2022年 9月27日

モノラル・サウンドにゾッコン!専用カートリッジでアナログのド迫力を体験せよ!

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オーディオ鑑賞イベント「ZOKKON NIGHT Vol.7 モノラルサウンドにゾッコン!」がケネディハウス銀座で開催される日
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予想以上の盛況だった “モノラルレコードイベント”


今年(2022年)の5月26日、「知られざるモノラル・サウンドの世界!」と題して、モノラル・レコード(もちろんアナログ)の鑑賞会を開催しました。

今や「電話」で聴くのが最も普通、となってしまった現代人の音楽環境ですが、アナログオーディオは再生作法を厳しく選びます。まず、電話では聴けません。機器とセッティングの質を高めれば高めるだけ音もよくなってくれますが、逆もまた真。面倒くさいのです。それでも、昨今はアナログの売上が少しずつ伸びているらしく、殊勝な人たちもいるんだなと思うのですが、これが「モノラルレコード」となると、さらに一段ハードルが上がります。「モノラル専用カートリッジ」が必要なのです(『知られざるモノラル・サウンドの世界、ビートルズはステレオに見向きもしなかった!』を参照してください)。一体今どれだけの人が、家でモノラルレコードをいい音で聴ける環境を持っているでしょう? 統計がないので何とも言えませんが、数えるほどじゃないですか。私も持ってません。

だけど、モノラルには、ステレオにはない魅力がしっかりあって、それは今でも失われていません。失われてはいないのですが、いかんせん、聴く機会がない。ならば、その機会をもうけよう、と考えたのが上記イベントでした。

ただ、モノラルはすばらしい、といくら言葉で説明しても、どれほどの人が興味を持ってくれるのか。貴重な機会であることは間違いないんだけれど、それを貴重だと思ってくれる人がどれだけいるのか。心配でした。正直20人くらいかなと思っていました。お客さんに聴きたいモノラルレコードを持ち寄ってもらうコーナーもつくろうよ、というスタッフの声にも、そんな人ほとんどいないでしょう、と私は否定的でした。

ところがフタを開けたら、会場の「ケネディハウス銀座」は満席状態(約50人)。紹介しきれないほどの持ち寄りモノラルレコードもあって。そして、曲を聴く度に拍手喝采の盛り上がり。興奮状態のうちに幕を閉じるという、予想外のうれしい展開となったのでした。

そして、「こんなイベントを待っていた!」「またぜひやってほしい」という声に応えて、2回目を開催することが決定しました。前回来れなかったかたはもちろん、もう一度体験したいかたも、ぜひお越しください。

前回の再生環境は、
・モノラル専用MCカートリッジ:イケダ 9mono(日本製)
・トーンアーム:カジハラ・ラボ KL-UA01(日本製)
・ターンテーブル:Michell Engineering GyroSE(英国製)
・フォノイコライザー:フィデリックス LEGGIERO(日本製)
他、トランスやケーブル類という音の「入口」をカジハラ・ラボの梶原弘希氏が提供くださり、「出口」はケネディハウス銀座の、コンサート音響などで有名な「ヒビノ」がドイツから輸入している「CODA Audio」のアンプおよびスピーカーというラインナップでした。


「入口」は金額で言うと約250万円。要するにレコードプレーヤー部分だけでこの価格ですから、相当のハイエンドです。「出口」のほうは本来ライブのPA用のものなので、ハイファイ度こそオーディオ専用機には敵わないでしょうが、パワーと音の立ち上がりのよさはすばらしく、エネルギッシュで骨太なモノラルレコードの音には、むしろ相性がよかったように思います。

ただ、リハーサル時にちょっとした問題が発生しました。実は初めての会場だったので、事前に一度、「入口」の機材を持ち込んで、音出しテストをしていたのですが、当日、音のチェックをしてみると、どうもなんだかテストの時と鳴りが違う、と梶原さんが言い出したのです。

音質の判断ってむずかしい。AとBを比べてどっちがいい、というなら簡単なんですが、そういう目安がない場合、ものさしは人の耳だけです。「絶対音感」を持っている人はいるけど、「絶対音質感」なんてものがあるのかどうか。ともかく、テストの時と今とで、何が違うのかを考えてみました。気づいたのは、プロジェクター用のスクリーンをステージに降ろしてあることです。私が解説したり、曲紹介するのに、プレゼンテーション資料を映すためのものでした。もちろんスピーカーの前ではなく、間にあるだけなので音の邪魔をしているようには思えませんでした。ですが、試しに外してみたら、なんと明らかに音が変わりました。さすが梶原さんです。音はスピーカーから前に出ているだけではなくて、あらゆる方向に広がって、その空間にあるいろんなものに影響を受けているんですね。

ということで、どうしてもその資料を見てもらわないと理解しにくいものの時だけスクリーンを降ろして、あとは無くしてしまうことにしました。

参加された方々の反応は前述の通りでしたが、私自身も久々に背中がゾクゾクするほど、音楽に感動することができました。いい音を全身で浴びるように聴くこと、そして、大勢の人と同じ感動を分かち合うこと、その二つが相まって、かけがえのない時を過ごさせてもらいました。

ステレオとモノラル、どちらが「自然」?


ステレオももちろんすごい発明です。左右から音を出すことで、左右はもちろん、その間のどこにでも音を置けることが、考えてみればすごいと思いませんか? 音の発生を左右2箇所にするだけで、2倍ではなく無限倍に、点から面にするのですから。

ロネッツの「Be My Baby」をプロデュースしたフィル・スペクターは、モノラルでいかに「広がり」を感じる音をつくるかということに心血を注いで、「Wall of Sound」という手法を編み出したのですが、ステレオが登場すると、「広がり」は簡単にできるようになってしまいました。さぞ悔しかったでしょうね。ステレオがかなり普及してからも、彼はモノラルにこだわっていたと言われています。

だけど、ステレオが出てきたからといって、「Wall of Sound」の価値が下がったわけではありません。前回来られた方は、それを充分感じていただけましたよね。

ステレオはなぜ発明されたのでしょうか? おそらく、オーケストラなどの演奏を客席で聴いているように、舞台に並ぶ楽器群がそれぞれの位置から聴こえてくるように、聴きたいと思ったからでは、と想像します。そのほうが「自然」に近いと考えたのでしょう。

モノラルはすべての楽器や歌がひとつになって出てくる。それは「不自然」で、だからより自然なステレオのほうが優れていて、モノラルは乗り捨てられてしかるべき技術だ、となるのも当然かもしれません。そして歴史はそのように動きました。

だけど、こんなふうに考えることもできます。

自然界の音はすべて、発生点がひとつです。モノがぶつかったらそこから音が発生する。バイオリンは弦を弓でこすることで、ピアノは弦をハンマーで叩くことで音が生まれます。

ところが、ステレオは左右二つのスピーカーから出る音でひとつの音をつくります。左右それぞれ片側だけでは不完全です。不完全な音二つが合わさることでひとつの音像を結ぶ。つまり自然にはない工程、科学による方法で、自然をシミュレーションしているんですね。耳を騙しているとも言えます。

一方、モノラルは1台のスピーカーから出る音で完結しています。発生点がひとつ。いろんな楽器や歌がいっしょくたになっていることは「不自然」だけど、音の発生の仕方は「自然」。その点ではステレオのほうが「自然」からは遠いのです。

モノラルレコードを聴いて感じる力強さはレコードの溝の構造の違いによることは、以前解説した通りですが(『知られざるモノラル・サウンドの世界、ビートルズはステレオに見向きもしなかった!』を参照してください)、音の発生の仕方そのものが自然で実直なところにも、その原因があるのではないかな、などと考えてもいます。

特に、ボーカルにそれを感じます。ステレオでもボーカルはたいてい真ん中に位置しますが、それは真ん中に像を結ぶようにシミュレーションされているわけですね。つまり虚像。モノラルでは最初からボーカルも真ん中でしかないんです。実像と言ってよいのかわかりませんが、ボーカルはやはりモノラルレコードのほうがよいと感じることが多いのです。

繰り返しになりますが、モノラルレコードの世界は、もう長いこと、世界のほんの片隅に追いやられています。アナログ人気が復活しているとしても、モノラルにまで戻ることはおそらくないでしょう。ステレオもすっかりそれが当たり前になっているということは、それだけ自然に近づいたってことですから、それでいいのでしょう。いずれにせよ、いちばんだいじなのは音楽そのものです。

ただやはり、モノラルレコードの魅力を知らない人は、ぜひ知っていただきたいし、知らないと損だと思うのです。イベントに来てください。


*イベントのお知らせ*


ZOKKON NIGHT Vol.7 モノラルサウンドにゾッコン!
〜モノラルサウンド再び!名曲定盤は勿論、新たな発掘名盤も登場!〜

開催日:2022年9月27日(火)
開場:18:00
開演:19:00(〜22:00)
料金:3,500円(税込)+ ご飲食代
※チケットはケネディハウスのホームページ、及び電話にて受付

会場:ケネディハウス銀座
ナビゲート:ふくおかとも彦(いい音研究所)、金田有浩(Golden Time Age CLUB)、太田秀樹(Re:minder)
監修:梶原弘希(カジハラ・ラボ)
主催:Golden Time Age CLUBRe:minderヒビノ株式会社

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2022.09.02
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カタリベ
1954年生まれ
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