エイティーズ後追い世代として、YouTube は大変重要なメディアである。
好きなアーティストを検索し、ライブ動画や PV を観て楽しむ。ついでに表示される関連するアーティストの動画も観る。その過程で、あまり関心のなかったアーティストの PV を観て一目惚れしてしまう場合がある…
僕にとってマドンナがそうであった。彼女の PV を始めて観た時に僕の感じた衝撃の大きさは、リアルタイムの人にとってはもっと大きかっただろう。
場所はのぞき小屋、マレーネ・ディートリッヒの再来かと思わせるような女性が踊っている。別に「露出度の高い服で踊る歌手」が刺激的であったのではない。もちろんそのパイオニアはマドンナなのだが、今ではありきたりなものである。僕が驚かされたのは「男性の持つ力を剝ぎ取る」女性としてのマドンナの力強さだ。
今でも輝くマドンナの魅力の本質は「強さ」だ。それはオトコどもが持ちえないある種の「強さ」であり、自分の持てるものすべてを利用し尽くしていく「したたかさ」でもある。
彼女は、女性に何が求められるか知っている。そしてそれを先取ってしまう。「これがあなたたちの欲しがっていたものよ? どう?」とマドンナは問いかける。オトコは自分の欲望が丸裸にされた気分で、かえって自分を恥じる。
ポップビジネスという「男社会」、その「消費システム」へ果敢に飛び込み、乗っ取り利用してそのシステムを暴き出す。セックスが強さだと言う時の彼女に、僕はそんな社会性を見る。多くのマドンナフォロワーに欠けているのはその点だ。
「オープン・ユア・ハート」の PV では、ストリップするマドンナに男性が「怯んで」いるように見える。男社会=権力を脅かすこと、これがロックならマドンナこそ本物のロック・アーティストであり、最新作の『レベル・ハート』に込められた意味もはっきりしてくる。
30年以上、ぶれることなく歌い続ける彼女はやはり特別なのだ。
2016.05.29
YouTube / madonna
Information