3月21日

爆音で響かせたい!2017年の「ヤングブラッズ」世界になにかをするために

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佐野元春の12インチシングル「Young Bloods」がリリースされた日
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photo:田中 泰延  

誰にとっても、クリスマスにはこの一曲、桜の花が舞う頃にはこの一曲、という歌があるだろう。僕には、この30年というもの、年明けにはこの一曲、という歌がある。

大晦日にベートーヴェンの『交響曲 第九番』を聴いて歌って年を越すのとほとんどワンセットで、僕が新年を迎えるためにかける曲は、佐野元春の『Young Bloods』だ。そしてそれは必ず爆音で再生される。なに、外は除夜の鐘だの、初詣だの、ジャニーズの年越しドームだの、1年でこの日ばかりは昼も夜もない。

しかも、この『Young Bloods』の12インチシングルのジャケットには、こういう「命令」だって印刷されているのだ。「たとえ近くにいる人にとがめられてもボリュームはMAXにして聴こう」と。

国際青年年のテーマソングにも選ばれた『Young Bloods』は、なんと佐野元春にとって初めてのオリコン・トップ10入り作品となった。あの数々の名曲、『ガラスのジェネレーション』も、『SOMEDAY』もシングルベスト10に入っていなかったのだから、いまから思えば村上春樹が芥川賞を獲ってないのと同じくらい不思議なのだが、広告代理店・博報堂出身の佐野元春は、だからこそというか、あえてというか、それまで一切のCMタイアップなどをしなかった頑さも原因だったのかもしれない。

新年にふさわしく

『静かな冬のブルースに眠る
 この街のニューイヤーズディ』

と始まるこの曲は、前年、ニューヨーク帰りの佐野が発表した『VISITORS』から一転、UKソウルの影響を受けた軽やかなナンバーで、「おいおい、ニューヨークのあとはロンドンですか?どんだけ外国にかぶれるというかなんなのか」と苦笑した覚えもある。当時はスタイル・カウンシルの『Shout To The Top』という曲にそっくりすぎる、という微笑ましさも話題になったのだが、佐野元春は他人の音楽をパクるような単純な人間ではない。

この歌が収録されたアルバム『カフェ・ボヘミア』に収録された『インディビジュアリスト』などという曲に至っては、タイトルもサウンドも同じスタイル・カウンシルの『インターナショナリスト』という曲と見分けがつかないほどだ。しかしこれはアンサーソングであり、「真剣なパロディ」と呼ぶべきものですらある。真似のようで、シャレのようで、それでいてより大きな意味を楽曲に持たせてしまう図々しさが佐野の真骨頂だ。

歌はやがて

『冷たい夜にさよなら
 争ってばかりじゃ ひとは悲しすぎる』

と明るく結ばれていくのだが、これは能天気なポップチューンではない。このシングルの印税がアフリカ難民救済のチャリティーとして寄付されたことがその意義を語っている。

12インチシングルの裏面を見てほしい。印刷されているのは1984年時点での世界の紛争地域マップだ。30年前も、そしていま2017年を迎える世界にも争いは絶えない。イラク、シリア、アフガニスタン、パキスタン、リビア、イエメン、ソマリア、ニジェール、マリ、ナイジェリア…。平和だと言われた80年代も、世界地図は血の色で染まっていたのだ。

前年、ニューヨークで『シェイム-君を汚したのは誰』を書いた佐野はこう歌った。

『/偽り/策略/謀略/競争/偏見/強圧/略奪/追放/悪意/支配/ひどすぎる/』

世界への深い哀しみを抱いて東京に戻った佐野は、この国に暮らす若者たちに眼差しを向け、真正面から訴えることを選んだ。それは自分がこの世界に対して、おのれの知性と自由を自覚して、どう立ち向かうか、なにを変えていくか、だ。

『Young Bloods』とは、ネガティブには、絶え間ない人類の争いで流される若者たちの血であり、ポジティブには、次代を担う若者たちの、平和を願って行動する血潮だ。

のちに佐野元春は、雑誌『ROCKIN’ON JAPAN』での中村一義との対談で、中村が自身の『ハレルヤ』という曲にこの『Young Bloods』をなぞらえた時、「マーチングだね!」と答えている。

代々木公園でゲリラ的に収録されたPVを見てほしい。平和な冬の陽射し、幸せな驚きをもってこの歌に耳を傾ける人たち。新しい年が明けた瞬間、人間はなにかを誓う。だが、いつのまにか雑事にかまけ、自分のことに忙しくなり、忘れてしまう。そう、僕はいつもそうなのだけれど、世界に対してどう立ち向かうか、自分は何をすべきか、この曲が爆音でマーチングを始めれば、もう一度思い出すことができる。

みなさん、どうぞよい2017年を、世界になにかをするための2017年を、お迎えください。

2016.12.31
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  YouTube / imo onono
 

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