2022年 9月24日

【ライブレポ】早逝の天才音楽家「大村雅朗」没後25周年トリビュート公演 〜 後編

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『【ライブレポ】早逝の天才音楽家「大村雅朗」没後25周年トリビュート公演 〜 前編』からのつづき

トップバッターは大澤誉志幸、1984年のヒット曲「そして僕は途方に暮れる」


そして9月24日。同じく最前列中央に着席。緞帳は第1夜のワイン色から、第2夜は濃紺色に変わる。浮かんでいるイラストは同じなのだが、どこか違った印象に見えた。

客入りのBGMは前日同様、本公演の直前に発売されたコンピレーションアルバムから。前日は亀田誠治さんの選曲分が演奏され、本日は佐橋佳幸さんの選曲だ。

そして開演。まりんさんのDJメドレーも昨日とは違う選曲。

この日のトップバッターは大澤誉志幸さん。1984年のヒット曲「そして僕は途方に暮れる」を、多少崩した歌い方で披露した。

大澤さんは「最初は大村さんと呼んでいたが、バクちゃんと呼ぶようになって。バクちゃんと出会って、ファーストアルバムのレコーディングで才能を感じた」と。

ソロデビュー曲の「E-Escape」、デビュー前に沢田研二さんに提供した「晴れのちBLUE BOY」を披露した後、トークタイムへ。「晴れのちBLUE BOY」でのメロディ変遷のエピソードと、1981年に沢田研二さんへ提供した「おまえにチェックイン」のチュルルル・コーラス時のお話。大沢さん、佐野元春さん、伊藤銀次さん、沢田さんが並んで、沢田さんの声量が凄かったというエピソードを語った。チュルルル・コーラスの話は知っていたが、ご本人の口から聴くのはまた格別だ。

吉川晃司さんに提供した「ラ・ヴィアンローズ」、大澤さんご自身の「Confusion」を歌った後、亀田さん・佐橋さんを交えてのトーク。亀田さんが音楽の道に入ったきっかけは「そして僕は途方に暮れる」だったという。喫茶店の有線で聴いてレコードを買い、音楽を全部デザインするような大村さんがやっていることをやりたい、という思いがきっかけになったという。ちなみに亀田さんは大村さんご本人にお会いしたことはないとのこと。



そしてトークには大澤誉志幸さんをプロデュースした木﨑賢治さんが加わる。

木﨑さんは大村さんをインペグ屋さんの薗さん(薗廣武さん、薗音楽事務所社長)から紹介された。木の実ナナさんにはじまり、その後大澤さんのバンド、クラウディ・スカイからソロに至るという流れだ。ソロアルバムのレコーディング時に当時の大澤さんの好みを聞いて、これは大村さんだと思い、別のアーティストがレコーディングしているソニーのスタジオに押しかけて頼んだという。木﨑さん曰く、大村さんはおしゃれな人だった。それは音楽にも反映されていた。E-Escapeのリフを聴いたときにはびっくりした。

銀色夏生さんの詞がピタッとはまった「そして僕は途方に暮れる」は、シンセベースとシュワーっとした音がついたものの、最初はフォークっぽいアレンジだった。そこにトンプソン・ツインズの「Hold Me Now」をヒントにした、上が変わらずベースが下降するパターン、大村さんによる「レレ・レレレミ」がついた。地味だと思ったけれど、みんなにいい曲だと言われた。日清カップヌードルのCMタイアップがついて、これは化けちゃうな、と木﨑さんは思ったそうだ。



槇原敬之が披露した「モニカ」、続いて川崎鷹也がステージに登場


ここまで話が進んだところに、同じく木﨑さんのプロデュースで1990年にデビューした槇原敬之さんがレスラーばりにパイプ椅子を持ってステージに乱入し、トークに交わる。木﨑さんが、デビューしたばかりの槇原さんを佐橋佳幸さんに紹介して以来のつきあいだという。

1969年生まれの槇原さんも、大村雅朗さんに打ち込みの面でとても影響を受けたという。槇原さんは「大村さんの音楽はごちそう」と口にした。最初は木﨑さんは槇原さんをポール・サイモンにしたいと思った。「Loveだけじゃない、生き方のある音楽を作って欲しい」と。そして、ほどなくして「どんなときも」がヒットすることになる。大村さんが直接かかわった作品ではないが、影響を受けたということはその日の夜改めて聴いてみて納得したものだ。

ここで大澤誉志幸さんと木﨑さんが抜け、まりんさんとサックスの山本拓夫さんがステージに。「こんな素敵な会に呼んでくださってありがとうございます」という槇原敬之さんが披露したのはなんと、吉川晃司さんの「モニカ」。柔らかめの槇原さんの声と、硬質なサウンドの組み合わせが絶妙。意外性というところではこの2日間でダントツだった。歌が終り、このへんでシンバルを蹴るんだよね、と佐橋さんが気持ちよさそうに語る。

続いて、槇原さんが「アレンジですごく好きな曲です」と、大江千里さんの「Rain」。この曲は、槇原さん自身のカバー作品集『Listen To The Music』シリーズで2度にわたってカバーしている、思い入れのあるナンバー。槇原さんの後ろには、大村さんと大江千里さんが下りてきているように私には見えた。

槇原さんはもう1曲、渡辺美里さんの「Lovin‘You」を。こちらも昨日美里さんが披露した楽曲。濃い色の衣装の槇原敬之さんがステージを降りた直後に、真っ白な爽やかな出で立ちでステージに登場したのは川崎鷹也さん。

1995年生まれの川崎さんは、1997年に大村さんが旅立ったときには2歳だった。ただ、楽曲にはなじみがあったという。きっかけは定かではないけれど、いつの間にか知っていたという。後で調べて知ったことだが、川崎さんの父親は栃木でライブバーを経営していたそうだ。だから音楽というものは少なからず近くにあった、とインタビューで語っている。そして、佐野元春さんの「SOMEDAY」を堂々と歌う。佐野さんとは違う解釈で、“川崎鷹也の「SOMEDAY」”だった。

「光栄だけど、緊張した」と語る川崎さん。松本隆さんの「風街オデッセイ」の参加時に「昔の曲といまの人をつなぐ架け橋は君だ」と亀田さんに言われて、震えたという。川崎さんにとって、亀田さんのこの言葉は忘れられないものだった。

亀田さんは「大村さんが川崎鷹也を連れてきたのかもしれない」と語り、その後、川崎さんは八神純子さんの「パープルタウン」を。これも八神純子さんとは違う雰囲気で、レイ・ケネディの「You Oughta know by now」に近かったようにも感じた。

松本隆と南佳孝の出会い


爽やかな川崎鷹也さんの後は、ぐっと渋い南佳孝さんが登場。「大村くん、聴いててね」と、後ろのイラストに声をかけて「スタンダード・ナンバー」、そして野村宏伸さんに提供した三連のバラード「ストライプの雨の彼方」の2曲を披露。

「スタンダード・ナンバー」は映画のテーマでもあった。ここで詞を書いた松本隆さんがトークに加わり、松本隆さんと南佳孝さんの出会いから。『摩天楼のヒロイン』の頃、1973年。1961年生まれの佐橋さんは中1、1964年生まれの亀田さんは小学生だった。



ここで佐橋さんが槇原敬之さんを呼ぶ。槇原さんは南佳孝さんの「Paradiso」がめちゃくちゃ好きだったそう。ちなみに南さんと槇原さんは今日が初対面。亀田さんの「大村さんがきっかけでいろんな世代、いろんな人がつながる」という言葉がとても腑に落ちた。

松本隆さんは大村さんのことを「ものすごいかっこいい人だった。僕が仕事終わりに代官山でお茶を飲んでいたら、マイケルジャクソンみたいな人ともうひとり男性の二人連れが来て、郷ひろみと大村さんだった。」とエピソードを語っている。そういえば前日にも「すっごいイケメンだった」という言葉を、松本さんはまるで少女のように目をキラキラさせて口にしていた。大村さんは本当に素敵な人だったと思う。

松本隆さん、南佳孝さんがステージから降り、佐橋さんに居残りと言われた槇原敬之さん。槇原さんは「僕は大村さんに会ったことがない。松田聖子さんの曲です」と言い、「櫻の園」を。2018年の松田聖子さんの大村さん作品を集めた『SEIKO MEMORIES』では、槇原さん自らがリアレンジした作品でもある。



23日の中川翔子さんとのトークの際にも話題が出た、大村さんの遺作「櫻の園」の編曲は、大村さんの最期を看取った、この公演でもマニピュレーターをつとめる石川鉄男さん。

槇原さんのまっすぐで優しい声で唄われる大村さんのメロディに、マッキーありがとう、わたしは涙が止まらなかった。

そして大村さんの代表曲ともいえる「Sweet Memories」。歌の途中で、舞台袖でステージを見守る松本隆さんに気づいた。授業参観のお父さんのようにステージを見つめる松本隆さんを目にして、わたしの涙は一層激しく頬を伝った。

数日後、松本隆さんは次のようにツイートしていた――

「舞台袖から槇原敬之が歌うsweet memoriesを聴く。佐橋ギター、亀田ベース、今ギター、山木ドラム。とくれば、キーボード弾く大村雅朗の顔が浮かぶんだよ。ぼくは幸せに満ちて、少し笑いながら少し泣いた」

そう、第1夜は大村さん編曲の楽曲をオリジナルシンガー、あるいは忠実な再現で楽しむ日。第2夜は、大村さん編曲の楽曲を提供した方々の作品をこれからにつないでいく日。あるいは大村さんの作品を愛している人がこれからに繋いでいく日。

緞帳の色の違いも、客入り・客出しの曲目にも、そんな二日間の違いが表れている。大村さんと一緒に仕事をしてきた佐橋さんと、大村さんの仕事に憧れて音楽の世界に入ってきた亀田さんのように。

ありがとう、大村雅朗。あなたの作った音楽を愛してます


大村雅朗さんがつないだ2日間。ステージ上のみなさんの素敵なアイコンタクトや笑顔がとてもよく見えた。みんな大村さんの音楽を愛している人たちだということが客席にもビンビン伝わってきた。

音楽って、やっぱり生身の人間が作り出すもの。もちろんテクノロジーのお世話にはなるけれど、作る、視る、聴くのは生身の人間。繋ぐのも人間。音楽に対する愛情を持った人たちに素敵なものをいっぱいもらった2日間だった。

しあわせな2日間を作ってくれたみなさま。この2日間に現地で立ち会えたことを、本当に感謝している。ありがとう、大村さん。あなたの作った音楽を愛してます。これからもきっとずっと。

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2022.11.14
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