学園祭で自主制作ビデオを上映しようということになり1本監督をすることになった。86年のことだ。
「時をかける少女」のようなファンタジーが作りたい。しかし予算も良い話を作る頭もないのだから、少女が憎み合うドロドロの大映ドラマ路線でいいか…と。ホラー漫画、御茶漬海苔の「惨劇館」の基本設定を頂いて、伊藤かずえと渡辺桂子のW主演を妄想しながら脚本を3日で書き上げる。
二人の女子高生。『どちらかが先に死んだら、後追い自殺をする』という約束… 彼女たちは永遠の愛を誓い合っている。ある日、海辺の崖の上に片方の少女の遺書と脱いだ靴が見つかる。死体は上がらない。美少女と海辺の崖、勿論「時をかける少女」からのインスパイア。
数日が過ぎ、残された少女は他のクラスの少年に「お前はなぜ死なない?」と耳打ちされる。二人だけの秘密が漏れていたのだ。死んだはずの少女の霊が現れ恨み言を語るなどで憔悴しきって、約束通り彼女が死んだ崖から後を追う。
しかし、先に自殺したはずの少女は生きていた。彼女はいい加減乙女チックな幻想の世界にいるのがつまらなくなって身の丈に合った男と付き合うことを選んだのだ。その男が二人の秘密を知っていたあの少年という訳。
そして、裏切られ死んだ少女は悪霊として甦る。悪霊は夜の校舎を這い回り愛する人を奪った少年をまず血祭りに上げると、愛していた少女をあの断崖へと追いつめる。少女は恐怖に顔を歪めながら崖から海に今度こそ本当に身を投げた。
登場人物がすべて死んでラストカット。断崖に打ち寄せては砕け散る波の映像を映し戸川純の「好き好き大好き」という曲を充てた。上映会場である教室は満員。この曲が流れた瞬間、ざわついていた教室が強烈な情念ヴォーカルにあてられて一気に静まり返った。
好き好き大好き
作詞:戸川純
作曲・編曲:吉川洋一郎
発売:1985年(昭和60年)11月10日
2016.01.23
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