私は妄想探偵。
日々の小さな事件を掘り起こしては、世間の人々から忘れ去られそうになっている音楽の記憶を白日の下にさらけ出すのが仕事である。
以前、マイケル・ジャクソンの「スリラー」とピンク・レディーの「モンスター」の類似性について、妄想… いや、調査をし、その答えを導き出した。
さて、あれから私は、マイケルが「スリラー」に引用したかもしれない… あの不気味な笑い声から始まる大ヒット曲「モンスター」に改めて注目。なんと、その振り付けに新たな謎が隠されていたのである。
ところで、皆さんは「メロイック・サイン」というものをご存じだろうか。
ヘヴィメタルファンなら、誰もが知る悪魔のサイン。人差し指と小指を突き立て、腕を頭上に挙げる、あのおなじみのポーズである。それを、もし80年代直前、国民的スターとして芸能界の頂点に君臨していたピンク・レディーが振り付けの中でやっていたらどうだろう。ちょっと見てみたい気がしないだろうか。
いや、もうわかっている。皆まで言うな。
さて、まず「メロイック・サイン」とは、何なのか。改めて説明が必要だろう。そんなことはウィキペディアで調べるからいいだって? そんなことは言わないでくれ。寂しいじゃないか。これから君たちのために、私がここはひとつハードボイルドにキメて、探偵らしく調査してきたことを書き起こしておくので、珈琲でも啜りながらしっかりと読んでくれたまえ。言っておくが断じてコピペではない。
メロイック・サインとは、二つの角(ツノ)を模して人差し指と小指を突き立て、親指、中指、薬指は畳んだ状態の手を使ったジェスチャーである。欧米ではデビル・ホーンズ(devil horns)、コルナ(corna)などと呼ばれ、ヘヴィーメタルにおけるその発祥はロニー・ジェイムズ・ディオであるなどと諸説ある。ライヴが盛り上がってくるとメタル信者のほとんどがこのサインを無意識の内にしてしまうというから恐ろしい。
ちなみにスタン・ハンセンがリングインする際に指で牛の角の形を作り「ウィーッ!」という雄叫びと共に腕を突き上げる「テキサス・ロングホーン」は形こそ同じだがアメリカンフットボールとの関係性が高く、その成り立ちはメタルのものとはまったく違うことを付け加えておく。
ここで、いよいよ本題のピンク・レディーである。問題の振り付けが登場する楽曲は「モンスター」(1978年)。まずは動画を確認してほしい。
「モンスターッ」と歌いながら、手を挙げる… そう、ここ!!!
頭の上で人差し指と小指を立てたサイン、しかも「モンスタァ~~~!!!」という悪魔的な響き…… あ! よく見ると、親指も立ってますね。通常「メロイック・サイン」は、親指を立てない。ここ重要なポイントです。
ただし、ピンク・レディーのように親指も一緒に立てるとKISSのジーン・シモンズ型メロイック・サインになります。シモンズはこのサインを米特許商標庁に商標登録出願しており、その際「人差し指と小指を上に向けて開き、親指を直角に開いた形の手ぶりで構成される」と説明しています。
ちなみにCBSニュース(2017年6月15日の記事)によれば、このシモンズのサインは「1974年11月14日に初めて使用された」となっていますね。「モンスター」は1978年6月にリリース。そして、その直前には人気絶頂のKISSが来日を果たしている。このタイミングでピンク・レディーの振り付けにメロイック・サインが引用された可能性は十分考えられる(うーん、今回もなかなかの妄想… いや、名推理だ)。
え? もっと他にも見せろって?
じゃ、キャンディーズの「やさしい悪魔」(1977年)はどうでしょう。いかにも拓郎チックなメロディーに乗せて、「あ~あ~デビル、マイスイ~ト、リトルデビ~ル」と歌いながら~、手を挙げる… そう、ここ!!!
人差し指と小指を立てて…… あ!よく見ると人差し指ではなく親指を立ててますねぇ。ま、いいか。
妄想探偵、本日の調査報告。
■ヘヴィメタル
デビル・ホーンズ(人差し指と小指を立てる)
■スタン・ハンセン
テキサス・ロングホーン(プロレスで使う)
■ベビーメタル
フォックス・サイン(メイド・イン・ジャパン)
■ピンク・レディー
ジーン・シモンズ型デビル・ホーンズ
■キャンディーズ
マイ・スウィート・リトル・デビル・ホーンズ
2017.08.27
YouTube / Louder Noise
YouTube / shourisatou
YouTube / supercandies2000
Information