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セブンティーンズ・マップ、ゆとり世代の聴いた尾崎豊はメロンソーダの味
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尾崎豊のセカンドシングル「十七歳の地図」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

出会うべき時に出会う音楽というものがある。

もし人生の中で出会うべきその時に、その音楽に出会っていたら、それはすでに一つの幸福なのかもしれない。僕にとって尾崎豊の音楽がそうだ。彼が殉教者のように死んだ翌年に僕は産まれた。そして、彼の音楽に出会ったのは17歳の時…。

平成前半生まれ。つまり「ゆとり世代」にとって尾崎豊の音楽はすでに「古典」だった。

いわゆる「ゆとり」は抗うためにタバコは吸わないし、家出もしない。逆に教師よりも勉強をして知識を増やし「大人たち」をせせら笑うのが真の反抗と(少なくとも僕の周りの反抗児たちは)感じていた。ともかくそんな僕らにとって、尾崎豊という固有名詞には前時代的でステレオタイプな反抗のイメージがなんとなく付いていたのだ。

ところで17歳の僕は日本語の歌を必要としていた。理由はカラオケである。いくら「ロンドン・コーリング」や「サティスファクション」を歌ったところで高校生同士のカラオケでは浮いてしまう。そんな時、偶然聴いた一曲が尾崎豊の「十七歳の地図」だった。

そして、その曲は僕の尾崎豊へのイメージを一新させるに十分だったのだ。そこに刻まれたのはありきたりな反抗ではない。彼が歌っているのは心から何かを奪っていくような都市、とりわけ渋谷や新宿といった場所に何かを見ようとするロマンティシズムなのだ。

尾崎は心を一つの「地図」とみなす。いわば渋谷や新宿は『今 心の地図の上で』と歌う尾崎豊の「内面」に存在する。そして「ストリートの詩人」の中で内面化された「街の風景」はついに人格すら持ちだす。『手を差しのべて おまえを求めないさ この街』と歌う時がまさにその瞬間だ。

しかし、ここで分裂が起こる。つまり「俺」は「街」に溶け込めないのだ。よって心の中に存在する「街」は尾崎豊の中で割り切れない人格として存在することになる(多分それが彼の言う「大人たち」なのだろう…)。さて、そうした『半分大人』な状態をどうすればいいのか。

叫ぶしかないのである!

サビの前に入る、身を振り絞って出したかのようなシャウト。それはまさに街から、そして自分自身から疎外される心の「叫び」なのだ。なだれ込むようなドラムロールと歪んだギターの音から始まる歌は、軋む僕のウブな心と共鳴する。

「十七歳の地図」は、まさしく17歳の僕のテーマソングとなった。そこでは前時代的なる形容詞など用をなさない。「街」がそこにある限り、彼の歌は響き続けるのだ。

完璧に「十七歳の地図」をマスターし、僕は友人たちとのカラオケでそれを披露した。正直いつもと変わらず滑っていたが、気を利かせた一人の女の子が「尾崎豊ってこんなこと歌ってるんだね」なんて言ってくれた。

そして、歌い終わった後に喉を潤したカラオケのメロンソーダ。それこそ17歳の僕にとっての尾崎豊のイメージだ。彼の歌からはあのメロンソーダの味が今でもする。


※2017年9月27日に掲載された記事をアップデート

2018.11.29
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カタリベ
1991年生まれ
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