スクリッティ・ポリッティ - この奇妙なようで妙に語感のいい名前のグループ。一度聞いたら忘れられない名前ですが、その音楽も一度聴いたら忘れられません。このグループの作品を初めて聴いたのはセカンドアルバム『キューピッド&サイケ85』をリリースした85年ころ。FM で聴いたシングル「アブソルート」や「ヒプノタイズ」に即ハマりでアルバムを購入しました。
そのアルバムの中身なんですが、まずサウンドは当時流行中のゲートリバーブのきいたシンセサウンド。メロディーは超キャッチ-なポップソング。ここまでは80年代 MTV を中心にヒットした UKサウンドで、そんなサウンドのアーティストが巷に溢れてましたので何も驚きません。
しかしながらヴォーカル、グリーン・ガートサイドの声質がかなり中性的。ウィスパーヴォイスというほどでもないのですが、かなりソフトタッチ。言ってみれば男性ながら可愛らしい声。これまでこういったジャンルの音楽の中では聴いたことのないヴォーカルアプローチでした。そしてアルバム全体を通して感じられる音楽性がソウルフルな R&B。これらの要素が整然とミックスされたミスマッチ感の心地よさが当時相当に不思議でもあり、新鮮にも感じられたものです。
よく聴くと、リズム面の構築の仕方が凝っていて、かなり計算されてつくられてます。シングル「ワード・ガール」などはかなり濃いレゲエ楽曲で、ダブ処理も見事なので超ポップ。それぞれのシングルの12インチヴァージョンも遊びまくっていて、アルバムとはまた違った楽しみ方ができます。
加えまして、メンバーと共同プロデュースを担当しているのが、大御所中の大御所アリフ・マーディン(アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、チャカ・カーンから2000年代にはノラ・ジョーンズの出世作『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』を手掛けた大プロデューサー)です。一見、意外な人選にも感じますが、アルバム全体に流れるブルー・アイド・ソウル感やバランスの良さを感じ取れればこれは納得ですね。
そんな様々な要素が詰め込まれながらも完成度の高い「キューピッド&サイケ 85」は UK で大ヒットしましたが、全米では目立ったヒットを記録できませんでした。その辺がいまいち日本で彼らの知名度が低い理由かもしれません。
このアルバム収録のシングル「パーフェクト・ウェイ」をすぐさまマイルス・デイヴィスがカヴァーしたので、そちらからスクリッティ・ポリッティに入った人も多いかもしれません。そんなマイルスは次作『プロヴィジョン』に収録されるシングル「Oh パティ」にも参加、素晴らしいソロを披露してます。本作とは全く違う音世界を展開しているアルバム『プロヴィジョン』、そちらも是非ご一聴を。
※2017年1月4日に掲載された記事をアップデート
2019.06.10
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