デビューから数え作詞・売野雅勇、作曲・芹澤廣明のゴールデンコンビが手掛けたシングルは、全11曲中「Song for U.S.A.」まで9曲(「ギザギザハートの子守歌」「神様ヘルプ!」のみ康珍化作詞)になるのだが、ここにはアイドル然としたルックスでは隠し切ることが出来ない、チェッカーズのちょっぴり危険な、甘く切ない不良性が潜んでいる。
そんな彼らの持ち味は、初期のシングルでメンバー自身が手掛けたB面の楽曲でも堪能できる。特にクロベエがヴォーカルをとる「青い目のHigh School Queen」などは、クールスインスパイアの名曲だと思う。そして、彼ら本来の持ち味が全面にブロウアップされたのが、そのA面となる7枚目のシングル「俺たちのロカビリーナイト」だ。
しかし、ここから “売野・芹沢コンビ” として最後の楽曲となった「Song for U.S.A.」までは、チェッカーズがアイドルとアーティストの狭間で苦悩した時期であると言ってもいいだろう。
しかし、その苦悩とは裏腹に彼らの出すレコードは売れ続け、人気は一向に陰りを見せずスター街道を驀進していく。藤井郁弥は「Song for U.S.A.」の中でこう歌う。
摩天楼霧に煙って 壊れた夢に泣いている君がいるよ
This is the Song for U.S.A. 最後のアメリカの夢を 俺たちが同じ時代を駆けた証に… Sing for all
ここで興味深いのは、メジャーシーンに浮上したパンクバンド、ラフィンノーズがアルバム『LAUGHIN’ ROLL』(1986年)の1曲目で、チェッカーズと同名異曲の「Song For U.S.A(20世紀に気をつけて)」を発表したことだ。当時リーダーのチャーミーが、この曲はチェッカーズに対するアンサーソングだと発言していた。