1999年の話だ。1人暮らしをしていた僕のアパートからほど近い恵比寿ガーデンシネマ(※)に、『54 フィフティ☆フォー』というインディペンデント系の米国映画を観に行った。 この映画は、77年から86年までNYはマンハッタンの西54丁目に実在した伝説のディスコ「スタジオ54」を舞台に、青春の光と影を描き出した… パンフレットにはそう書いてある。 残念ながら映画のストーリーは完全に忘れてしまったし、そもそも僕はこの映画を観るまで「スタジオ54」の存在を知らなかった。でも、映像を観たことで、その空間と音楽の煌びやかで狂おしい印象が、間違いなく僕の脳裏に刻み込まれたのだった。 「スタジオ54」は、その歴史の終盤にはドラッグや脱税の問題で廃れていくが、絶頂期は “最もファッショナブルなセレブリティが集まる最もクールな社交場” だったと言われている。 実際、アンディ・ウォーホル、カルバン・クライン、イヴ・サンローラン、ミック・ジャガーらが連日足を運んだそうだし、マイケル・ジャクソンもNY滞在中はよく通っていたんだとか。 当時を振り返るまでもなく、78~80年頃の音楽シーンはとにかくディスコサウンドが席巻していた。ザ・ローリング・ストーンズ、ロッド・スチュワート、クイーンが、まるでシック(ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズの最強コンビ!)のようなサウンドを追求したが、こうした一連のムーブメントは、黒人音楽でも白人音楽でもない “ディスコ” という新しいジャンルを生み出した。そして、それが80年代サウンドの土台となったことは、きっと間違いないはずだ。 ところで、「スタジオ54」ではどんな音楽がかかっていたのだろうか? それは、79年にリリースされた『ア・ナイト・アット・スタジオ54』というコンピレーションアルバムを聴くことで追体験できる。 このアルバムは、KISS(もちろん、白塗りメイクと火を噴くパフォーマンスで有名な4人組バンドのこと)を世に送り出したカサブランカ・レコードから、ノンストップに編集されて2枚組で発売された。 オープニングナンバーには、疑問の余地もなくシックの「おしゃれフリーク(Le Freak)」が選曲されているが、当時カサブランカ・レコードに所属していたドナ・サマーの「ラスト・ダンス」やシェールの「誘惑の扉(Take Me Home)」も収録された。 ドナ・サマーとは、言うまでもなく “Queen of Disco” のことだ。シェールは、80年代には『月の輝く夜に(Moonstruck)』など多くの映画に出演していたので女優のイメージが強いが、元々はソニー&シェールとしてデビューしたシンガーである。何となく魔女っぽいというか、性的倒錯者のような(言い換えるとヘンタイな)印象がある。 それにしてもこの2曲、何だかめちゃくちゃ似ているではないか。皆さんにも、当時の「スタジオ54」の雰囲気を味わってもらうためにも、ぜひ聴き比べて欲しいと思う。 ■Le Freak (78年12月9日 1位) ■Last Dance (78年8月12日 3位) ■Take Me Home (79年5月12日 8位) ※注: 恵比寿ガーデンシネマは、いわゆる単館系映画館として94年の恵比寿ガーデンプレイス開業と同時にその敷地内に開館したが、2011年に惜しまれながらも休館。2015年に同じ場所にオープンした現在のYEBISU GARDEN CINEMAは別経営である。
2017.08.21
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