2018年 10月20日

THE MODS — 37年目の「TWO PUNKS」と雨の日比谷野外音楽堂

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日比谷野外大音楽堂でTHE MODS×THE COLTS TOUR 2018「GOOD-BYE SCARFACES」が開催された日
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2018年10月20日、フロントアクトに東京パワーポップの新星、Luv-Enders'(ラヴェンダーズ)を従え、THE MODS(以下、モッズ)37年目の日比谷野外音楽堂の公演が行われた。『GOOD-BYE SCARFACES』と題された全国ツアーの最終日だ。

27年前、彼らが古巣 EPICソニーを離れ自らのレーベル、SCARFACE を設立した時、初っ端に契約し、現在も行動を共にしている THE COLTS とのステージだった。

この日の夜の降水確率は80%。それでも、開演前、野音のオーディエンスたちは月あかりに照らされ時を待ちわびていた。しかし、開演直前に雲が月を覆い始め、大粒の雨が降り出す。

「それにしても雨はいつまで俺たちにつきまとうんだろう?」

これは、モッズのオフィシャル・インスタグラムにアップされていたベースの北里晃一氏の言葉だが、この言葉通り、雨とモッズの因縁は今や日本のロック史で伝説として語り継がれている。

そして、これは82年、彼らのデビュー1周年記念公演、“雨の野音” に起因している。無論、モッズの名が世に知らしめられたのも83年にリリースされた「激しい雨が」である。雨はいにしえの人々にとって、どこかスピリチュアルでセレモニー的な意味合いが含まれていると聞いたことがあるが、モッズファンにとっても今回の雨は感慨深いものだった。

時は遡り、82年6月20日――。

東京は集中豪雨に見舞われていた。この日、野音に集まったファンは、誰もその場所を離れず、土砂降りの雨の中で伝説は生み出された。

当時、野音のステージには今のように屋根はなく、雨で楽器が鳴らなくなり、メンバーたちは感電しながら、原始のリズムのごとく、肉声を絞り出した。ファンはロックンロールの神髄を見せつけられ、心の奥を鷲掴みにされた。その “雨の野音” を象徴するかのように、アンセムとなっている曲がある。「TWO PUNKS」だ。


 虚ろな街に 風が吠えぬける
 俺たちは アスファルトの上転げ落ち
 もう真夜中だ 何をすればいい
 押し合いへしあい 地下鉄に潜る

 いつもの薄汚れた小屋へ行き
 俺たちは歌った 朝まで歌った
 一切れのパンを 腹に押し込み
 ぐったり地下室で 横になる

 俺たちは乗る事が 出来なかった
 俺たちは乗る事が 出来なかった
 俺たちは乗る事が 出来なかった
 俺たちは乗せてもらえはしなかった

 TWO PUNKS 縛られて
 TO PUNKS 見張られて
 TOO PUNKS 逃げられない


これはモッズがデビューする前の博多時代、焦燥と野心の中、これからの道筋に悩み、それでも媚びることなく、自分たちを信じ貫こうとした、森山達也、北里晃一の極めて個人的な心情を歌にした曲である。

「TWO PUNKS」は、あの “雨の野音” を経て僕たちの心の深いところで共有され、バンド結成37年目を迎える2018年現在、ファンひとりひとりの物語をも背負うようになった。だからか、森山は普段はめったにやらない「TWO PUNKS」を演奏するとき、「みんなのために」という言葉を添える。極めて個人的な歌にも、そう言ってくれるのがモッズの優しさだ。

歌メロが入ると、マイクスタンドを観客に向ける。僕は、ロックに連帯感など必要ないと思っているが、この曲だけは特別だ――。

モッズのメンバーにとって極めて個人的な物語である「TWO PUNKS」。そして、ファンひとりひとりにとっては、彼らと寄り添い生きてきた大切な証と言えるだろう。モッズの歌に自分の人生を重ね、そこに見える情景は同じものだろうか。

先日の野音、雨が勢いをつけていく中、アンコールで出てきたモッズは、「なんだか昔を思い出して」という森山の MC と共にあえてセットリストを変更、「TWO PUNKS」を演奏した。それは、自分たちが歩んできた道筋が間違いじゃなかったことを確信するかのようだった。

そして、いつものようにオーディエンスにマイクを向ける森山―― 雨に打たれながら観客席を見渡してみると、みんな目を真っ赤に腫らしている。漆黒の野音、スポットライトが流線形に流れる雨を映し出し、観客の熱気は白い霧となって空に溶けていった。

僕らは雨雲に向かい声を枯らす。涙はすべて雨が洗い流してくれている。

37年目のモッズは、あの伝説となった82年の野音と寸分変わらぬ存在感でひたむきなまでにロックンロールと向き合っていた。究極のライブを見せつけてくれた一夜、「TWO PUNKS」は、またひとつの物語を背負って、歩き始める。開演と同時に降り出した雨は、終演と同時にピタリと止んだ。やはり雨にはスピリチュアルでセレモニー的な意味合いがあるのだろうか――。

これがロックの神様の粋な計らいであり、最高の演出だったことは間違いない。

2018.10.30
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