2022年 9月23日

【ライブレポ】早逝の天才音楽家「大村雅朗」没後25周年トリビュート公演 〜 前編

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トリビュートコンサート「大村雅朗 25th Memorial Super Live」第1夜が福岡キャナルシティ劇場で開催された日
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日本のポップミュージックの歴史を変えた職人、大村雅朗


大村雅朗さんの名前は決して万人が知るものではない。「松田聖子さんのSweet Memoriesを作った方です」と言うと、「あぁ…!」という知名度の方である。ただ、その功績は「1970年代末から80年代にかけて、日本のポップミュージックの歴史を変えた職人の筆頭」といっても過言ではない。

その大村さんは1997年6月29日に46歳の若さでこの世から旅立った。

没後25年が過ぎる2022年6月の終わり頃、「大村雅朗さんの名曲とエピソード満載のトークで贈る2夜限りのプレミアム公演」というツイートが流れてきた。9月23日、24日、場所は博多のキャナルシティ劇場。音楽監督は佐橋佳幸さん、亀田誠治さん。

これだけの情報を見て、横浜在住のわたしがサクっとチケットを取ったのは言うまでもない。

2022年の夏から秋にかけて、少しずつ、小出しに出演者や当日披露される楽曲の情報が流れ、その日を待った。そして2022年9月23日夕方、博多のキャナルシティ劇場の客席中央最前列に私はいた。目の前にあるのはステージだけ。

このコンサートの2日前、9月21日に発売されたアナログ盤『大村雅朗の奇跡 compiled by 佐橋佳幸&亀田誠治』からのナンバーが流れる開演前の会場に腰を下ろした。

熟成された芳醇な赤ワインを思わせる色の緞帳に『大村雅朗の奇跡』のジャケットイラストが浮かぶ。端正な美形の彼をふわっとポップなイラスト仕立てに。まるで天空から見られているようだ。

開演前に流れていたコンピレーションアルバムに繋がるかのように、まりん(砂原良徳)さんのテクノインストからのDJメドレー。立って踊りたかった。ライティングもあってダンスフロア風。途中のクロスフェードが職人仕事だな、とひそかに拍手していた。

スーツ姿の亀田誠治さんと、ベージュのコートにパンツを合わせた佐橋佳幸さんがマイクを持ってステージに現れた。演奏は「大村雅朗さんのオリジナルにめちゃくちゃ忠実にがんばりました!」と、この公演のバンド “BTS” を紹介。Baku-san Tribute Session Band。踊らないほうのBTSだ。バンドメンバーは以下のみなさま。

Drums:山木秀夫
Guitar:今剛
Keyboards:斉藤有太
Sax:山本拓夫
Manipulator:石川鉄男
Bass:亀田誠治
Guitars:佐橋佳幸

“透明な砂糖菓子のようなキラキラ感”大村雅朗が作った松田聖子作品


トップバッターは八神純子さん「みずいろの雨」。大村雅朗さんとはブレイクフレンズ。これは私だけ、と。そう。最初のブレイクは誰でも一度だけ。1978年に、八神純子さんは大村雅朗さんと、その幸せな時間を共有した方。当時のパワーのある歌声、いや、当時以上にパワーを蓄えた歌声で、この日5曲を披露した。サンバホイッスルも気持ちよく鳴らしていた。



次いで登場したばんばひろふみさんは2曲を披露。当初アルバム収録曲だった「SACHIKO」レコーディング現場で、スタジオ現場でアレンジした大村さんの才能に驚いたことや、大ヒットのご褒美に好きなミュージシャンを使って、大村さんとバンドと2週間LAにステイしてレコーディングしたことなど、色々な面でおおらかだった1980年頃のエピソードを懐かしげに語った。ちなみに佐橋佳幸さんがデビュー前にEPICソニーに行って、その頃、この会社ってどんな曲があるの?で渡されたのが「SACHIKO」のサンプル盤だったという。

中川翔子さんは砂原良徳さん、今剛さんと登場し、まずは「天使のウインク」を披露。その後、亀田さん、佐橋さんとのトーク。途中からトークゲストの松本隆さんが加わり、しょこたんの“松田聖子様愛”が炸裂していた。彼女がマシンガンのように発していた言葉でいちばん印象的だったのは、“透明な砂糖菓子のようなキラキラ感”。まさに、大村さんが作った聖子さんの作品をこれほど表す言葉はないだろう。



松本隆さんは大村雅朗さんのことを“まーくん”と呼んでいた。大村さんと一緒に作った曲で一番好きなのは「真冬の恋人たち」。いま大村さんがいたら、何を言いたいですか? というしょこたんの質問には「もうちょっと待っててね、積もる話もあるし」と。大村さんの作品に多数参加した佐橋さんによると、大村さんは、モードが入っていないと嫌がっていた。口癖は「それ、いまじゃないんだよねー」。博多弁でよく言っていたという。

中川翔子さんは、松田聖子さんの大村さんアレンジ曲を3曲披露。ちなみに、亀田さんがしょこたんに「絶対やって」とお手紙を書いたそう。確かに、松田聖子さんの作品の当時の世界観を表現し、絶大な“聖子様愛”を持って語れるひとはしょこたん、中川翔子さん以外には考えられない。

八神純子から渡辺美里まで、2時間半弱のステージに圧倒


この日最後の歌い手は、佐橋さんの都立松原高校の後輩でもある渡辺美里さん。「Believe」を歌い終えて、こう語った。

「19歳の時に出会ってたくさんのサウンドプロデュースをしていただいた。ひな鳥が親と思うように、色々育てていただいた」

大村さん作品の「君はクロール」「Lovin‘You」と続く。ステージ上で歌う美里さんを斜め後ろから見つめる佐橋さんに思わず目が行ってしまうわたしがいる。デビュー当初から何年かの間、彼はずっと美里さんを支えていたんだ、そう思うと愛しくて涙してしまう。

大村さんは「面白いギターを弾くひとがいる」と佐橋さんを起用した。いろんなトライをさせてくれた、と佐橋さんはしみじみ語る。



そして大村さんのアレンジを忠実に再現し、美里さんが別アレンジでカバーしている大江千里さんの「Rain」を。つづいて、美里さんの代表曲ともいえる「My Revolution」を。

これまでに何度も聴いてきた曲を、音源と同じサウンドでライブで聴けるよろこびで、わたしは涙がとまらなかった。ステージ上で歌う美里さんの瞳も潤んでいたように見えた。

八神純子さんから渡辺美里さんまで、2時間半弱のステージに圧倒された。みなさまの演奏と歌に、そしてトークに。「めちゃくちゃ忠実に」当時のスタジオの空気を存分に感じさせてくれる演奏と歌が第1夜の醍醐味だったと思うのだ。





『【ライブレポ】早逝の天才音楽家「大村雅朗」没後25周年トリビュート公演 〜 後編』につづく

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2022.11.13
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カタリベ
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