出演していたが、役者として熱い注目を集めるのは89年の塚本晋也監督の『鉄男』で、これ以降バンド活動よりも役者仕事に軸足を置くようになっていく。

だが、自販機本のエロ系漫画〜インディーズのパンクバンド〜『鉄男』という流れは、表現方法こそ変わっても、80年代サブカルチャーのど真ん中を突っ走っていたことがよくわかる。80‘sサブカルチャーを語る上での最重要人物の1人が田口トモロヲであることは間違い無いだろう。

全身表現者、骨の髄までアーティスト志向を貫いた男の片鱗が、ばちかぶりの音楽にも強烈に投影されているというわけだ。

田口トモロヲがテレビドラマなどに出演し、静かで落ち着いた役柄を演じている時など「いや待てよ、この人『ばちかぶり』だよな…」と、ついあの80年代の奇矯なパフォーマンスと過激な音楽性を思い浮かべてしまうのだ。

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2023.07.07
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馬飼野元宏
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