好きなバンドで「一番好きな曲は何だろう」ということを考えることは、実に楽しいことだ。そのバンドのキャリアが長ければ長いほど、選択肢となる曲は多いわけであり、ますます「楽しく悩める」といったところだ。例えば、僕の “愛しの” クイーンの曲でナンバーワンは何だろうなどと考えてみた。
クイーンは不思議なバンドだ。フレディとジョンの持つポップ、ソウル、ブラックミュージック志向と、ロジャー・ブライアンのHR/HM志向が絶妙なバランスで同居しているのだ。バンド内の喧嘩も絶えなかったというのも、当然であろう。僕はといえば、圧倒的にフレディ=ジョン路線の曲が好みだ。
さて、そんなひねくれあまのじゃくな僕が選んだ「ベスト曲」となると、当然ニッチな曲を選びたがってしまう。悪い癖である。それは抜きにして、純粋に大好きな一曲がある。それは、『ア・カインド・マジック』に収録されている「愛ある日々(ワン・イヤー・オブ・ラブ)」である。
ジョンによるこの曲は、アルバムが映画『ハイランダー』のサントラとして作られたこともあって、ギターや生のドラムも使われておらず、サックスソロがフィーチャーされている。「バーで飲んでいるシーンで使う曲のためサックスを入れた、バンドの例外的な曲」とは、プロデューサーであるデヴィッド・リチャーズの弁である。フレディのパワフルな声、そして彼の後を知る身としては、歌詞に涙を禁じ得ない。
僕は、この曲を学生服を着てCDショップの試聴機で初めて聴いた中学生の頃から、ベスト曲だと思い続けている。その試聴機では、曲が初めの1分だけしか聴けなかった。CDを買うお金が貯まるまで僕は、何度もその「1分」を楽しんでいた。そして、店長に「試聴機を占領しないでくれ」と怒られたのも、この哀愁たっぷりな曲を聴くたび思い出す。
もちろん、異論はあるだろう。しかし、こういったものは極めて “個人的な” ものだ。皆さまも「全キャリアから選ぶベストの一曲」を悩みながらお選びになるのも、一興かもしれない。
2017.02.01
YouTube / Queen Official
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