80’s Idols Remind Me Of… Vol.14
プロフィール / 倉沢淳美お茶の間から絶大な支持、人気番組「欽どこ」の架空三姉妹ユニット わらべ
通称『欽どこ』、『欽ちゃんのどこまでやるの!?』(1978~86年)は、ホント爆発的な人気番組だった。萩本欽一と真屋順子夫婦の三つ子の姉妹(見栄晴の妹ですね)によるユニット “わらべ” のデビューシングル「めだかの兄弟」(1982年)、及びセカンド「もしも明日が」(1983年)は、ミリオンに手が届きそうなほどのセールスとなり、番組内企画ものレコードとしては異例の大ヒットを記録した。
のぞみ(高部知子)、かなえ(倉沢淳美)、たまえ(高橋真美)による架空三姉妹ユニット “わらべ”、セカンドではニャンニャン事件で のぞみが脱退したにも関わらず、お茶の間の絶大な支持は変わることはなかった。
三姉妹の中でもアイドル的な可愛さをいかんなく発揮していた “かなえ” が、ソロシンガーとしてデビューしたのは、それはもうちょっとした事件だったと記憶する。少なくとも筆者にとっては大事件、もうドキドキしながらシングルリリースを待ったものだ。そのデビューシングルこそが、倉沢淳美の「プロフィール」(1984年3月21日発売)。
倉沢淳美デビューシングル「プロフィール」タイトル通りの自己紹介ソング
アイドルソングの世界では、自らの人となりを手っ取り早く理解してもらうための “自己紹介ソング” というものが時折出現するが、通常はアルバムの1曲だったりせいぜいシングルのB面(カップリング)だったりする。それがなんと、倉沢淳美はデビューシングルが、そのタイトルが示す通り、堂々たる “自己紹介ソング” だったのだ。
生年月日や年齢や身長やスリーサイズ(結局内緒だけど)といった基本情報(?)から恋に対する気構えみたいなものまでを踏まえて、サビでは「あつみー、あつみー」と名前まで連呼、かなり徹底した自己紹介ソングに仕上がっている。「バスト、ウェスト… う~んエッチ!」(見事! しっかりとBWHにまとめてる)みたいな、今聴くとちょっとむず痒い感じが充満しているが、80年代前半における16才の歌い手、なかなかどうして立派なものです。
倉沢淳美のというよりは、“かなえ” のデビュー曲
曲全体の雰囲気が、初期山口百恵が歌いそうな “70年代歌謡ポップ” 風情というのも相まって、80年代アイドルのニューミュージック化とは逆行する “昭和歌謡” 路線(80年代も昭和なのだが)が敷かれていたのは致し方ないのかもしれない。
それはなぜならば「プロフィール」は、倉沢淳美のというよりは、“かなえ” のデビュー曲だったからだ。かなえではなく倉沢淳美の名前を刷り込ませるために思い切った自己紹介ソングで臨んだ一方、国民的番組『欽どこ』出演のかなえは、すなわち “日本国民の娘”(あるいは孫、妹)なわけで、そんな かなえには最大公約数的な無難な作風で歌わさせざるを得なかったのだろう。彼女のパブリックイメージを決定づけさせる最良策だったのかもしれない。うーん、でも冒険した倉沢淳美も見たかった… というのはもちろん叶えられぬ夢なのだが。
※2019年8月13日に掲載された記事をアップデート
2021.04.20