「おい時(トキ)さん、そんなに急いでどこに行くんだい」
「あ、これはご隠居、いえね、今日は日にちと曜日が重なっていますもんで」
「おお、そうだったね、ご苦労さん、せいぜい気張りなさい」
「へい」
13日と金曜日が重なることはそれほど怖くない。恐ろしいのは5と15と25という「5」の付く日と休日が重なることだ。
我が家ではポイント2倍デーと休日が重なると、買い物の運転手兼荷物持ちとして勤労奉仕させられる。ちなみに20日と30日は電子マネーで支払うと5%オフになるので、レジカウンターの至るところで「ワオン、ワオン」と犬が鳴いている。
これらのポイントが貯まる日に集中して食料を買いだめするのだが、当然冷蔵庫にはキャパがあり「どうするの、こんなに沢山入るわけ無いじゃん」と眺めていると、カミさんがうまい具合に詰め込んでいく。
この「うまい具合に詰め込んでいく」という状況を目にする度に思い出すのが、サザンのベストアルバム『すいか』である。
1989年に期間限定で発売されたこのアルバムには全61曲が収録されている。その61曲にはヒット曲から、恐らく放送できないであろう曲までが「うまい具合に詰め込まれていた」のであった。
さらにこのアルバムは、スイカ模様が描かれた四角い缶に「CD4枚」とスイカ柄の「パンツ」が詰め込まれていた。
今思えばもったいない事だが、当時は『すいか』を買ったことを自慢したくて、そのパンツを履いて行き…
「あれ、時ちゃんそのトランクスってもしかしてサザンのすいかの?」
「おっ、わかる?」
「あたしにもダビングさせて」
「もちろんいいよ」
などと粋がっていた。
ネット社会の今でこそ「限定」と銘打つものは絶対に開封しないようにして、将来の貯蓄に廻しているのだが、当時はそんな頭が働かなかったのであった。
「おい時さん、確かあの缶にはトランクスの他にスイカ柄のパンティーも同梱されていたはずじゃが」
「あ、これはご隠居、当時はまだカミさんと出会う前で、別の彼女だったもので」
「おお、そうだったね。せいぜいこのコラムがカミさんの目に止まらないように気を付けなさい」
「へい」
2017.11.20
YouTube / 桑田佳祐
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