ボン・ジョヴィといえば1980年代のアメリカンハードロックの代表的なバンドだ。彼らがまだアメリカで鳴かず飛ばずでいた頃、日本では「夜明けのランナウェイ」(1985年)が日本語カバーされ、ドラマ『乳姉妹』の主題歌に使用されるなど人気が急上昇。彼らのアメリカンドリームは本国ではなく日本から始まった。
その彼らが2015年のアジアツアーに向けて公開したのが「月亮代表我的心(月は何でも知っている / 月はわが心)」を歌っているジョンの映像だ。これは台湾出身の歌姫・テレサ・テンのカバーで、ちょっとしたニュースになった。
ところでテレサ・テンだが、1989年6月4日に起こった天安門事件の際には、香港で行われた抗議集会「民主の歌声を中華に捧げよう」に参加している。民衆の前で歌を歌い自ら中国の民主化を訴えたことで、結局返還が決まっていた香港から去ることになった。中国ではその後彼女のコンサートが行われることはなかったが、彼女は中国大陸の聴衆とつながることを心から望んでいたのだという。
1995年、私は放送局に出向しワイドショー勤務をしていた。テレサ・テンが亡くなった際、遺体を撮影した映像が電送されてくるというので受け取りに行ったことがある。その時に見た彼女の痛々しい姿には生前の面影をみることはできなかった。今はネットで検索すればその姿を見ることもできるが、当時はモザイクなどで処理されるなど、そのまま放送されることはほとんどなかったように記憶している。
「昼は老鄧(鄧小平)の言うことを聞き、夜は小鄧(鄧麗君、テレサ・テン)を聴く。」彼女の歌は中国でも絶大な人気を誇った。その彼女の曲がボン・ジョヴィの手により中国へ帰る。そう考えれば、今回のカバーの意味はプロモーション以上に大きな意味を持つだろう。
2016.03.23
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