7月25日

布袋寅泰も絶賛!聴く者を圧倒するニューエスト・モデルの音楽と言葉

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ニューエスト・モデルのアルバム「ソウル・サバイバー」がリリースされた日
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布袋寅泰も絶賛したニューエスト・モデル


BOØWYの洗礼を浴びて中学・高校時代を過ごした現在のアラフィフ世代のロック少年&少女の中には、当時NHK-FMで毎週木曜日に放送されていた布袋寅泰がパーソナリティの『ミュージック・スクエア』に影響を受けた者も少なくないだろう。

BOØWYでの演奏時のイカツイ風貌から一変して、気のいい兄貴のようにやさしくリスナーに語りかけながら、古今東西の様々なナンバーを紹介してくれるこの番組は、高校生だった自分の音楽の幅を広げてくれた存在だった。そんな『ミュージック・スクエア』の「邦楽特集」で、布袋寅泰が大絶賛の上で紹介したのが、ニューエスト・モデルだった。

あの布袋寅泰が「感動的」とまで言い、美辞麗句を並べて興奮気味に話すのを聞いて、どんな曲が流れるのか… こちらも少し興奮して待ち構えていた中かかったのが「DAYS」「青春の翳り」「ソウルサバイバーの逆襲」の3曲。

イントロでのピアノとギターのリフ、そしてサビのメロディと中川敬のがなり声… 「DAYS」の開始わずか30秒で、自分の心は鷲掴みにされてしまった。

続いて「青春の翳り」。激しいドラミングで始まり、サイケなオルガンが印象的なイントロから、急激に疾走するAメロを行ったり来たりする曲展開、そして最後に「お前らはどないやねん!」と叫びつけられ、自分は完全にグロッキーになっていた。

そんなフラフラの状態で、最後にかかった「ソウルサバイバーの逆襲」では、もうイントロのギターで一発KOを喰らってしまった。

ソウルとパンクの融合…では言い尽くせぬ「ソウル・サバイバー」


かつてないほどの衝撃を受け、たった3曲で、自分はニューエスト・モデルに叩きのめされてしまっていた。興奮冷めやらぬまま、翌日学校が終わるとすぐに駅前のレコード屋に駆け込んだ。もちろんニューエスト・モデルのアルバム『ソウル・サバイバー』を買うためだ。

家に帰りCDをプレーヤーにセットし、歌詞カードを開く。そこで前の晩に知ったニューエスト・モデルの世界がもっともっと奥行きの広いものだと気付かされる。

ライナーノーツで『ROCKIN'ON JAPAN』の山崎洋一郎が書いているように「ソウルとパンクの融合」という言葉では言い尽くせないほど、彼らのサウンドには多種多様な要素が詰め込まれていた。

それまではBOØWYに代表される “ビートロック” 的なものを好んで聴いていた自分にとっては、転げまわるピアノも、走り回るベースラインも、ルーズなテレキャスターの音色も、効果的に使われるホーンセクションも… 全てが初めてのロック体験だった。

ニューエスト・モデルは、当時高1の自分に、ロックという音楽の奥深さを教えてくれたのだった。

中川敬が浴びせる力強く美しい日本語、ときにはどぎつい関西弁も


さらに歌詞カードを見ながら聴いていると、前日のラジオでは気付かなかった大きな魅力に気付かされる―― そう、それは中川敬が訴えかけてくる言葉の数々だ。

 君はいつでも教え説いてる
 太っ腹なありがたい人
 まちがい認めない不思議
 (こたつ内紛争)

 おー苦しみはおまえの宝さ
 分かち合う事にゃ気兼ねする
 沈黙の昨日と戦う
 今でもおまえさんったら半べそかいてる
 (まどろみ)

 知らず手掛けた奴隷は見てるよ
 君のかかえた混乱と怖れを
 おくびにも出さない静けさの不安を
 (尾根行く旅)

 教科書は信じないよ
 ウソのような気がする
 巧みな言葉と金 さみしいネと近づく
 (ソウルサバイバーの逆襲)

力強く尚かつ美しい日本語で、ときにはどぎつい関西弁で、中川敬は容赦なく言葉を浴びせてくる。怠惰に流されて日常を過ごす自分に向けて、内省せよ! 刮目せよ! と言わんばかりに…。

反核や反原発のメッセージを歌う姿から、反体制の旗手のように捉えられがちな中川敬だが、特にこのアルバムに限って言うと、イデオロギー的なものよりも、現実を突きつけられて、自己の弱さやズルさに気付かされ、それに向き合うことを求められる… そんなメッセージを感じた。

バンド結成35周年! 現在はソウル・フラワー・ユニオンで活動


このアルバムの後、ニューエスト・モデルは、よりミクスチャーバンドとしての道を極め、2枚のアルバムを出した後、盟友メスカリン・ドライヴとともに同時解散・統合し、ソウル・フラワー・ユニオンとして現在に至っている。

だが個人的には、バンドが一段と音楽の雑食性を高めて成熟していく過程で、まだビートパンクとしての色を残していた『ソウル・サバイバー』の頃のニューエスト・モデルが、一番エネルギーに溢れていたと思う。

今年はバンド結成35周年。今でも色褪せないこの作品に、今からでも多くの人に触れてもらい、32年前に自分が受けた衝撃を味わってもらいたいので、ぜひサブスクリプション化を切に願う。


2021.07.25
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カタリベ
1973年生まれ
タナカマサノリ
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