時はやっとお洒落に目覚め始めた1985年。場所は、ちょうど流行り始めたプールバー。大人に混じってビリヤードの練習をしていると中学生にとってはお洒落過ぎる PV が流れた。
スタイル・カウンシルの「シャウト・トゥ・ザ・トップ」。
サングラスを掛け細いマイクを持って歌うポール・ウェラー。トップスはジェームスジャケット(通称・スクータージャケット)。パーカーなのだが、腕と腰回りに施された黒✕黄のチェック柄がお洒落度を高めていた。これに白パンを合わせて足元はローファー。
当時、靴は有名な JAM シューズと呼ばれる2トーンの靴だと思い込んでいたのだが、この原稿を書くに当たって PV を見直してみると黒単色のローファー。完璧すぎやしませんか?
モッドファーザーとして名高いポール・ウェラーのファッションセンスは常に突出していた。カフェ・ブリュ期の白ステンカラーコートとフレッドペリーのポロシャツ。ザ・コスト・オブ・ラヴィング期のホワイトデニムセットアップ。全キャリアを通しても「スタイル・カウンシル時代」のスタイルが最も洗練されていた時期だと思う。
直ぐに影響を受けて真似しようとパーカーを探し歩くもそんなパーカーは何処にも売っていない。何故か背中に大きく “Submarine” とレタリングされたパーカーを竹下通りで購入して リーバイスの511ホワイトデニムを合わせた。当時は得意気に着用していたが今考えると恥ずかしい。
因みに、ポール・ウェラーが着用していたジェームスジャケットはメルクロンドン製らしく、大人になって購入しようと探したら廃版となっていた。しかし近年、日本のメーカーがリプロダクトし、憧れのジェームスジャケットをやっと手に入れる事が出来た。
10代の時に影響を受けたファッションスタイルというのは50近くになっても色褪せずに輝き続ける。もう、VESPA も売ってしまったがアメリカンなチャリに乗るときに着用している。
ところで、この曲の内容はキャッチーでノリノリな曲調からは全く想像もつかないほど、実に骨太な歌詞だ――
「後ろから不意打ちされたら、お前の人生はおしまいさ。どん底に落とされたら、トップの奴らに叫ぶほかないんだぜ。トップでのさばっている奴らに叫ぶほかないんだ。だから叫べ!」
炭坑夫支援を表明していたウェラーは、サッチャリズムに地中深く追い込まれて行く炭坑労働者に向けてこの曲を捧げている。
キラキラ輝いて見える容姿やファッション、そしてポール・ウェラーのスタイル―― 遥か彼方の世界に属しているかのような華やかさを放ちながらも彼の土台はしっかりと労働者階級に根付いている。
2018.08.28
YouTube / TheStyleCouncilVEVO
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