7月1日
まっすぐ走る中央線。遠藤ミチロウは、その運転手だ。
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ザ・スターリンのメジャーデビューアルバム「STOP JAP」がリリースされた日
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photo:Discogs  

中央線は、夕日に向かってまっすぐ走る。オレンジ色の車体がそれと同化する。郊外へ運ぶのは帰宅を急ぐ人たちの喧騒だ。中央線沿線に住んでいた当時、時間のあるときはホームに立ってぼんやりと、せわしなく行き交う人々と列車を眺めていた。

そんな僕のBGMは、意外かと思われるだろうがザ・スターリンだった。

遠藤ミチロウ率いるパンクバンド、ザ・スターリン。デビュー当時、そのスキャンダラスさ(豚の臓物が投げられる、ミチロウが全裸になる…… などなど)のみが喧伝されたようだ。

しかし僕はそれを本やDVDで観て知っているだけだ。後追いの僕がセックス・ピストルズ直系の音に乗せられた歌詞に、自然と集中できたのは特権だろう。

例えば僕を「惚れさせた」一曲、『STOP JAP』を見てみよう。


 おいらは悲しい日本人 西に東に文明乞食
 北に南に侵略者 中央線はまっすぐだ

 おまえは一体何人だ


「スターリン」と名付けられたバンドが、政治的な「文明」や「侵略者」、「何人だ」という言葉を吐き出しながら、同時に「中央線はまっすぐだ」とユーモアを加える。

僕がザ・スターリンと遠藤ミチロウを愛してやまないのはその点だ。「なるほど、確かにまっすぐだ」などとラッシュアワーの混雑の中、西に向かう中央線の線路を見やりほくそ笑んだものだ。

そんなミチロウは、僕にとって真の「詩人」だ。

例えば永遠のパンクアンセム『ロマンチスト』の「吐き気がするほど、ロマンチックだぜ」という詩は、もはやボードレール的な頽廃の美を歌っているようだ。

さらに『玉ネギ畑』という曲を見てみよう。「私の病気は玉ねぎ畑」というサビは、何を意味しているのか不明だ。しかし、言葉から通常の「意味」を剥ぎ取ることで、ミチロウは「パンク」を実践している。

「あいつから、言葉を奪え!」と『肉』で彼は歌っているが、それは社会のシステムを担う「言葉」をごちゃまぜにすることで反抗する、真の「パンクさ」であり「詩」なのだと思う。

そしてミチロウの紡ぐ言葉は、ハードコアパンクの激しいビートに乗せられていても、やはり美しい。

意外かもしれないが、彼が初めに書いた詩は四畳半フォークのラブソングだそうだ。僕には、その気持ちが痛いほどわかる。

恋に破れて、ひねくれてしまった心はいつか青臭い論理を求め出すのだ。例えば『先天的労働者』でのマルクス、エンゲルスの『共産党宣言』の理屈っぽい引用は、僕にはラブソングの「B面」に思われる。ミチロウの原点は、フォークなのだ。その鬱屈したフォーク音楽がまさに「爆発」した瞬間が、ザ・スターリンなのだろう。

四畳半の部屋で、タイムセールの弁当を買いサルトルを読みながら、西日が差しこむ中スターリンを聴く……。そんな学生時代の感傷にミチロウの言葉は寄り添ってくれた。

そして僕は今でもアコースティックギターを片手に、彼の出自であるフォーク形式のライブに赴き、心を癒されている。

ミチロウは彼自身の原点である伝説的フォークミュージシャン・友部正人の『一本道』をしばしばカバーしている。その歌詞にこういう一節がある。


 ああ中央線よ空を飛んで 
 あの子の胸に突き刺され


西日に向かう中央線は、パンクとフォークを一直線に結んでいる。遠藤ミチロウは、その運転手だ。そして僕はその列車から降りられそうにもないのである。

2017.06.13
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カタリベ
1991年生まれ
 白石・しゅーげ
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