6月7日

どちらも生真面目!? PiLとスタカンは似てない双子か他人のそら似

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スタイル・カウンシルの「ハブ・ユー・エヴァー・ハッド・イット・ブルー」が収録された映画『ビギナーズ』が日本で公開された日
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photo:Discogs  

PiL(Public Image Limited. 通称:ピル)とスタイル・カウンシルはまるで似ていない双子のようだ.PiLのヴォーカルのジョン・ライドンはセックス・ピストルズに在籍し,「スタカン」のポール・ウェラーはザ・ジャムでパンク/ニュー・ウェーヴを志した.ジョニーはヴィヴィアン・ウェストウッドによるタータンチェックのボンテージ・パンツに身を包み,ウェラーはモッズ・スタイルできめていた.パンクの後でPiLはアヴァンギャルドと呼ばれ,スタカンはジャズやソウルを取り入れた「お洒落な」サウンドに,真面目な歌詞をのせていた.

80年代のPiLは生真面目だったが,スタカンも彼らなりのやり方でメディアを意識していた.まず1984年の「シャウト・トゥ・ザ・トップ」は結構ヒットしたし当然アルバムの「先行シングル」と思いきや,『アワ・フェイバリット・ショップ』(1985年)には収録されなかった.このアルバム,楽曲の心地よさもさることながら,通常の見開きジャケットなのに,内側からレコードを入れるファッショナブルなつくりで,一風変わった上品さを醸し出していた.

アルバムはもとより,未収録シングルも買わざるを得ずファンは涙した.ちなみに「シャウト〜」だけなら『ビジョン・クエスト 青春の賭け』(1985年)のサントラに収録されていたが,12インチにはまた違うヴァージョンが入っていて,どちらも泣く々購入した.次のシングル「ハブ・ユー・エヴァー・ハッド・イット・ブルー」(1986年)は『ビギナーズ』という映画のサントラにのみ収録された曲で,やはりシングル/12インチ/サントラのいずれかの選択を迫られたわけだが,これは『アワ・ファイバリット・ショップ』収録の「With everything to lose」という曲の歌詞とアレンジを変えた別ヴァージョンで,新曲じゃないしされど旧曲でもないわけで,まったくもってやりきれない気がした.

ファン心理を巧みについた戦略はまだまだ続く.「ハブ・ユー〜」の輸入版シングルは,青いロゴの入った厚手の特製専用ビニール入りで,おまけにカセットテープまで付いていた.カセットのA面には「ハブ・ユー〜」のUncutヴァージョン,B面には原曲「With everything to lose」のロンドンでのライヴ・テイクが入っている.アルバム未収録,別ヴァージョン,二つのおまけ付きには抗えない.こうして日に日にスタカン・コレクションが増えてゆく.

次のアルバム『コスト・オブ・ラヴィング』(1987年)はオレンジ一色の見開きジャケットに, 12インチ2枚を入れた初回限定版で発売された.まるで12インチ3枚組の初回限定版で『メタル・ボックス』を出したPiLのよう.あざとい商法か,時代を表現したお洒落か,生真面目な音の探求か.ピルとスタカン,実のところ他人のそら似と言うべきか.

2016.07.14
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  YouTube / polydorclassics's channel
 

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1966年生まれ
太田 秀樹
現在のエクストラトラックやヴァージョン違いと圧倒的に異なる点は、それぞれのアーティストが(たとえ流行りであったとしても)、シングルやら12インチやらCDやらLPやらカセットやら、各々のメディアに適した表現を模索していたこと。アメリカのFM曲のように小林克也のDJを被せたコンピをカセットでしかリリースしなかった山下達郎とか、アートワークに凝った詩集と共にポエトリーリーディングをカセットブックとして表現した佐野元春とか、アルバム全曲を<トラック1>としてCDのランダム再生を拒んだプリンスとか。
2016/07/17 04:12
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返信
1966年生まれ
プリンス目白
なになにヴァージョンとか、今も昔もいっぱいありましたね。カセットブックとかもあったし。何がベース(メイン)なのかなあと迷いながらも、僕の場合だいたいアルバムヴァージョンが基本でした。
2016/07/15 20:48
1
返信
カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
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