ダサく感じた80年代ディラン、アーサー・ベイカーにドン引き…
周知の事実ではあると思うが、80年代におけるボブ・ディランのアルバムはパッとしなかった。言葉を選ばずに言うと、ダサかった。これが当時の印象である。冷静に考えれば、60~70年代にかけてあれだけの傑作を発表し、世界に影響を与え続けてきた人だ。調子のいい時ばかりじゃない。
ただ、当時とすれば過去の作品が偉大すぎるためか、どうしたってリアルタイムのディランに心酔することはできなかった。極め付けのアルバムが1985年に発表された「エンパイア・バーレスク」。もう、ジャケットからしてダメだった。ロゴの使い方やデザイン含め、無理やり時代に迎合している感じ。サウンドを作ったのも、当時のダンスミュージック界で名を馳せていたアーサー・ベイカー。まじドン引きした。一応、貸しレコード屋「友&愛」で借りてテープに録音したものの、ほとんど聞くことはなかった。
あれ? あれれれ? いま聴くと全然悪くない!
あれからどのくらい経ったのだろうか。つい先日、このアルバムに収められている「タイト・コネクション」のミュージックビデオを久しぶりに観てみると、あれ? あれれれ? いいじゃんいいじゃん! 全然悪くない!! そんなこんなで Apple Music で全曲を聴きなおしてみた。うーん、カッコイイ!
それにしても、なんで当時はあんな引いたんだろう? 80年代という時代に歩み寄ったディランが気に入らなかったからか? まあ、僕が(勝手に)求めていたディラン像ではなかったということなのだろう。若かったとはいえ、やはり先入観や偏見は良くないですね。当時の僕は19歳でディランは44歳。当時のディランの歳を超えた今となってみれば、僕の理解の幅も広がったということか?
観どころ満載!当時の六本木周辺で撮影されたミュージックビデオ
そして、この「タイト・コネクション」のビデオは観どころ満載! 監督はあのポール・シュレイダーで、当時の東京、主に六本木周辺で撮影されたもの。多少デフォルメされている部分もあるが、音楽の質感と共に80年代TOKYOの雰囲気や空気感が伝わってくる。六本木WAVE、ピットイン、カフェバー風ナイトクラブ、DCブランドのブティック、安普請なプリンスホテルの部屋、もちろんあの “六プリ” のプールもバッチリ! そして何より倍賞美津子が美しい!!
その後、ディランはライブで復活した。このアルバム発売後に出演したファームエイドをきっかけとし、翌86年にはトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズを率いて来日。ちなみに、僕が初めて行った外タレのコンサートがこれ。すんげー良かった。結論、ディランはいつでもディランだったのである。
※2016年4月13日に掲載された記事をアップデート
2020.06.10