T・ペティ氏死去… ロックの殿堂入り米ミュージシャン
これ、訃報に際してのサンスポの見出しです。なんとも雑なヘッドラインだなぁとは思いましたが、ここ日本においては的確なのかもしれません。
ロックの殿堂は、活動歴25年以上、かつ自国以外でのヒットを併せ持つミュージシャンしかノミネートされませんから、ちょいと出のヤツじゃないってことくらいは何となく伝わるしね。
でも、皆さんの周りにトム・ペティのこと知ってる人ってそんなにいないでしょ?
そんなトム・ペティのデビューは1976年、キャリア40年越えのレジェンドです。ただ、そうはいっても2014年にリリースした最新アルバム『ヒプノティック・アイ』が全米1位になっていることが凄い。彼のキャリアにおいても初のナンバーワンで、まさに現役感バリバリ。
さて、彼の熱心なファンとは言い難かった僕ですけど、節目節目でアルバムは買っていたし、ライヴにだって行ったことがあります。これはちょっとした自慢。だって彼の来日公演歴はたったの2回。しかも1986年以降、日本でのツアーは行っていないのだから。
だけど、僕が観た86年のライヴは単独公演ではなく、あのボブ・ディランのバックバンドとしての随行。当時の感覚を思い返せば、ディランを観に行ったらトム・ペティがいた、それくらいのテンションだったような気もします。
でもですよ、でもでも しかし!
このライヴで僕は強烈なロックンロール・ソングと出会うことになるのです。
ロックンロールスターになりたいのなら
俺の言うことをよく聞くんだね ♪
こんなフレーズで始まる、音楽業界やロックミュージシャンを痛烈に皮肉った1曲で、オリジナルはフォークロックの雄、ザ・バーズが60年代に放ったスマッシュヒット。79年にはパティ・スミス、最近だとパール・ジャムもカヴァーしているナンバーです。
シルクハットをかぶり、斜に構えた笑みを浮かべながらクールに演奏を続けるトム・ペティ。リッケンバッカー(ビートルズでもお馴染みのロサンゼルスのギターブランド)のきらびやかなギターサウンドに包まれて、当時19歳の僕は身震いするほどの興奮状態。
何と言うか…
とにかくカッコイイ!
ロックンロールを語る上で、これ以上の言葉が必要かい? そんな台詞が聞こえてきそうなくらいキマッてました。
この曲、オリジナルのバーズは(当時で言えばモンキーズのような)アイドルバンドを小馬鹿にしたような感じにも聞こえるのですが、トム・ペティのカヴァーはその矛先を自分自身に向けているような趣で、この歌に新たな解釈を加えてくれています。
ちなみに、彼のバンドの名前はハートブレイカーズ。アメリカンロックの代表格として紹介されることも多い彼らですが、決して豪快なだけじゃない。言うなれば、デリケートなアメリカンロックバンド。今もなお輝く、強さとしなやかさを感じさせてくれる奴らです。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、なんとも素敵な響きじゃないですか。
脚注:
■ So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star
1985年にリリースされたライヴアルバム『パック・アップ・ザ・プランテーション』に収録。
2017.10.05
YouTube / tompetty
YouTube / TheByrdsVEVO
Information