2023年 11月3日

マニアが語る「ゴジラ −1.0」かゆいところに手が届くゴジラ映画のポイントはココだ!

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photo:©2023 TOHO CO., LTD.  

ぜったいに映画館で観るべき「ゴジラ −1.0」


あなたはもう『ゴジラ −1.0』をご覧になりましたか? もしまだであれば、あなたが特撮ファンであろうがなかろうが、何はさておき是非ご覧になるべきです!それもDVDや配信ではなく、ぜったいに映画館で!!

さて、これから私は『ゴジラ −1.0』について色々語るわけですが、もちろんまだご覧になっていない方のためにネタバレには配慮しつつも、未見の方は知らない方がいいことをついつい書いてしまうかもしれません。ですので、できれば作品をご覧になった後にご一読いただきたいのです。

ということで、ここからは既に作品をご覧になり、興奮冷めやらない皆さんと語り合うつもりで書きますが…

かゆいところに手が届くゴジラ映画


マニアというのは勝手なもので、頭の中に “ゴジラはこうあるべき” という漠然としたものがあり(それを “俺ゴジラ” と呼んだりもしますが)、少しでも自分にとって、”あるべきゴジラ” とは異なるような部分があると、そこがもう気になって気になって仕方がなく、たちまち隔靴掻痒(かっかそうよう)の感に襲われるという… 要するに面倒臭い奴です。

いや、マニアというものは…、などと十把一絡げにするのはヤメましょう。訂正します。今述べたような “面倒臭い奴” というのは私のことです。しかし、そんな面倒臭い私からして、ここまで “かゆいところに手が届くゴジラ映画” が観られるとは思っていませんでした。それもあの傑作、かゆいところに手が届きまくりだった『シン・ゴジラ』に続く国産実写ゴジラ映画で!

さあ、では『ゴジラ −1.0』のどこがそんなに “手が届いた” のかを以下に記しましょう。

都市を睥睨し、見下ろすゴジラ


まず… 終戦まだ間もない頃、すなわち街なかにはまだほとんどゴジラより背の高い建物がなかった時代に作品の舞台を設定したこと。

『メカゴジラの逆襲』(1975年)から9年のブランクを経て『ゴジラ』(1984年)で再登場した際、巨大怪獣ゴジラは多くの建物に見下ろされる存在になっていました。それだけ世の中は高層建築が林立した時代と化していたのです。ゴジラの身長もそれまでより高く設定されてはいましたが、とても追いつきませんでした。

しかし、今回のゴジラは久々に “都市を睥睨(へいげい)し、見下ろすゴジラ” に戻っていました。やっぱりこうでなきゃ! 記念すべき第1作の『ゴジラ』(1954年)で、ステキな壊されっぷりをみせてくれた、銀座の時計台で知られる和光ビルも再び登場。今回もゴジラとの名コンビぶり(?)を見せてくれています。

ちなみに本年11月、関西学院大学(兵庫県)では、『ゴジラ −1.0』とのコラボレーションによる学園祭を開催。そのメインビジュアルはこの大学のランドマークともいえる時計台に、ゴジラが今にも襲いかからんとするものでした。やはり “ゴジラと時計台" の組み合わせは絵になります。

もちろんその時計台もゴジラより背の高い建物ではありません。そう、私たちが見たいのは ”見下ろされるゴジラ” より ”見下ろすゴジラ” なのです。

©2023 TOHO CO., LTD.


戦争が終わり人々が疲弊しているところに現れるゴジラ


そして手が届いたかゆいところ2ヶ所目、同じく時代設定に関することですが、終戦直後、すなわち日本には既に軍隊がなく、そして未だ自衛隊が存在していないという、日本が丸腰に近い時代が舞台になっていること。

さらには国際的な事情で、日本は他国の援助を受けられない状態にありました。まさに孤立無援。それでなくとも戦争が終わり人々が疲弊しているところに現れるゴジラ。今回は歴代ゴジラ映画でも、最も “ゴジラ対人間” の構図を強調した内容になっていました。いや強調せずとも、その設定からごく自然にそうなっていました。

一歩間違えると “ゴジラ対人間” なる設定は、漫画チックで荒唐無稽になりかねませんが、それを不自然なく観せられるシチュエーションにした巧さが光りました。無力であろうと、疲弊していようと、自分たちがゴジラを迎え撃つしかない、だから立ち上がった… そんな市井の人々の物語。新鮮な設定です。

©2023 TOHO CO., LTD.


ゴジラにこの場所で、こんな暴れっぷりをみせて欲しいという願望を充足


そしてさらに3ヶ所目、それは私たちが観たいと思っていた場面が続出したこと。

私たちマニアは ——例えば新幹線の車窓から景色を眺めている時——「あの建物をゴジラがぶっ壊したら凄いことになるなぁ」とか、「あのビルの向こうからバルタン星人がヌッと顔を出したらイカすだろうなぁ」などといったことを常々考えています。もちろん破壊願望があるとか、そーゆーことではありません。

この映画では「ゴジラにこの場所で、こんな暴れっぷりをみせて欲しい」「それをこんなアングルで見たい」という願望を充足させてくれる場面が続出します。大スクリーンに映し出されるゴジラのアップは、時に実物大に近いものとなります。その “実物大” が醸し出す非日常感”は、他のどんな俳優も叶わない、ゴジラならではの強みです。

本作ではそんな巨大なゴジラを映画館で「体感」できるシーンが続出します。「目の前に突然現れるゴジラ」「自分を真上から見下ろすゴジラ」などなど、枚挙にいとまがありません。

かつてSF作家の野田昌宏先生は「SFは絵だねぇ」という名言を遺されましたが、今回『ゴジラ −1.0』を観ている最中、私は何度も 「特撮は絵だねぇ」と思いました。「当たり前じゃん」と言われそうですが、特撮にしか、そしてゴジラ映画にしか表現し得ない場面が続出した、というニュアンスをお分かりいただければと思います。

©2023 TOHO CO., LTD.


ゲキ怒りし、ブチギレたゴジラは怖い!


4ヶ所目、それは「怒らせると怖いゴジラ」が観られたことです。

基本的にゴジラは、人間に対して怒っています。そして一方でゴジラは、何を考えているのか分からないところが “怖さ” でもあるのですが、今回のゴジラは、とある場面で確実にゲキ怒りし、ブチギレました。そこには確実に「感情」がありました。

私などにしてみれば「アホやな、ゴジラにそんなことしたら絶対怒らすだけやで…」と思って観ていたところ、案の定の展開。改めて、ゴジラを怒らせるとどんだけ恐ろしいことになるかをまざまざと見せつけられ、でもその “案の定の展開” が大変嬉しく、その “ゲキ怒りっぷり” に惚れ惚れとしながら、私は心の中で快哉を叫んでおりました。

ガチの海戦、圧倒的な臨場感


5ヶ所目は、ラストの対決が “海戦” であった点が挙げられます。

今までの、敵怪獣が登場しないゴジラ映画で、ラストの人間対ゴジラのバトルが “海戦” であったことはほとんどなかった筈。(1954年の『ゴジラ』のラストシーンは……あれはバトルというには趣を異にするかと…)

しかし今回の作品では人間とのラストバトルがガチの海戦。それも超兵器があるわけでもない、成功する保証もない、派手さに欠ける地味な作戦であったことが、観客でありながら一市民に過ぎない自分も、その場に居合わせているかのような、圧倒的な臨場感を醸し出していたのです。

そして “海” の描写の素晴らしさ。昭和特撮好きの私は元来CG嫌いでしたが、そんな私でもグゥの音も出ない圧倒的な表現力でした。技術の進歩と、山崎貴監督をはじめとするスタッフの皆さんの力量の元にひれ伏すのみです。

©2023 TOHO CO., LTD.


着ぐるみによるアナログ特撮の時代においても、”海” や “水” の描写は難物だったはずです。例えばゴジラが海中からその姿を現す場面にしても、ゴジラの全身から滴り落ちる水滴ひとつひとつの大きさの為に、ゴジラが何十メートルもあるような巨大生物ではなく、等身大の着ぐるみであることがモロにバレかねません。

しかし今回の海戦シーンでは、圧倒的に巨大なゴジラを体感できます。CGの面目躍如です。今後はもう「着ぐるみゴジラ映画」は制作されないのだろうか… 東宝の大プールでの特撮シーンが懐かしい…などと考えると少し寂しくもありますが、もはやバーチャルだ何だということを超越して、CGは “特撮表現” のひとつに成長したのだと実感しました。

使い方が絶妙な “伊福部音楽”


6ヶ所目、それは “伊福部音楽” の使い方が絶妙だったことです。

従来のゴジラ映画でも、音楽を別の方が担当されている作品であれ一部、劇中で伊福部昭先生の音楽が挿入されることは多くありましたが、時には取って付けたような感がある場合もありました。しかしながら、本作での伊福部音楽は、「ここや!」「ここしかないで!!」と叫びたくなるシーンで流れました。

きっかけとなる登場人物の台詞と、音楽スタートとのタイミングも絶妙。もうそれはお見事としか言いようがなく、かゆいところに手が届きすぎて、思わず掻きむしり過ぎてしまいそうな勢いです。

ゴジラマニアだから語れる小ネタ集


そして最後に、これは本作を含め今までのゴジラ映画をご覧になった方にのみ通じる小ネタ集的な話題になりますが、本作にも「分かる人には分かるネタ」が散りばめられていました。

まず、 “そのスジの皆さん” はきっとピンと来たことと思いますが、大石典子(演:浜辺美波)が出くわす電車のシーンは、『キングコング対ゴジラ』(1962年)での桜井ふみ子(演:浜美枝)のシーンを思わせ、ニヤリとさせられました。(偶然ながら浜辺美波さんと浜美枝さんはお名前も似てる!)

©2023 TOHO CO., LTD.


また、ゴジラに投じた機雷のワイヤーを、引っ張り寄せてみると既にゴジラに切られていた…というくだりは、『ゴジラ』(1954年)のラストシーンで海中に潜った芹沢博士(演:平田昭彦)の行動を彷彿とさせました。

さらに、ラストでゴジラへの決死の攻撃に飛行機が使用されるところは『ゴジラの逆襲』(1955年)へのオマージュかと。
 
…というわけで、人間ドラマ部分に関しては意識的に触れずにおきましたが、本作ではドラマ部分と特撮部分の融合ぶりも素晴らしいのです。その辺りは劇場で皆さんの目でお確かめください。

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カタリベ
1967年生まれ
使徒メルヘン
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